クリシェ

トリヤマケイ

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魔王編

ニワトコの杖

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「たぶんだけど、あのダンジョンのどこかに、西の国への転移できるポイントがあると思うんだよね」

「そう思う根拠は?」

「ナッシング!」

「なんだ、またヤマ勘かよ」とユタカは呆れ顔。

「いや、だって西の国へはよそ者は入れないって周知の事実なんすわ。それでもなんとか方法あるだろって安易な考えでわざわざ国境まで行くっていうのもね、国境いくのでさえかなり危険だし、それでもまあ、はじめから諦めるってのも情けない話なんだけど、国境まで無事にたどり着いたとして、やっぱ全然難攻不落でした!   では泣くに泣けないからさ」

「それはそう」とユタカ。

「ならどうすんの?」涙目のケンジ。

「じゃあ、こうしよう。先ずダンジョン攻落しながらテレポートできるポイントを見つけだす。優先順位としてそれが正しいと思う。先ずはダンジョン、だめなら相当な長旅になるけれど、西の国に向けて出発」

「そうなんだ?   西の国って山を越えたらすぐってわけじゃないんだね」

「そう。とにかく遠いということもあるけれど、それに加えて残虐極まりない野盗やらバケモノが獲物を求めて右往左往してるから好きこのんで行くヤツはいない。まあ、絶対に安全な場所なんてここにはどこ探してもないんだけどね」

  そうだよなと、ケンジは深く頷く。そして、不意に思い出してこう言った。

「そうだ!   ユタカが言ってたヤツって何さ?」

「はい?」

「いや、なんかくれるんじゃなかったの?   チート的な?」

「あー、それな。それが見当たらないんだよね」

「そうなんだ。ちなみにそれってなんだったの?」とケンジ。

「いわゆる魔法の杖だよ」

「えー!   ほしいなぁ、ほしいよ、ユタカ。ヴォルデモートと闘えるスキルがほしい切実に!  それってれいの史上最強の無敵のニワトコの魔法の杖じゃん?   ハリーが渓谷だかに投げ捨てた?」

「ケンジ、ハリポタ観すぎ、てか、あの杖、バキバキに折ってから捨てたやん、あったとしてももう使えへんやろ」

「え、あ、ユタカ知ってんの?」

「母ちゃんがファンやねん」

「そうなんだ。なら知ってるよね、ニワトコの杖は折れた杖も修復できるって?」

「いや、だからそれは他の杖やろ?   杖に意思があるなら、自分で修復も可能だろうけど、どうなの?」

「ユタカ、何言ってるわけ?  史上最強の杖だよ?   ダンブルドアの墓を暴いてヴォルデモートが手に入れたホンモノだよ?  
もしかしたら、折った数だけ増えるかもしれないよ? 」

「いやいや、折れたら短すぎやろ?」

「だから、それは伸びるんだよ、ユタカ?   物理に支配されてる俺の元の世界ではありえないけれどね」

「ふんふん。そうなのか?」

「ところで、ユタカのママは誰のファンなわけ?   もしかしてドラコ・マルフォイ?」

「んなわけないやろ、ドラコのファンなんているんかい?」

「そりゃいるさ。ハリポタの中でいちばんマルフォイが好きっていう人も結構いるし、スリザリンに入りたいって思う人もたくさんいるみたいだよ」

「マジか!」

「で、ユタカのママは誰が推しなの?」

「ロンだよ。ロンのナメクジ喰らえ!  っていう呪文がたまらなく好きらしい」

「あははは。ユタカのママ最高!」

「あの~」とフエ。

「盛り上がってるところ、申し訳なんですが、事は急を要するんじゃないんでしょうか?   ま、自分は部外者なんでアレなんですが」

「それは、そう。みんなが心配。ことにリカちゃんは女性だしね」

「では、どうしますか?   ハーマイオニーとかで盛り上がってる場合じゃないでしょ?」

「ハーマイオニー?   んな事誰も言ってないじゃん。もしかして、フエくんハーマイオニーがタイプだったりとか?」

「てか、フエくん、キミはいったい何者?   なんでハリポタ知ってるん?  それに、あのダンジョン制覇するために入ったとか言ってたよね?  もしかしてもしかしたら、フエくん、キミこそが西の国の魔王とか?」

「あははは。ないない。なんでそうなるの?  ダンジョン制覇は自分の趣味なんで」

「なに、つまりフエくんは、そこらじゅうのダンジョン見つけては制覇しまくってるってわけ?」

「まあ、そんなところかな。スキルアップするのなかなか大変だけど、ダンジョン行けばモンスター腐るほどいるし、とにかく段階的にレベルアップできるので、はじめはゴブリンとかツノウサギとかスライムだとか弱い敵を繰り返し繰り返し倒していくことで無理することなくじょじょにステータスを高めていける」

「塵も積もれば山となる、ってやつね」

「そう。知らない内に経験値を稼げてレベルが上昇する。毎日ステータス画面をチェックするのが楽しみになるよ」

  ケンジがウンウンと頷く。

「そうなんだ、ほんとうにゲームやってる時みたいな感じなんだね、キャラがどんどん強くなっていく、その成長が楽しみで手応えを感じるんだよね。勉強の方もやればやっただけレベルアップしていくみたいで楽しくなるんだろうけど、結局自分は、楽しくなる前に投げ出しちゃったんだよね」

「そうなん?  まあ、ケンジ頭良さそうには見えないしな」

「ひでーな。まあ、そうなんだけど。勉強での成功体験がほぼないから、ゲームで代替えしてるのかもだよね」
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