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魔術師、恩人に会う
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朝食を済ませアイリーンから自分の荷物を受け取った後、白い襟シャツの上からいつもの星座のローブを着込む。このローブは特注品で動きやすく、ある程度敵からの魔術を防げる便利な代物だ。
着替えを済ましドアを開け廊下に出ると、白い大理石の床とバーガンディ色の壁が広がっていた。
天井は高く、よく見ると細かい彫刻も彫られている。
見るからに美しい造りに感嘆の声を漏らすと廊下で待っていたアイリーンが笑顔で話しかけてきた。
「支度は終わったかしら?さあゼロ先生の所に行きましょう!」
「はい!」
アイリーンの明るい声色につられて僕も元気に返事をし、歩き出したアイリーンの後を追う。
「そういえばあんなに朝食の時お喋りしていたけれど、貴方の名前を聞いていなかったわね?」
「僕はラズウェルです。色々な所を旅している魔術師で…」
「まぁ!さすらいの魔術師さんに会えるなんて珍しいわ!きっとこれには学園長も驚くに違いないわね!」
日々の生活で使用する魔術は魔力を多く使用せず、一般の人もよく利用する。しかし魔術師を名乗るには多くの魔力を持ち、膨大な量の魔術を覚える必要がある。
魔術師という存在は特別珍しい訳では無い。しかし、多くの魔術師はどこかの組織に所属していることが普通だ。魔術の研究をしたり、戦力として雇われている者もいる。
珍しいのは冒険者ギルドを通して活動する魔術師だ。魔術を扱える程の魔力を持ち、魔術を操る技術があればお金に困ることはほとんど無い。
だが、どこかに所属したくない変わり者の魔術師はギルドに登録し、自由気ままに依頼をこなし生活している。
ラズウェルもその一人である。
「どこかにずっと縛られるのは苦手なんですよ」
「そうなのね!旅好きな魔術師さんの意見が聞けて嬉しいわ!」
そうこうするうちに大きな扉の前に到着した。
「さあここがゼロ先生がいる教師部屋よ」
そう言うとアイリーンはドアをノックする。扉は硬い木でできており、ノックの音は響く事もなくすぐに消える。
しばらくすると中で人が動く音が聞こえ、金のドアノブがガチャリと音をたてて回った。
「おはようございますゼロ先生!」
「……アイリーン先生はいつも通り元気だな」
中から出てきたのは180cm以上はある体格の良い男性でウェストコートを着た姿は教師そのものだ。短い黒髪はサラサラとしていて鋭い瞳はダークブルーだった。整った顔立ちも相まって正しく、美丈夫と呼ぶに相応しいと思った。
「ゼロ先生、昨日貴方が助けた魔術師のラズウェルさんを連れてきたわ!」
そうアイリーンが言うとゼロはラズウェルの方に顔向ける。
「ゼロだ。元気そうで良かった。」
「助けて頂きありがとうございます!あの大雪の中、僕を運ぶのは大変だったかと思います。どうか恩返しをさせてくだい」
笑顔を意識して感謝を述べる。
「恩返しはいらない感謝の言葉で十分だ。あと、敬語は使わなくていい。それから…」
表情を変えず淡々と述べるゼロにラズウェルはすかさず口を挟む。
「分かった。敬語はいらないんだね。ならそうしよう!だけど、恩返しはどうかさせて欲しい。借りを作ったまんまなんて僕だって気分が悪い。」
ゼロは口を閉ざし僕の言い分を聞いていた。
「そうか、だが君にできることは少ないのではないか?俺には今困っていることなど無いからな。」
「恩返しする方法が見当たらない事なんてあるのかな?欲しい物とかないの?無いなら適当に高価な物をあげようか…でも確かに恩返しって言っても君が満足しなきゃ意味がないもんなぁ……」
するとゼロとラズウェルの話を側で聞いていたアイリーンが口を開く。
「なら、この学園で教師として働いてもらったらいいじゃないかしら?一緒に働いてるうちにきっとラズウェルさんに手伝って欲しいことが出てくるばずだわ!」
なるほどその手があったか。学園で教師をやるということはきっと学園内にある蔵書を沢山読めるはずだ。恩返しもできて、本も読めるなんてこれ程幸せなことは無い。
「アイリーン先生…その話は学園長を通す必要があるんじゃ」
再びゼロの言葉にラズウェルは声を被せる
「それはいいね!なら早く学園長の所へ行こう!」
アイリーンとラズウェルは楽しそうに学園長室へと向かい始める。
ゼロは黙ったまま二人の後ろ姿を見て小さく溜め息をついた。
しばらくして、ラズウェルに渡さなければならない入国手続き書があったのを思い出し、遅れて学園長室へと向かって行った。
着替えを済ましドアを開け廊下に出ると、白い大理石の床とバーガンディ色の壁が広がっていた。
天井は高く、よく見ると細かい彫刻も彫られている。
見るからに美しい造りに感嘆の声を漏らすと廊下で待っていたアイリーンが笑顔で話しかけてきた。
「支度は終わったかしら?さあゼロ先生の所に行きましょう!」
「はい!」
アイリーンの明るい声色につられて僕も元気に返事をし、歩き出したアイリーンの後を追う。
「そういえばあんなに朝食の時お喋りしていたけれど、貴方の名前を聞いていなかったわね?」
「僕はラズウェルです。色々な所を旅している魔術師で…」
「まぁ!さすらいの魔術師さんに会えるなんて珍しいわ!きっとこれには学園長も驚くに違いないわね!」
日々の生活で使用する魔術は魔力を多く使用せず、一般の人もよく利用する。しかし魔術師を名乗るには多くの魔力を持ち、膨大な量の魔術を覚える必要がある。
魔術師という存在は特別珍しい訳では無い。しかし、多くの魔術師はどこかの組織に所属していることが普通だ。魔術の研究をしたり、戦力として雇われている者もいる。
珍しいのは冒険者ギルドを通して活動する魔術師だ。魔術を扱える程の魔力を持ち、魔術を操る技術があればお金に困ることはほとんど無い。
だが、どこかに所属したくない変わり者の魔術師はギルドに登録し、自由気ままに依頼をこなし生活している。
ラズウェルもその一人である。
「どこかにずっと縛られるのは苦手なんですよ」
「そうなのね!旅好きな魔術師さんの意見が聞けて嬉しいわ!」
そうこうするうちに大きな扉の前に到着した。
「さあここがゼロ先生がいる教師部屋よ」
そう言うとアイリーンはドアをノックする。扉は硬い木でできており、ノックの音は響く事もなくすぐに消える。
しばらくすると中で人が動く音が聞こえ、金のドアノブがガチャリと音をたてて回った。
「おはようございますゼロ先生!」
「……アイリーン先生はいつも通り元気だな」
中から出てきたのは180cm以上はある体格の良い男性でウェストコートを着た姿は教師そのものだ。短い黒髪はサラサラとしていて鋭い瞳はダークブルーだった。整った顔立ちも相まって正しく、美丈夫と呼ぶに相応しいと思った。
「ゼロ先生、昨日貴方が助けた魔術師のラズウェルさんを連れてきたわ!」
そうアイリーンが言うとゼロはラズウェルの方に顔向ける。
「ゼロだ。元気そうで良かった。」
「助けて頂きありがとうございます!あの大雪の中、僕を運ぶのは大変だったかと思います。どうか恩返しをさせてくだい」
笑顔を意識して感謝を述べる。
「恩返しはいらない感謝の言葉で十分だ。あと、敬語は使わなくていい。それから…」
表情を変えず淡々と述べるゼロにラズウェルはすかさず口を挟む。
「分かった。敬語はいらないんだね。ならそうしよう!だけど、恩返しはどうかさせて欲しい。借りを作ったまんまなんて僕だって気分が悪い。」
ゼロは口を閉ざし僕の言い分を聞いていた。
「そうか、だが君にできることは少ないのではないか?俺には今困っていることなど無いからな。」
「恩返しする方法が見当たらない事なんてあるのかな?欲しい物とかないの?無いなら適当に高価な物をあげようか…でも確かに恩返しって言っても君が満足しなきゃ意味がないもんなぁ……」
するとゼロとラズウェルの話を側で聞いていたアイリーンが口を開く。
「なら、この学園で教師として働いてもらったらいいじゃないかしら?一緒に働いてるうちにきっとラズウェルさんに手伝って欲しいことが出てくるばずだわ!」
なるほどその手があったか。学園で教師をやるということはきっと学園内にある蔵書を沢山読めるはずだ。恩返しもできて、本も読めるなんてこれ程幸せなことは無い。
「アイリーン先生…その話は学園長を通す必要があるんじゃ」
再びゼロの言葉にラズウェルは声を被せる
「それはいいね!なら早く学園長の所へ行こう!」
アイリーンとラズウェルは楽しそうに学園長室へと向かい始める。
ゼロは黙ったまま二人の後ろ姿を見て小さく溜め息をついた。
しばらくして、ラズウェルに渡さなければならない入国手続き書があったのを思い出し、遅れて学園長室へと向かって行った。
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