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黒いジャガー
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壁に背を預けながら、テナーサックスをブローしまくる男がいる。アムステルダムの地下通路。
ナオトは、コッソリ覗いてる。ゲームにも飽きてきたので、ちょっとひと休み。グーグルアースをたちあげて、アムステルダムと入力。あとは聴覚を研ぎ澄ませ、好みの音を探した。
黒いフィーリングたっぷりのテナーは、ソウルフルに咆哮し、黒いジャガーのごとく、通り過ぎてゆく男たちの背中につぎつぎに襲いかかっていく。
無数の男たちの影を幾つも幾つも映してきたメタリックな輝きを放つ壁には、落書きなど一切ない。
やがて人通りが少なくなってくると、男はテナーを吹きやめる。
そして、傍らに置いたハードケースに投げ入れられた小銭を、無造作に革ジャンのポケットに突っ込むと、テナーをしまってケースを閉じ、タバコに火を点けた。
男たちの背中に突き刺さり、足元をすり抜け、通路内を駆けめぐっていた黒いジャガーは、なりを潜め、その獰猛な息遣いだけが聞こえている。
「じゃ、また明日な」
誰にいうとでもなく男は、そう呟くようにいって地下通路を抜けていく。
向こう側の出口から覗いて見える旅行会社の大きな電飾の看板の瞬きを見ながら、男はなにを想ったのか玩具のトランペットを取り出して、「オオ、ブレネリ」の一節を吹きはじめた。
オモロ~とナオトは、手を叩いて喜んだ。
ナオトは、コッソリ覗いてる。ゲームにも飽きてきたので、ちょっとひと休み。グーグルアースをたちあげて、アムステルダムと入力。あとは聴覚を研ぎ澄ませ、好みの音を探した。
黒いフィーリングたっぷりのテナーは、ソウルフルに咆哮し、黒いジャガーのごとく、通り過ぎてゆく男たちの背中につぎつぎに襲いかかっていく。
無数の男たちの影を幾つも幾つも映してきたメタリックな輝きを放つ壁には、落書きなど一切ない。
やがて人通りが少なくなってくると、男はテナーを吹きやめる。
そして、傍らに置いたハードケースに投げ入れられた小銭を、無造作に革ジャンのポケットに突っ込むと、テナーをしまってケースを閉じ、タバコに火を点けた。
男たちの背中に突き刺さり、足元をすり抜け、通路内を駆けめぐっていた黒いジャガーは、なりを潜め、その獰猛な息遣いだけが聞こえている。
「じゃ、また明日な」
誰にいうとでもなく男は、そう呟くようにいって地下通路を抜けていく。
向こう側の出口から覗いて見える旅行会社の大きな電飾の看板の瞬きを見ながら、男はなにを想ったのか玩具のトランペットを取り出して、「オオ、ブレネリ」の一節を吹きはじめた。
オモロ~とナオトは、手を叩いて喜んだ。
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