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Side : ケン 4 カリキュラム
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地獄の特訓そのニ。洞窟の巨大ダンジョンに一ヶ月のサバイバルを強いられ、死ぬのはオマエの勝手とかいわれるのかと思ってたら、なんでもいいからひとつだけ選べと言われたケン。そして、解脱するまでそれをやり続けろと言われたのだった。
FAXで送られてきたプリントに書いてあったものをザッと上げると、正座・オナ禁・素足で無数の画鋲の針の上に片足立ち・息を止める時間を徐々に延ばしていく・内臓殊に心臓を止めたり動かしたりを繰り返す・高層ビルからマジに飛んでみる・絶食・一切眠らない・水の上を歩く・逆立ちをしたまま生活する・一瞬たりとも休まずオナニーし続ける・バンジージャンプのロープを切ってジャンプする・火の中に身を投じる・重りをつけて湖底を歩く・トラックに身を投げる・プリンセステンコーみたいに後ろ手に手錠を掛けられ雁字搦めにロープで固定されて海に放り出され縄抜けに挑戦する、とか。
開いた口が塞がらなかった。冗談としか思えないが、冗談ではないからこそ怖ろしい。
そしてケンは結局、オナ禁を選んだ。というかオナ禁しかなかった。完璧に出来レースだ。絶対にオナ禁を選ぶしかないようになっているのだから。
正座なんかし続けたらダルマみたいに足が萎えてしまうし、素足で無数の画鋲の上に片足立ちとか信じられん。サルにオナニーを教えるとやり続けて死ぬとかはほんとうなんだろうか。やはり全然オナ禁の方がましだし、ていうかオナ禁以外は、やがてみな死に至るものばかりではないか。
婆羅門行者が解脱するために苦行を敢えてしていたというアレらしい。ケンもなんとなく婆羅門行者とかの修行を聞いたことがある。
インドでは古来から、身体を極度に痛めつけ苦しめ苛むことによって精神を浄化し高みへと昇華して、輪廻から解脱し悟りの境地に至ることを至高として、求道者が過酷な苦行を敢えて行っていたらしい。
かのブッダも断食を6年ほどやったらしいが、結局苦行は悟りには至らないと退けたらしいのだけれど、凡人がなんとかして解脱しようとするには、死ぬほど身体を痛めつけることが、いちばん効果があり早道なのかもしれないとケンも少し蒼ざめながらも思った。
しかし、チンチンに重い物をぶら下げて振り回すだとか、ありえない。やはり楽して覚醒など出来るはずもないということか。
修験道の役行者は、鬼を使っていたらしいがつまり、式神を出せたということなのだろうか。異世界モノではテイマーというのがあり、魔獣とかを隷属させる契約を結ぶが、
あらゆる感覚が研ぎ澄まされ、蝋燭の炎の揺らぐ音さえ聞こえる、そんな人間を超えた存在になるには死と背中合わせの苛烈な苦行やら荒業が絶対的に必要なのかもしれない。
ケンとしては、もちろん自分から苦しみの渦中に飛び込むなんて真っ平ゴメンだった。しかし、暑くも寒くもないAirdogが静かに稼働する快適な部屋の中でESPカードで絵柄当てクイズをいくらやったところで、まったく埒はあかないのはわかっていた。
異世界転生して、ギフトでもらったチート能力を保持したまま、リアルにまた戻ってくるとか出来ないだろうか。よくあるのは、現実世界の記憶を残したまま転生するパターンだ。
ご都合主義の塊だが、その真逆で異世界で手に入れたチート能力やら魔法を使って現代社会で無双する、みたいなのは出来ない相談か。
ただしかし、そもそも異世界にどうしたらいけるのかが、まずわからない。それが出来たならどれだけいいか。そんな夢みたいな話を実際に見させてくれるラノベは、だから需要がある。
みんな中学生にでもなれば、自分のちからでは現実世界がどうにもならないということを目の当たりにする。世の中はとにかくお金。お金に勝るものはこの世にないから、そのたくさんのお金を稼ぐためには、まずいい大学に入らなければならない。
一流の大学に入って一流の大企業に入社しなければ人生はお先真っ暗。お金というものが何ものにも優先されるこの世界は、つまり貧乏人にとっては地獄にほかならない。
まさに苦の娑婆なのだから、生きていること自体が苦行ではないか。だから、その苦行に耐えきれず自死を選ぶ者も後を絶たない。
ケンにしたって、まだそんなのっぴきならない厳しい状況を経験していないからまだ生き長らえているのかもしれず、誰にとっても人生とは闘いであるらしい。
未だに中国では仙人になる為に修行を積んでいる人が多くいるらしいが、道教のタオを身につけて神通力を発揮する。なんか久しぶりに神通力なんて言葉を使ってみたが、ケンはなぜか新鮮な感じだった。
神通力。現代ではほぼ死語である。しかし、仙人も相当な超人であり、むろん神に近づかんとして修行するらしいので、超常的なパワーはハンパない。
なんといっても仙人というと、飛翔するというのがケンにとっての仙人のイメージだが、あの壇ノ浦の合戦で、次々に6メートル以上離れた味方の船に飛び移るという人間離れした八艘飛びで知られる源義経は、鞍馬山で天狗について修行をしたらしい。
なので、何だかんだ言っても昔には修験道やら陰陽道やら日本にも久米仙人なる仙人もいたようだし、呪術廻戦みたいな世界もまんざら嘘ではないとケンには思えた。
というわけで、ケンはオナ禁を修行のカリキュラムに組み込んだのだが、確かにビルから傘をさしてメリーポピンズみたいに飛び降りるとか、自分が行動はしないが幻想を見せられて臨死体験の恐怖を味わうとかよりは、いくらかマシなようにケンには思えたのだが、そうは問屋が卸さないようだった。
FAXで送られてきたプリントに書いてあったものをザッと上げると、正座・オナ禁・素足で無数の画鋲の針の上に片足立ち・息を止める時間を徐々に延ばしていく・内臓殊に心臓を止めたり動かしたりを繰り返す・高層ビルからマジに飛んでみる・絶食・一切眠らない・水の上を歩く・逆立ちをしたまま生活する・一瞬たりとも休まずオナニーし続ける・バンジージャンプのロープを切ってジャンプする・火の中に身を投じる・重りをつけて湖底を歩く・トラックに身を投げる・プリンセステンコーみたいに後ろ手に手錠を掛けられ雁字搦めにロープで固定されて海に放り出され縄抜けに挑戦する、とか。
開いた口が塞がらなかった。冗談としか思えないが、冗談ではないからこそ怖ろしい。
そしてケンは結局、オナ禁を選んだ。というかオナ禁しかなかった。完璧に出来レースだ。絶対にオナ禁を選ぶしかないようになっているのだから。
正座なんかし続けたらダルマみたいに足が萎えてしまうし、素足で無数の画鋲の上に片足立ちとか信じられん。サルにオナニーを教えるとやり続けて死ぬとかはほんとうなんだろうか。やはり全然オナ禁の方がましだし、ていうかオナ禁以外は、やがてみな死に至るものばかりではないか。
婆羅門行者が解脱するために苦行を敢えてしていたというアレらしい。ケンもなんとなく婆羅門行者とかの修行を聞いたことがある。
インドでは古来から、身体を極度に痛めつけ苦しめ苛むことによって精神を浄化し高みへと昇華して、輪廻から解脱し悟りの境地に至ることを至高として、求道者が過酷な苦行を敢えて行っていたらしい。
かのブッダも断食を6年ほどやったらしいが、結局苦行は悟りには至らないと退けたらしいのだけれど、凡人がなんとかして解脱しようとするには、死ぬほど身体を痛めつけることが、いちばん効果があり早道なのかもしれないとケンも少し蒼ざめながらも思った。
しかし、チンチンに重い物をぶら下げて振り回すだとか、ありえない。やはり楽して覚醒など出来るはずもないということか。
修験道の役行者は、鬼を使っていたらしいがつまり、式神を出せたということなのだろうか。異世界モノではテイマーというのがあり、魔獣とかを隷属させる契約を結ぶが、
あらゆる感覚が研ぎ澄まされ、蝋燭の炎の揺らぐ音さえ聞こえる、そんな人間を超えた存在になるには死と背中合わせの苛烈な苦行やら荒業が絶対的に必要なのかもしれない。
ケンとしては、もちろん自分から苦しみの渦中に飛び込むなんて真っ平ゴメンだった。しかし、暑くも寒くもないAirdogが静かに稼働する快適な部屋の中でESPカードで絵柄当てクイズをいくらやったところで、まったく埒はあかないのはわかっていた。
異世界転生して、ギフトでもらったチート能力を保持したまま、リアルにまた戻ってくるとか出来ないだろうか。よくあるのは、現実世界の記憶を残したまま転生するパターンだ。
ご都合主義の塊だが、その真逆で異世界で手に入れたチート能力やら魔法を使って現代社会で無双する、みたいなのは出来ない相談か。
ただしかし、そもそも異世界にどうしたらいけるのかが、まずわからない。それが出来たならどれだけいいか。そんな夢みたいな話を実際に見させてくれるラノベは、だから需要がある。
みんな中学生にでもなれば、自分のちからでは現実世界がどうにもならないということを目の当たりにする。世の中はとにかくお金。お金に勝るものはこの世にないから、そのたくさんのお金を稼ぐためには、まずいい大学に入らなければならない。
一流の大学に入って一流の大企業に入社しなければ人生はお先真っ暗。お金というものが何ものにも優先されるこの世界は、つまり貧乏人にとっては地獄にほかならない。
まさに苦の娑婆なのだから、生きていること自体が苦行ではないか。だから、その苦行に耐えきれず自死を選ぶ者も後を絶たない。
ケンにしたって、まだそんなのっぴきならない厳しい状況を経験していないからまだ生き長らえているのかもしれず、誰にとっても人生とは闘いであるらしい。
未だに中国では仙人になる為に修行を積んでいる人が多くいるらしいが、道教のタオを身につけて神通力を発揮する。なんか久しぶりに神通力なんて言葉を使ってみたが、ケンはなぜか新鮮な感じだった。
神通力。現代ではほぼ死語である。しかし、仙人も相当な超人であり、むろん神に近づかんとして修行するらしいので、超常的なパワーはハンパない。
なんといっても仙人というと、飛翔するというのがケンにとっての仙人のイメージだが、あの壇ノ浦の合戦で、次々に6メートル以上離れた味方の船に飛び移るという人間離れした八艘飛びで知られる源義経は、鞍馬山で天狗について修行をしたらしい。
なので、何だかんだ言っても昔には修験道やら陰陽道やら日本にも久米仙人なる仙人もいたようだし、呪術廻戦みたいな世界もまんざら嘘ではないとケンには思えた。
というわけで、ケンはオナ禁を修行のカリキュラムに組み込んだのだが、確かにビルから傘をさしてメリーポピンズみたいに飛び降りるとか、自分が行動はしないが幻想を見せられて臨死体験の恐怖を味わうとかよりは、いくらかマシなようにケンには思えたのだが、そうは問屋が卸さないようだった。
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