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Side : ナオト4 目黒エンペラー
しおりを挟む一方、ナオトはナオトで、エロ界隈へ突入という展開になっていた。もっともこちらは、ケンとはちがいある程度予想してはいたことにはちがいなく、ナオト自ら働きかけたものだった。
はじめてロープクジ引きで引き当てたのは、お金持ち風歳上のおねい様。読書会の解散後、ちょっとよそみをした際に、おねい様の姿を見失ってしまったナオトは、慌ててとっつきの角を左に折れた。すると、暗がりで腕組みをしているおねい様にぶつかりかけた。
「なに? なにか用?」とおねいさん。
ナオトが面食らっていると、更におねいさんはいい募る。
「あなた、さっきお店であたしのお尻見てたでしょ?」
ナオトは唖然として二の句が告げない。背中に目があるのか。ていうか、つまりお店でいやらしい目つきで見ていた男につきまとわれているというシチュエーションでやれということか? もう恋のアバンチュールは始まっているのだ。ナオトはそう理解した。
「バレバレなんだから。しらばっくれても無駄よ。で、どうすんの?」
「え? どうすんのって?」
「交番に通報してもいいのよ」
「ええ!」ちょっと笑いそうになる。
「だったら、言うこときいて」
なんだかとんでもない展開になってきたぞとナオトはドキドキした。
「あたしの身体がほしいんでしょ?」
「ええ、まあ」と社交辞令で返したものの、これだけえげつなく言われるとなんか退くのだったが、おねいさんは、マジできれいだった。
「じゃ、ついてきて」
おねいさんは、そう言うが早いかタクシーを拾うと、先に自分が乗り込んだ。
ナオトは、開いたままのドアを前にして一瞬躊躇したが、おねいさんのスレンダーなのに肉付きのいい臀部から太腿にかけての豊かなラインを見て、生唾を呑み込むや車中の人となった。
「目黒に行ってください」
おねいさんは、そう言った。
ナオトは、あのお城みたいなラブホに行くのかと思った。目黒エンペラーという伝説のラブホが目黒にはあるのだ。
目黒エンペラーは、80年代後半に一旦閉館したが、2007年に復活したらしい。話しのネタに一度は行ってみたいと思っていたから、超ラッキーとか思った。
だって、お金持ち風なおねいさんなんだからこっちがお金出す必要もないし、最高じゃん。
手を伸ばせば、容易に触れることの出来るおばさまの柔らかい肢体を横目で眺めながら、赤ちゃんみたいになって、おねいさんの透き通るように真っ白な大きな乳房を早く吸いたいと思わずにいられなかった。
ナオトは、もともとスレンダーすぎる体型は好みではないけれど、おねいさんの適度に脂肪のついた女性らしい柔らかい線が好きだった。
タクシーは、するすると滑るように夜の街をすり抜けてゆき、あっという間に目黒に入ると右手の方向にライトアップされたお城が見えるはずだった。
だが、おねいさんは、権ノ助坂を上りきる少し手前で、タクシーを停めた。降りたところは、お洒落なシティホテルの前だった。
いつもここを使ってるんですか? という問を呑み込みながらおねいさんの後につづいて、エレベーターに乗り込んだ。
ルームナンバーは、203。白いドアを押し開けて中に入ると、セミダブルベッドが二台入った三十平米くらいのクラシカルな作りの客室だった。とてもシティホテルとは思えないほどの落ち着いた雰囲気に、ナオトは驚いた。
さすがは、おねいさん。ただやるだけの安宿じゃない。部屋の奥に縦長の窓が三つ。それぞれに、粋なレースのカーテンがかかっていた。
その前には、背の高いランプシェードと、アールヌーボー調のかわいい丸テーブルに椅子が二脚。お金をかけてあるのは、ナオトにもわかった。
いよいよ、ということでちょっと気まずい沈黙が広がった。けれどもナオトは、おねいさんが丸テーブルにハンドバッグを置いて振り返りざま、あっという間に唇を奪っていた。
ただしかし、おねいさんは震えているのだった。ふたりの歯が当たり、かちかちと鳴るのが内耳から伝わってくる。まるで男を知らない女性のそれではないかとナオトは思った。
キスだけで、こんなに震えるなんて。さっきまでの世慣れた有閑マダムみたいな雰囲気は消え去り、生娘のようにナオトの腕の中で震えている。
気晴らしに若い男の子を摘み食いする、そんな女性ではないらしい。これには、なにか深い事情があるようだと、うすうす気づいたけれど、ナオトは何もいわない。
おねいさんの栗毛に染めた美しい髪を両手でもしゃもしゃにしながら、キスをしつづけた。
息がとまるほどのながいながいキス。きっと、おねいさんの引いたルージュがナオトの頬にも唇にも付いていることだろう。
やがてナオトは、愛おしさがいっぱいになって、思いっきり舌を挿し入れ、おねいさんの舌を絡めとりながら唾液を吸い、歯も舐め回し着衣の上からふくよかなおっぱいを揉みしだいた。
おねいさんの声は、もう言葉にならない。くぐもった母音系の音を発するばかり。ナオトも完全に頭の中は真っ白だ。もう我慢出来ない。
そのまま、くず折れるようにして膝をつき、おねいさまの穿いているバイオレットのワイドパンツをがむしゃらに脱がそうとした。
すると、おねいさんは、初めて抵抗した。
「だめ。きれいにしてからじゃないといや」
おねいさんはナオトを残してバスルームに消えてしまった。
ナオトは、おねいさんと片時でも離れるのが辛かったけれど、女性の身だしなみに否やは唱えなかった。
やがて、虚脱感から開放されると不意に悪戯心が芽生え、ちょっとバスルームを覗いてやれと思った。怒るだろうけれど構うもんかと思った。
ナオトは、一気にマッパになって、バスルームに突撃した!
「キャー! ばかー! だめって、言ったでしょう」その声は怒気を孕んでいる。ナオトは、そんなこと言われてもぜんぜんお構いなし。
「いいじゃん、いいじゃん。これがほんとの裸の付き合いってね」
「もう!」といって、おねいさんはヒカルに水にしたシャワーを浴びせた。
「頭、冷やしなさい」
「ひゃああ」と逃げ惑うナオト。
豪華な部屋だけあって、バスルームも結構広くバスタブにナオトもおねいさんと一緒に浸かった。
磨き上げたばかりの抜けるように白い肌。匂い立つ大人の女性の色香に、ナオトはくらくらした。殊に、髪が濡れないようにアップにしてあるうなじが、そそりまくった。
ナオトは、ゆっくりおねいさんの後ろに廻って、豊満この上ないおっぱいを楽しみながら、うなじにキスした。
これ以上の幸せはないと思えるほどに、充分に満ち足りた気持ちになった。温かい湯のなかのおねいさんの大きなおっぱいは、つるつるとしているのに吸い付いてくるような、たとえようもない質感があった。
うなじから、首、肩と舌を這わせ、おねいさんの可愛く尖った頤も舐めて、後ろから再び唇を奪った。
「あーだめ。好きになっちゃいそう」
おねいさんは、図らずもそう言葉を洩らした。キスをしたらまたぞろ、その気になったナオトは、甘えるようにいった。
「ねぇ、いい?」
「だめー!」
おねいさんは、そういいながらナオトを振りかえり、アッカンベーをしてみせた。ナオトは、その仕種に思わず可愛いと思って、まるで恋人にするかのようにおねいさんを後ろから抱きかかえた
おねいさんにもその思いが伝わらない筈もない、劣情したのではない愛がそこにはあった。
ナオトもおねいさんもフリーズしたようにバスタブの中で動かなかった。しかし、やがておねいさんの柔らかい身体が小刻みに震えはじめた。
ナオトは、怪訝に思いおねいさんの顔を覗き込むようにした。おねいさんは、顔を背けながら嗚咽していた。
湯面におねいさんの涙がひとしずく、ひとしずく落ちてゆく。
「ごめんなさい。おれ、なにか悪いこと言いました?」
おねいさんは、かぶりを振る。
そして、ナオトに向き直り、泣きながら「ねぇ、キスして」とだけいった。
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