銀の魔術師の恩返し

喜々

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銀の魔術師と黒の剣士

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「話しって何?」

 ラズウェルはお茶を入れながら席についたゼロへと話しかける。

「いや、あの時助けてくれた礼を言ってないと思ってな。」

「ううん。いいよ、ゼロには時間を稼いでもらったし。」

「それでも命の恩人には変わりない。…ユールの最期はどううだったんだ?」

「ユールは灰になって消えたよ。幸せそうだった。」

「…そうか。……そういえばラズは月下の旅人なのか?」

「…その名前はあんまり好きじゃない。だけど、それは僕で違い無いよ。」

「まさかこんな所で出会えるとはな。」

「そんなに驚くことかな?」

「驚くさ。かの伝説の人物に会えるなんて。」

「そんな大層な人じゃないよ。影魔術なんて昼間はほとんど使えないし。」

「それでもラズがしてきたことは凄いことだと思うぞ。」

「それなら嬉しいよ」

「もう一つ聞きたいことがあるんだが、」

「何?」

「学園に残る選択はできないのか?」

「何故残る必要があるの?」

「…残りたくはないのか?」

「僕は旅人だからね。」

「旅人?旅人だからって残らない理由にはならない。」

 ラズウェルは二人分の紅茶を淹れてくると一つはゼロに手渡し、もう一つは自分で飲む。

「旅人はその名の通り旅をする人さ。旅をし続けるのが旅人の仕事だから僕もそろそろ再開しないとって思ったんだよ。」

「旅人を辞めることはできないのか?いや、旅人を否定している訳では無いんだが…」

「そうだね…。僕は物心がつく頃からから旅をしているんだ。親の顔なんてとっくに忘れてしまっていてね、気づいたら一人で世界中を巡っていたんだ。変な話だと思うだろう?でも本当なんだ。それで、僕のような旅人っていうのかは故郷を持たない。帰る場所も居場所も無い。次から次へと場所を変えてしまうから大切な人もできない。」

「寂しい生き方だな。」

「ああ。とても、寂しいよ。だからここに居ると全て忘れてしまう。まるで自分が元からここで生まれ育ってきたかのように知り合いや友人が増える度にそう思ってしまう。僕の居場所じゃないのにな。」

「いいじゃないか。ここを居場所にしたって。誰も君を追い出す人なんていない。それにここには俺がいる。」

「…ゼロが居ることがここに残る理由にはならないと思うけど、」

「…は?ラズは俺のことが嫌いなのか!?」

「え?どういうこと?嫌いとか好きとかそういう理由じゃなくて、」

「ラズは俺のことなんとも思っていないのか!?」

「いや、そんなこと無いよ!ゼロのことは好きさ。」

「なら、少しは思いとどまってくれないか?俺なんか好きなんて段階じゃない。俺は…ラズのことを愛している!!」

 顔を真っ赤にしてゼロは言い切った。

「えっ!!…ゼロが僕のことを愛している……本当に?いやでも…」

「本当だ!何故信じてくれないんだ」

「だってゼロにはアイリーン先生がいるじゃないか。彼女とのことはどうなの?」

「…?アイリーンがなんだって言うんだ?」

「…付き合ってるんじゃないの?」

「は?俺とアイリーンはそんな関係じゃない!」

「えっ?そうなの…?じゃあどうして大会前夜に彼女と会っていたの?」

「アイリーンに相談に乗ってもらっていたんだ。」

「相談?ゼロが相談するなんて一体何を相談していたんだ?」

「それは、…のことだ。」

「え?聞こえなかった。ごめんもう一回言ってくれない?」

「っお前のことだよ!ラズにどうやって結婚を申し込むか相談していたんだ。」

「結婚!!…そうだったの?」

 ここまで話して、お互いに顔を赤らめた。

「…今回の大会で試合に勝ったらお前に告白しようと考えていたのに。まさかラズは俺のことを何とも思ってなかったなんてな。」

「あ、いや、だってゼロの恋人はアイリーン先生だと思っていたから……」

「はぁ…で、今はどうなんだ?」

「ん?何が?」

「…結婚、受け入れてくれるか?」

「急に言われても……。確かに僕はゼロのことが好きだけど、僕はゼロとは違う生き方をしてきたんだよ。僕には故郷もなければしっかりとした身元も無い。」

「それでいい。これからお互いの事を知っていけば良い。ラズと共に過ごした時間の中で、お前がどれだけ優しく純粋な人物なのか分かった。それだけで十分だ。共に生きていくのに必要なのは理解だ。それさえあれば決して生き方とか故郷だとかで人との仲を引き裂かれることは無い。」

「…ありがとうゼロ。僕もそう思うよ。」

 ラズウェルはゼロの手に自分の手をそっと重ねた。ゼロの温かい手の甲から熱が伝わってくる。

「…僕と本当に結婚してくれるの?」

「男に二言は無い。ラズと身体を重ねた日からずっと結婚のことを考えていたからな。」

「っ!身体をって!」

 ラズウェルは恥ずかしくなって顔を赤く染め目を逸らす。それを見ていたゼロは重ねられていたラズウェルの手を取ると手の甲に自分の唇を近づけそっとキスをする。

「俺はいつでもラズを抱きたいと思っている。もちろん今も。」

「~~っ!!」

「その反応、抱いてもいいよな?」

 恥ずかしくてたまらないラズウェルをゼロは抱き上げるとベットへと連れて行った。













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