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第一章 救世主と聖女
第48話 新たな国へ
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ヒデオの魔力弾に撃たれたポーラを救う為、アルの本体の力を取り戻す決意をした俺はミコトとアルの三人? で旅発つ事を決意した。
「アスカ。それで次はどこに向かうの?」
プリメラの問いに俺は首を傾げる。どこと言われても、まだこの世界の地図は頭に入っていないからな。でも、行く場所はすでに決めてある。
「どこに行くにしても、ここは小さな島国だから船が必要よ」
「そうなんですね。プリメラ様。俺は、あいつ。ヒデオの居る国に向かおうかと思っています」
「サウザートね」
あいつの居る国はサウザートって言うのか。覚えておく。
「でも、残念だけどサウザートへの直通便は無いよ。このエスティレから出ている船は、女神バルディアのグレイステラか魔王ブラッドのサウスバレンのどちらか。サウザートへ行くのなら、サウスバレンに渡り、徒歩で入るしかないわね。私としてはグレイステラに行く方をお勧めするけど」
サウスバレンはそんなに危険な地域なのだろうか?
プリメラが心配そうな顔でこっちを見ている。
「プリメラ様がそう言っても、俺はポーラをこんな目に合わせたあいつを許せない。まずはあいつに落とし前を付けさせます」
「うーん。まいっか。グレイステラに行ったら次はノルディアスになるだろうし。あっちに行くよりはましかもしれないわね」
ノルディアスというのは、サウスバレンよりも危険みたいだな。だったら、そこは最後に回るのがいいのかもしれない。
「じゃあ、サウザートに行く前にサウスバレンの魔王と会った方がいいわよ。あそこのブラッドは魔王の中でもまだ話が通じるだろうし、何よりサウザートと戦争しようとしているから」
え? 前にこの世界の状況を聞いた時、六竦みの状況でバランスが保たれていると聞いたはずだ。それを破る為に俺達の世界から召喚されたって聞いたのに、戦争だって?
「だから、グレイステラの方がまだ良いと思うのだけれど、でも、戦争を阻止して、全ての魔王と女神に会わなければ、この世界は邪神によって滅ぼされてしまう。一つだけ忠告しておくね。邪神の話はまだ他にはしないで。これは記憶を戻した私しか分からない。世界の理でアルが救世主の隣に現れる神聖な龍の子という認識が戻っただけなの。混乱を招くでしょうから」
「分かりました。それでは、ポーラをよろしくお願いします」
「うん。任せて」
俺達はプリメラに礼をすると足下に転移陣が現れ、輝いたかと思ったら、試練の塔の外に転移していた。
塔の外は、カオスドラゴンが現れた事でまだざわついていたが、空にあった黒い巨影が無くなった事で、少しずつ騒ぎは収まりつつあった。
「旅に出る前に今日は宿に戻ろうか」
「そうですね」
「いいよぉ」
宿に戻る間、行き交う人がアルの姿を見ても、誰も騒ぐことはなかった。プリメラの言うとおり、アルの存在がこの世界に受け入れられたという証拠かな。
宿に着いた俺達は一先ずベッドに転がった。
流石に疲れた。
試練の塔、カオスドラゴン、ヒデオ。戦闘の連続。それも命が掛かった戦闘。元の世界じゃ絶対に味わう事が無い緊張感。
こっちに来てからというもの、気の休まることが無いな。今まではポーラが居てくれた。彼女のお陰でこれまでやってこれたんだ。
その恩を返す。
そのためなら、魔王だろうが、召喚者だろうが、邪魔をするなら力づくでも手伝ってもらうさ。
そんなことを考えていたら、いつの間にか寝てしまっていた。気が付けば、次の日の朝だった。
「あ、アスカおはようございます」
「おはよう……。寝ちゃったのか……」
「はい。私も寝てしまったみたいです」
ミコトも疲れて寝てしまったらしい。アルはまだ俺の隣でスゥスゥと静かに寝息を立てている。俺は両手を上げて思いっ切り背伸びをする。
「うぅぅん。あれだけの戦闘だったから仕方ないか」
「そうですね」
俺はじっとミコトを見る。俺にじっと見られてミコトが恥ずかしそうに質問してきた。
「寝癖とか酷いですか?」
「え、いや。ミコト。これから暫く一緒に旅をするんだ」
「はい」
「その、話し方。そんなに畏まらなくてもっと楽に話してくれて構わないんだけど」
「あ、そうですね。確かにこっちに来てからは知らない人ばかりで、丁寧に話すように努めていましたから、癖になっていました」
ミコトは少し考え込むとにっこりと微笑み、
「うん。あっちの世界で話していたように話すね」
「頼むよ。その方が俺も気が楽だ」
「うふふ。分かった」
俺達の話し声でアルも目を覚ました。これで皆が目を覚ましたな。
「ふぁああ。おはよぅ……」
「おはよう。アル。お前何もしていないのによく寝てたな」
アルがむっとした表情で俺を睨み、抗議してきた。
「僕だってぇ、カオスドラゴンを食べたからぁ、お腹が苦しかったんだよぉ。そんな事言うと、あいつの素材あげないよぉ」
そうか。ファイアリザードの時もそうだったけど、アルは食べたモンスターの素材を残せるんだったな。
「カオスドラゴンの素材は何が残っているんだ?」
「えっとねぇ、これだけ」
そういうとアルは床に降りると、手でポンポンと床を叩く。すると、そこにカオスドラゴンの素材が出て来た。出て来たのは、牙、爪、鱗、でかい骨が各二個ずつ。
「て、お前。あんなでかいモンスターに対して、たったこれだけ?」
「うん。そうだよぉ」
お前、その小さな体でどれだけ消化してしまったんだ……。しょうがない。ミコトと二人で分けるしかないか。
「ミコトとりあえず、二人でそれぞれ一個ずつ分けようか」
「ううん。アスカはこれを武器に変換するんだよね」
「ああ」
「だったら、アスカが全部受け取って」
「いいのか?」
ミコトは頷く。なら早速、<錬装>しておくか。俺は牙を手に取り、<錬装>を使うと脱力感に襲われ、気を失ってしまった。
「……カ。アスカ……」
ミコトの呼ぶ声で目を覚ますと、手には<錬装>したはずの牙が残っていた。
「びっくりしたよ。突然倒れたから」
「アスカ、それ今の君のレベルじゃ<錬装>は無理だよぉ。素材のレベルが高すぎるよぉ」
俺のレベルが低くてOPが足りなかったという所か。そのせいでOPを全部持っていかれた上で、素材は何も変化していない。これは暫く、<空納>で保管だな。素材を全て<空納>に納めると旅に出る支度を始めた。
「よし、荷物は全部<空納>に入れた、と。じゃあ、出発しようか」
アルとミコトも頷き、部屋から出ると宿の清算に受付へと向かった。
「ご利用ありがとうございました。三名様、二泊で三百ゴルです」
俺は異空間の穴からお金の入った袋を取り出し、三百ゴルを支払う。そして、宿から出ると大きなため息を吐いた。
「はぁぁぁ……」
「どうしたの?」
「アスカぁ。今から旅に出るのにぃ、そんなに大きなため息ついて、テンション低いよぉ」
「いや、今までポーラが宿代とか支払ってくれていたから、初めて現実を見たというか……」
アルとミコトが不思議そうな顔をして、こっちを見ている。
「旅に出るというのに、金が無い……」
今から旅に出るというのにいきなり問題が。幸先が不安になってきた……。
「アスカ。それで次はどこに向かうの?」
プリメラの問いに俺は首を傾げる。どこと言われても、まだこの世界の地図は頭に入っていないからな。でも、行く場所はすでに決めてある。
「どこに行くにしても、ここは小さな島国だから船が必要よ」
「そうなんですね。プリメラ様。俺は、あいつ。ヒデオの居る国に向かおうかと思っています」
「サウザートね」
あいつの居る国はサウザートって言うのか。覚えておく。
「でも、残念だけどサウザートへの直通便は無いよ。このエスティレから出ている船は、女神バルディアのグレイステラか魔王ブラッドのサウスバレンのどちらか。サウザートへ行くのなら、サウスバレンに渡り、徒歩で入るしかないわね。私としてはグレイステラに行く方をお勧めするけど」
サウスバレンはそんなに危険な地域なのだろうか?
プリメラが心配そうな顔でこっちを見ている。
「プリメラ様がそう言っても、俺はポーラをこんな目に合わせたあいつを許せない。まずはあいつに落とし前を付けさせます」
「うーん。まいっか。グレイステラに行ったら次はノルディアスになるだろうし。あっちに行くよりはましかもしれないわね」
ノルディアスというのは、サウスバレンよりも危険みたいだな。だったら、そこは最後に回るのがいいのかもしれない。
「じゃあ、サウザートに行く前にサウスバレンの魔王と会った方がいいわよ。あそこのブラッドは魔王の中でもまだ話が通じるだろうし、何よりサウザートと戦争しようとしているから」
え? 前にこの世界の状況を聞いた時、六竦みの状況でバランスが保たれていると聞いたはずだ。それを破る為に俺達の世界から召喚されたって聞いたのに、戦争だって?
「だから、グレイステラの方がまだ良いと思うのだけれど、でも、戦争を阻止して、全ての魔王と女神に会わなければ、この世界は邪神によって滅ぼされてしまう。一つだけ忠告しておくね。邪神の話はまだ他にはしないで。これは記憶を戻した私しか分からない。世界の理でアルが救世主の隣に現れる神聖な龍の子という認識が戻っただけなの。混乱を招くでしょうから」
「分かりました。それでは、ポーラをよろしくお願いします」
「うん。任せて」
俺達はプリメラに礼をすると足下に転移陣が現れ、輝いたかと思ったら、試練の塔の外に転移していた。
塔の外は、カオスドラゴンが現れた事でまだざわついていたが、空にあった黒い巨影が無くなった事で、少しずつ騒ぎは収まりつつあった。
「旅に出る前に今日は宿に戻ろうか」
「そうですね」
「いいよぉ」
宿に戻る間、行き交う人がアルの姿を見ても、誰も騒ぐことはなかった。プリメラの言うとおり、アルの存在がこの世界に受け入れられたという証拠かな。
宿に着いた俺達は一先ずベッドに転がった。
流石に疲れた。
試練の塔、カオスドラゴン、ヒデオ。戦闘の連続。それも命が掛かった戦闘。元の世界じゃ絶対に味わう事が無い緊張感。
こっちに来てからというもの、気の休まることが無いな。今まではポーラが居てくれた。彼女のお陰でこれまでやってこれたんだ。
その恩を返す。
そのためなら、魔王だろうが、召喚者だろうが、邪魔をするなら力づくでも手伝ってもらうさ。
そんなことを考えていたら、いつの間にか寝てしまっていた。気が付けば、次の日の朝だった。
「あ、アスカおはようございます」
「おはよう……。寝ちゃったのか……」
「はい。私も寝てしまったみたいです」
ミコトも疲れて寝てしまったらしい。アルはまだ俺の隣でスゥスゥと静かに寝息を立てている。俺は両手を上げて思いっ切り背伸びをする。
「うぅぅん。あれだけの戦闘だったから仕方ないか」
「そうですね」
俺はじっとミコトを見る。俺にじっと見られてミコトが恥ずかしそうに質問してきた。
「寝癖とか酷いですか?」
「え、いや。ミコト。これから暫く一緒に旅をするんだ」
「はい」
「その、話し方。そんなに畏まらなくてもっと楽に話してくれて構わないんだけど」
「あ、そうですね。確かにこっちに来てからは知らない人ばかりで、丁寧に話すように努めていましたから、癖になっていました」
ミコトは少し考え込むとにっこりと微笑み、
「うん。あっちの世界で話していたように話すね」
「頼むよ。その方が俺も気が楽だ」
「うふふ。分かった」
俺達の話し声でアルも目を覚ました。これで皆が目を覚ましたな。
「ふぁああ。おはよぅ……」
「おはよう。アル。お前何もしていないのによく寝てたな」
アルがむっとした表情で俺を睨み、抗議してきた。
「僕だってぇ、カオスドラゴンを食べたからぁ、お腹が苦しかったんだよぉ。そんな事言うと、あいつの素材あげないよぉ」
そうか。ファイアリザードの時もそうだったけど、アルは食べたモンスターの素材を残せるんだったな。
「カオスドラゴンの素材は何が残っているんだ?」
「えっとねぇ、これだけ」
そういうとアルは床に降りると、手でポンポンと床を叩く。すると、そこにカオスドラゴンの素材が出て来た。出て来たのは、牙、爪、鱗、でかい骨が各二個ずつ。
「て、お前。あんなでかいモンスターに対して、たったこれだけ?」
「うん。そうだよぉ」
お前、その小さな体でどれだけ消化してしまったんだ……。しょうがない。ミコトと二人で分けるしかないか。
「ミコトとりあえず、二人でそれぞれ一個ずつ分けようか」
「ううん。アスカはこれを武器に変換するんだよね」
「ああ」
「だったら、アスカが全部受け取って」
「いいのか?」
ミコトは頷く。なら早速、<錬装>しておくか。俺は牙を手に取り、<錬装>を使うと脱力感に襲われ、気を失ってしまった。
「……カ。アスカ……」
ミコトの呼ぶ声で目を覚ますと、手には<錬装>したはずの牙が残っていた。
「びっくりしたよ。突然倒れたから」
「アスカ、それ今の君のレベルじゃ<錬装>は無理だよぉ。素材のレベルが高すぎるよぉ」
俺のレベルが低くてOPが足りなかったという所か。そのせいでOPを全部持っていかれた上で、素材は何も変化していない。これは暫く、<空納>で保管だな。素材を全て<空納>に納めると旅に出る支度を始めた。
「よし、荷物は全部<空納>に入れた、と。じゃあ、出発しようか」
アルとミコトも頷き、部屋から出ると宿の清算に受付へと向かった。
「ご利用ありがとうございました。三名様、二泊で三百ゴルです」
俺は異空間の穴からお金の入った袋を取り出し、三百ゴルを支払う。そして、宿から出ると大きなため息を吐いた。
「はぁぁぁ……」
「どうしたの?」
「アスカぁ。今から旅に出るのにぃ、そんなに大きなため息ついて、テンション低いよぉ」
「いや、今までポーラが宿代とか支払ってくれていたから、初めて現実を見たというか……」
アルとミコトが不思議そうな顔をして、こっちを見ている。
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