クリシェ

トリヤマケイ

文字の大きさ
上 下
18 / 72

Side : ナオト1

しおりを挟む
「ちょっと前、キミとケンくんが代々木公園で拉致られた日の話だけれど、君たちシブチカのカトレアにいたよね?   じつはあのパーティにぼくはもたんだけど、実は、それはたまたまで、実はだいぶ前からケンくんはマークしてたんだ。あの後、ケンくんが今はもうない電力館の前で駄々をこねた際に、ふざけて呪術師だか忍者のように印を結んで何事かそれらしく呪文を唱えたんだけれど、実はその時たまたま近くにいたエスパーである仲間が、なにやら得体の知れないパワーを感じて、それがケンくんであることを突き止めた」

「マジで?」

「もちろんケンくんは、ネタで印を結ぶみたいなマネをしたにすぎないんだろうけれど、知らず知らずにサイキック的なパワーがダダ漏れしていたらしい。わかるやつにはわかるというわけ」

「ケンなら、まあ、驚かないかな、変人だから」

「そんなわけで、ぼくはケンくんとキミをストーカーよろしくつけていたんだけど、ケンくんが八つ墓村のコスプレをして鬼の如きそれこそ鬼気迫る形相でぐるぐる徘徊している際に、ぼくはケンくんが磨けば光る原石と確証したんだよ」

「そこ、笑うとこですかね?」

「いや。そこで、演習も兼ねてケンくんとキミを拉致ったんだけど、でいま、面談中」

「どういうことなんですか?   わけがわからない」

「いやあ、お怒りはごもっとも。あ、ハンスです。ま、エージェントネームですけどね」

「てか、ケンは?」

「ケンくんは今、蒲田の町工場の床に転がされている、かな」

「は?」

「手荒なマネをしてしまい、申し訳ない。こちらの見立てだと、その、ケンくんはかなりの超能力者だと思われるんだけど、キミの場合、ナオトくんだっけ?   残念ながらそういった素質はないようだね」

「よくぼくの名前をご存知ですね?   オレオレ詐欺の受け子のバイトなんてやりませんよ?」

「あははは。いや、ナオトくんおもろいなぁ。僕らはまあ、群れて活動することはあまりないんだけど、お察しの通りオレオレをやってる、わけではなく、いわゆる超能力と呼ばれてる能力を持つ者のチームのひとつなんだ」

「まあ、いつになっても信じてはもらえない能力ですね」

「ほう。じゃナオトくんは、サイキックとかテレパシー信じてる派か?」

「子どもの頃、ケンとスプーン曲げやってひとつも曲がりませんでした、ぼくは」

「それじゃ、話が早い。日本の中でもね、ケンくんみたいな能力を持つ者でも、そのことに自覚的でない人がたくさんいるんだ。つまり、潜在的超能力者とでもいう人たちだね。でね、これからが大事な事なんだけど」

「悪いエスパーもいるってやつ?」

「そうなんだ。だから、そっち系のチームに先に見つけられてしまうとマズイというのがある。だからいつもアンテナを張ってるんだけどね」

「なるほど。で、ケンにはその才能あるから受け子をやらせると?」

「あのね」

「じゃ、そういうことなら、あとはケン自身の問題ですね。ぼくには残念ながらその才能がなかったようですからね、ひとりでコツコツ壁抜けの練習続けます」

「壁抜け?」

「はい。まったくぼくには出来たためしはないんですけどね、スプーンの時もそうですけど、なぜか一緒にやる人は軽々とスプーン曲げちゃったり、壁抜け出来ちゃったりするんですよね」

「ふーん。興味深い話だね、まるでサイタマ氏とキングの関係みたいな?」

「なにそれ?  アニメの話ですか?」

「知ってんじゃん」

「まあ、サイタマ氏みたいなわけないですよね、だったら嬉しいんだけど」

「じゃ、ナオトくんはこういった荒唐無稽的な話に対して肯定的なんだね」

「とりあえず、まあ、そうですね」

「じゃあ、どうだろう?   ケンくんにはね、能力をコントロールするとか伸ばすとかの訓練を受けてもらうつもりなんだけど、ナオトくんには、別メニューでやってもらおうかな、どう?」

「ええ。ぼくとしても念話ですか?  テレパシーみたいなのに憧れはありますね。あと瞬間移動なんて最高じゃないですか電車賃浮かせるし、いや、冗談です」

「そういうことなら。あとはナオトくんがそういう超常的な、ある意味とんでもないチートなスキルを習得したとしても、絶対悪いことには使わないと約束出来るならば、という話なんだけどね」

「もちろん、そんなつもりはありませんから。透視で女風呂覗くとか、物品引寄せでお金やら宝石やらガンガン引寄せたりしません。あとやろうと思ったらいくらでも犯罪できそうですね、考えてみると」

「そうなんだよね。毎月ランダムに他人の口座から毎月500円ずつ1万人分抜き取るとかね」

「少額ならバレないですもんね、それでも500万かい!」

「そういう輩が、実際いるんだよ。まあ、そいつらとうちらは戦っているわけだけれどね、そのことは、ま、おいおい話すけど、で、どう?   悪用しないと約束してもらえるかな?」

「わかりました。もちろん悪用などしないと誓います。もしそれを破ってしまったら、処罰はお任せします」

「そう。でも漫画やアニメの話じゃないんだよね、そこらへんしっかり理解してもらえてるかな?   異世界ならともかくリアルな世界で超常的なパワーを現前させるってことは、ある意味神になるってことなんだからね」

「は、はい。肝に命じます」

「わかった。じゃ、ナオトくんにもお願いするということで、また近いうち連絡しますから」


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

入れ替わった恋人

廣瀬純一
ファンタジー
大学生の恋人同士の入れ替わりの話

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

強制フラグは、いりません! ~今いる世界が、誰かの二次小説の中だなんて思うかよ! JKと禁断の恋愛するなら、自力でやらせてもらうからっ!~

ハル*
ファンタジー
高校教師の俺。 いつもと同じように過ごしていたはずなのに、ある日を境にちょっとずつ何かが変わっていく。 テスト準備期間のある放課後。行き慣れた部室に向かった俺の目の前に、ぐっすり眠っているマネージャーのあの娘。 そのシチュエーションの最中、頭ん中で変な音と共に、俺の日常を変えていく声が聞こえた。 『強制フラグを、立てますか?』 その言葉自体を知らないわけじゃない。 だがしかし、そのフラグって、何に対してなんだ? 聞いたことがない声。聞こえてくる場所も、ハッキリしない。 混乱する俺に、さっきの声が繰り返された。 しかも、ちょっとだけ違うセリフで。 『強制フラグを立てますよ? いいですね?』 その変化は、目の前の彼女の名前を呼んだ瞬間に訪れた。 「今日って、そんなに疲れるようなことあったか?」 今まで感じたことがない違和感に、さっさと目の前のことを終わらせようとした俺。 結論づけた瞬間、俺の体が勝手に動いた。 『強制フラグを立てました』 その声と、ほぼ同時に。 高校教師の俺が、自分の気持ちに反する行動を勝手に決めつけられながら、 女子高生と禁断の恋愛? しかも、勝手に決めつけているのが、どこぞの誰かが書いている某アプリの二次小説の作者って……。 いやいや。俺、そんなセリフ言わないし! 甘い言葉だなんて、吐いたことないのに、勝手に言わせないでくれって! 俺のイメージが崩れる一方なんだけど! ……でも、この娘、いい子なんだよな。 っていうか、この娘を嫌うようなやつなんて、いるのか? 「ごめんなさい。……センセイは、先生なのに。好きに…なっちゃ、だめなのに」 このセリフは、彼女の本心か? それともこれも俺と彼女の恋愛フラグが立たせられているせい? 誰かの二次小説の中で振り回される高校教師と女子高生の恋愛物語が、今、はじまる。

処理中です...