銀の魔術師の恩返し

喜々

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冬の寒さを甘く見て…

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 どんよりとした灰色の空から雪が音を立てずに降り続けている。あたりを見渡すと降り積もった雪と雪を重たそうに被っているモミの木ばかりで、建物らしき物は一切見当たらない。


「あぁ寒い…旅なんて出なければよかった…」

 
 ラズウェルは深々と積もった冷たい雪の中を愚痴を吐きながら進んでいく…
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 数日前、旅の中で収集してきた本を全て読みきってしまい退屈になった為、新しい書物を求めて旅を再開する決意をした。しかし、旅に出る前日にあわてて準備したものだから準備万全とはいかなかった。


 途中まで行商人の荷馬車に乗らせてもらっていたが、その商人にも


「荷物はそれだけなのか?…この先を進むには少なすぎると思うが…」


 と心配そうに言われたが、雪国を甘く見ていた僕は

「そうかな?自分ひとりだし、きっと大丈夫さ」

 と返した。


 雪国フィロントは冬の時期、馬車が通れる道が大雪のせいで通れなくなる。この時期にフィロントに行く方法はソリか歩きぐらいしか無い。


 本を買う為にお金を節約してきた僕はもちろんソリを借りず、徒歩で向うことにした。

 
 しかし冬の雪国がこんなにも厳しいものだとは考えもしなかった…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 徐々に寒さで足の感覚が失われていく。


 せめて山小屋や洞窟を見つけ、火にあたらなければ凍死してしまう。


 いくら魔術を扱えるといっても環境を変える魔術など知らない。今は暖まれる場所を探すことが第一だろう。


 しかし、寒さは体の芯にまで到達していた。

「あぁ、寒い…もう足が動かない…」

 足から崩れ落ち、体が雪の中に埋もれていく。


 顔に自分の息がかかり、温かく感じるが体はだんだんと冷えていく。


 自分の体に雪が降り積もっていく。


 このまま死んでしまうのか、意識が朦朧としてきた。


 辺りは静まり返り、木に積もった雪が重さに耐えきれず地面に落ちる音が微かに遠くで聞こえる。


 まだ本を読みたいのになぁと思いながら瞼がと閉じていく瞬間、遠くで黒い人影が見えた気がした。



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