花散る男女

トリダマケむ

文字の倧きさ
倧䞭小
侊 例
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第2郚 名叀屋線

🎵 青山くんず掚しメンず

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   ãšã“ろで、きみは、
「モナリザ・オヌバヌドラむブ」を読んだだろうか。





   ãƒ¬ã‚€ã¯å®Ÿã®ãšã“ろ「ニュヌロマンサヌ」しか読んではいないのだが、モナリザほどカッコいいタむトルの小説を自分は知らないず思っおいる。

   


 タむトルは、やはり䜜品の顔なのだからずおも重芁であるこずは蚀わずもがなだ



 ずころでレむが青山くんに出䌚ったずきの衝撃は、サむバヌパンクを読んだずきず同じくらいの衝撃床を䌎っおいた。




    çŸä»£ã¯ã€é“を歩けばアむドルに出䌚える、そのくらい誰もがアむドルず自称しおはばからない、そんな時代だ。




   è€èˆ—のメガアむドルグルヌプから地䞋アむドルたで数え挙げたらきりがないほどで、それに加えお商業的ではない自称アむドルも続出しおいるのだから、日本人は、よほどアむドルが奜きらしい。




   é’山くんもその䟋倖ではなく、アむドルが奜きすぎお自らアむドルになるこずにしたのかもしれなかった。



 ただし、厳密にいえばアむドルず同じように華やかなステヌゞで歌い螊るわけではない。圌の舞台は、路䞊だった。





    ãŸã èŠ‹ãŸã“ずはないのだが、アコギ䞀本で、自䜜の歌を路䞊で歌っおいるらしい。





    åœŒã‚’発芋したのは、たったくの偶然ずしか思われない。圌はむンスタで動画を配信しおいた。




    ãã®ã‚€ãƒ³ã‚¹ã‚¿ã§ã€äœ•ã®æ°—なしにアむドルの曞き蟌みに向けおのコメント欄を読んでいたレむは、たたたた䜕を思ったのか自分でもわからないのだが、アむドルにコメントしおいたある人物のペヌゞぞ飛んだのだった。アむコンが䜕かひっかかったのかもしれない。





    ã™ã‚‹ãšãã®äººç‰©ã¯éŸ³æ¥œãŒå¥œãã‚‰ã—YouTubeぞのリンクがたくさん貌り付けおあった。


 

 それは、自分ずしおはたるで興味を惹かれるこずはない、いわゆる昭和を代衚する歌謡曲ばかりだった。矎空ひばりだずか橋幞倫だずか村田英雄ずか




    ã™ã‚‹ãšã€ãã®ãªã‹ã«åœŒè‡ªèº«ã®å‹•ç”»ãŒã‚っお、それを芳たのだが䜕やらどこかのネカフェでゲヌムをやっおいるだけの映像だった。それも画面は䞀切芋えず、芋えるのは圌の背䞭だけだった。




     æ¬¡ã«ãŸãŸäœ•ã‚„ら気になっお、たたアむドルの垢のコメント欄のアむコンから圌のずころに飛んだのだが、今床は仕事終わりに配信を開始したらしく、公園らしき野倖の映像でビヌル片手に非垞にリラックスした感じの配信であり、オヌガズムの埌の気怠い満足感みたいなアトモスフィアに充たされおいた。   






   äœ•ã‚„ら語っおいたが、芁領を埗ずさっぱり内容が頭に入っおこない。しかし、急にスむッチが入ったかのように競銬の話をしはじめたのだった。





   ãã‚Œã«ã‚ˆã‚‹ãšã€åœŒã¯ãƒ‘ドックでよく銬の毛艶なんかをチェックしお、これたでも幟床か穎銬を芋぀けたこずがあるらしい。




   ãã—お、その日も圌はい぀ものようにお尻の筋肉の盛り䞊がり方だずか、毛䞊みだずか现かいチェックを入れながら、眺めおいたらしいのだが、ずんでもない穎銬を芋぀けだしたずいうのだ。



   ãã®éŠ¬ã‚’芋た瞬間に党身総毛立ったずいうから、たしかに䜕やらすごかったらしい。そしお、圌はその堎で雷に打たれように身䜓に電流が走り頭の䞭が真っ癜になるず、癜昌倢を芋たのだずいうのだ。





   ãã‚Œã¯ã€ãã®éŠ¬ãŒæœ€çµ‚コヌナヌから䞀気に捲りたくっお先頭集団をごがう抜きにし、トップをかっさらっおしたうずいう、実に生々しい映像だったらしい。  




   ã“れはもう䞀も二もなく、この穎銬に賭けようずは思ったのだが、生来のビンボヌ癖が有り金党郚を突っ蟌むこずにブレヌキをかけおいたらしい。




   ãã“で出走ぎりぎりたで考えようず思い、銬刞はただその時点では䞀枚も買わなかったずいうのだ。




   ãã‚ŒãŒé‹å‘œã®åˆ†ã‹ã‚Œé“っだ。




 圌はレヌス発走予定時刻の十分前に買う぀もりでいた。だが、どうやっおも銬刞を買うこずが出来なくなっおしたう。




   åœŒã¯éŠ¬åˆžå£²ã‚Šå Žã«å‘かう最䞭に突劂ずしおナルコレプシヌを発症したのだずいう。ナルコレプシヌは、昌日䞭突然猛烈な睡魔に襲われ、車の運転䞭でも、あるいはしおる真っ最䞭であっおも、眠りこけおしたうずいう睡眠障害の病いだ。





   ã‚ずでわかったこずだが、そのずき圌が有り金党郚、穎銬に賭けおいたら、配圓は4億を超えおいたらしい。 





   åœŒã¯å‹ã¡éŠ¬ãŒç¢ºå®Ÿã«ã‚ã‹ã£ãŠã„たのだが、自分がその予想的䞭の恩恵に济するこずはなかった、ずいうなにやら凄いのだが、凄いだけにシェヌクスピアも笑っおしたうほどの悲劇だった。




   åœŒã¯ãã‚Œã ã‘䞀気に語り終えるず、すべおを攟擲したようなたさにむッちゃった衚情で䞀点を芋぀めたたた、動かなくなっおしたった。





   ãã‚Œã¯ã€ãªãœã‹æ˜”のブラりン管のテレビで芋た、攟映が終了しおしたったずきの砂嵐のようなホワむトノむズを思い出させた。




   ãã®æ€è€ƒã‚’停止させるような意味䞍明なノむズをもう少し我慢しお芋続けおいれば䜕かずお぀もなく玠敵な秘密の攟送が始たるのではないのか、それゆえにわけのわからないノむズを垂れ流すこずによっお、人を篩にかけおいるのではないか、などず思ったものだった。




   ä»¶ã®åœŒã®æ˜ åƒã¯ã€ãƒ–ツリず音を立おるようにしお断絶されブラックアりトした。それはたるで、氞遠の別れを想わせるようなこれ以䞊ないほどの倖界ぞの完璧な拒絶だった。





   ã ãŒã€ãã®åŸŒã«ãƒ–ラックアりトしたその䜕者も存圚しないはずのブランクになんず文字がゆなゆなず浮かび䞊がっおきたのだ。




   ãã“には、驚くべきこずが蚘されおあった。なんずわけのわからないこずに、そこで圌は独り握手䌚を開催するず告げおいるのだった。




   ã“れには面食らった。久しぶりに面食らうなどずいう衚珟をしたくなる事象にぶちあったこずに察しお僥倖ず思うべきなのか吊か。



 兎にも角にもこのメッセヌゞには、悶絶した。




   ãŸã‚、たしかに動画配信を続けるこずによっお、圌にもいくばかりかの固定のファンが存圚するであろうこずは想像に難くないが、それにしおも、である。これは、暎挙ずいっおしたっおいいのではないか。




   è·æ¥­ãšã—おやっおいるならば、物販は、生呜線だろうから握手䌚は倚いにありだが、圌はなんらかの仕事に就おいるのだろうし、握手だけずいうのは意味がわからない。それずも、意識の䞊では圌は既に抌しも抌されもせぬ立掟なアむドルなのだろうか。




   ã„ったいどういう経緯で握手䌚をしたいなどずいう考えに至ったのか、そこが是非ずも知りたかったが、どうせくだらない理由か、あるいは凡人にはわからない厇高な理由で、いずれにせよ聞いたずころでわけがわからないだろうからず、その内忘れおしたった。






   ãã‚Œã‹ã‚‰ã„ろんなこずがいっぺんに起こった。
   





 勀め先の䌚瀟の倒産。絊料未払いが四ヶ月ほど続いた。埌に劎働基準局より未払い分盞圓が八掛けで支絊されたが、家賃をその間どうやっお支払っおいたのか、思い出せない。 



 預貯金などたったくない人間なのだから、蚘憶にないけれど闇バむトでもやったのだろうか。
 


 そしお。




   å…¥é™¢ã—おいた母の死。






 ある皋床は予枬はしおいたが『母の死』ずいう未知なるものは氞遠に珟前するこずのないものず、向き合うこずを拒絶しおいた。





 病院から知らせがあった時には、いよいよ来るずきが来たのだず諊めざるを埗なかったが、凄たじい衝撃だった。







   ã„い事は、連続しないような蚘憶があるが、悪いこずは重なっおくるような気がする。






   ã—かし、その時には悪いこずのように思われたこずも、時が経぀ず逆にあれがなければ、倧倉なこずになっおいた、などずいうこずもあるから、䞀抂に良い悪いは刀断できない。





   æ¥œå€©å®¶ã®ãƒ¬ã‚€ã¯çµå±€ã®ãšã“ろ、すべおは自分にずっお良い事なのだずする完璧なプラス思考の持ち䞻だ。




   äººã‚’疑い出したらきりがないし、たた、過ぎ去ったこずをくよくよ考える事も、これからのこずを心配し、あれやこれや思い悩む事も、たったくの埒劎に過ぎないばかりか、自分の心の鏡を曇らせるだけだ。





   ãŸãšãˆã°ã€è‚‰èŠªãšã®åˆ¥ã‚Œã§ã‚るずか、家族そのもののペットずの別れであるずか、生きおいればどうしおも避けられない哀しみである「死」ずいうものは、厳然ず存圚する。





   ãƒ‘むレヌツ・オブ・カリビアンのフラむング・ダッチマン号船長デむノィヌ・ゞョヌンズの亡霊であるずか、死の領域に属する霊たちは、圓たり前の話だが既に死んでいるだけに、生呜の喪倱ずいう最倧の苊しみからは解攟されおいるわけで、そこには死ずいう抂念はない。





   ã ãŒçŸå®Ÿäž–界に生きる人は、その身を裂かれるような痛みを䌎う哀しみを、乗り越えおいかなければならない。それが、肉䜓を有する人ずいうものが、生きるずいうこずなのだ。








   ãƒ¬ã‚€ãŒã‚„っずこさ、新しい仕事先を探し出し、なんずか朜り蟌んだ頃、季節はもう秋めいおいた。




   ä¹…しぶりにむンスタで、䟋の青山くんのアむコンを芋぀け、飛んでみた。かわりなくやっおいるようで、なによりだが、あの握手䌚はどうなったのだろうか。





   ãƒ­ã‚°ã‚’芋るほどの興味はないが、気になるこずは気になる。ず、そこで告知を芋぀けた。たたぞろ独り握手䌚をやるらしい。堎所は、吉祥寺ず蚘されおあった。






  ãã—お、なぜか行く気になっおいる自分をそこに発芋するたでに、時間はそれほどかからなかったが、なぜたた、そんなに興味を芚えるのだろうか、自分でもわけがわからなかった。


 
 吉祥寺は、孊生の頃よく遊びに来たので銎染みがあった。



   ä¹…しぶりに恵比寿ダコの前を通ったら、案の定食べたくなったが、ずりあえずパスしお倧䞭を芋に行った。店内は盞倉わらず、わけのわからないもので溢れ返っおいた。





 ずっず読み方がわからなかったが、ダむチュヌが正しいらしい。今さら知っおもずいうのはあるが、タむチュンだずばかり思っおいた。そういえば、金倧䞭キム・デゞュンずいう人物もいたっけ。




   å‰ç¥¥å¯ºã¯ã€ãƒžãƒ‹ã‚¢ãƒƒã‚¯ãªå°ã•ãªåº—が点圚しおいるので、䞀日䞭いおも飜きない。今でも井の頭公園は、カップルが行くず別れるずいう郜垂䌝説がたこずしやかに囁かれおいるのだろうか。





   ã‚¢ãƒŒã‚±ãƒŒãƒ‰ã®çµ‚わりのモスで、お昌を食べおから、ディスクナニオンをちょい冷やかし、握手䌚䌚堎ぞず向かった。





   å Žæ‰€ã¯ã€æ±æ€¥ãƒ‡ãƒ‘ヌトの二階に䜵蚭されおいる広めのバルコニヌみたいな䌑憩堎所だった。




   ãŒã‚‰ã‚“ずしたスペヌスには、ずころどころにりッドの頑䞈そうなテヌブルず怅子が蚭えおあった。


   é ç›®ã§ã¯ã£ãã‚Šãšã¯ç¢ºèªã§ããªã„が、動画の圌らしき人物が、隅の䞀角にあるテヌブルにひずり陣取っおいた。だだっ広いスペヌスには、圌しかいないので、たちがいなく圌が青山くんなのだろう。




   ãŸã èª°ã‚‚握手に珟われた様子はない。ずいうか、誰も来ないこずをレむは確かめに来たのではないのかず思っおいる。はっきり蚀っおレむ自身も自分のこの行動に䜕の目的があるのかが、よくわからないのだ。






   ã»ã‚‰ã€ã‚„っぱり誰も来なかっただろ ãšã€èƒžã‚’撫で䞋ろし安心したいのか。誰も来るわけねヌだろず、せせら嗀い意地悪な気持ちを満足させたいのか。ほんずうのずころ、よくわからない。






   æš‡ã§ä»•æ–¹ãªã„ので、持っお来た文庫本でも読もうず思ったが、たるっきり頭に入っおこない。なんだろう、この感芚。なにかざわざわず胞隒ぎがするような、䞍思議な感芚がする。





   åœŒã¯ã©ã†ãªã®ã‹ãšæ§˜å­ã‚’窺っおみるず、焊るでもなく、むラ぀くでもなく眠っおいるのか、泰然ず瞑目したたた静かに座っおいる。






   æ™¯æ°—づけに、なにか聎こうかずむダホンで、いろいろ聎きはじめた。





   ã‚„がおアむドルグルヌプのMVを芖聎しながら俄かに心地よくなり、メンバヌたちがロヌファヌを手に持っお振るあたりで、眠りに萜ちおしたった......らしい。 







   è‡ªåˆ†ã‚‚ナルコレプシヌくさいず思い぀぀、スマホを芋るずすでにここに来おから3時間近く経過しおいた。






   ã‚„はり誰も来ない。居眠りしおいた間にも来おはいないだろう。いったい圌は誰も来ない握手を䜕郚たでやる぀もりなのか。





   ãã—お、あたりに照明が灯りはじめた頃、レむは聞いた。それは、倖階段を䞊がっおくるヒヌルの音だ。    





   èŠ‹ã‚‹ãšãã®å¥³æ€§ã¯ã€å¥³å„ªåžœã‚’目深に被り、サングラスにマスクをしおいた。そしお、レむのそばを通り抜けおいくず、圌のいる方ぞずたっすぐに向かっおいく。





   ã©ã“か芋芚えのある颚貌だった。なぜか、動悞がする。動悞がずたらない。





   åœŒãŒã€ç«‹ã¡ã‚がった。テヌブルを挟んで圌女ず察峙するず、䜕やら話しはじめた。遠すぎお䜕も聞こえない。





   åœŒå¥³ã¯ã€å¥³å„ªåžœã‚’テヌブルに眮き、座っお話をしはじめた。レむは、思わず駆け出しおいた。




  åå¯ŸåŽã®å€–階段から降りるただの客のふりをしお、通り過ぎおから、ふたりのテヌブルを振り返りざた、ちらりず盗み芋る。




   æ€ã‚ãšå£°ã‚’䞊げそうになった。マスクずサングラスを倖した玠顔のたたの矎しい圌女がそこにいた。




   ãã‚Œã¯ã€ä»Šã‚’ずきめくアむドルグルヌプの元メンバヌ、あの人に他ならないず思った。むろん、誰も信じるわけもないが、クリ゜ツだったのだ。






   ã‚‚しかしたなら、圌女は友人なのだろうか、青山くんは別に驚いた様子でもなく、い぀ものように飄々ず圌女ず䌚話しおいた。






   äœ•ã‹ãŸã ãªã‚‰ãªã„感じがする奎だずは思っおいたが、パヌティの䞀員ずしお仲間に迎え入れるのに盞応しいパヌ゜ナリティヌではないかずレむは思った。





 それに、圌女ずは知り合いのようだし、ずいう䞋心もなきにしもあらずだった。




 そしお、階段を降りおいくレむの背䞭に「たいやん」ず蚀っおいる青山くんの声が槍のように突き刺さった...






  
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