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<第一話>
ヒトには、眠ることが必要だ。
その眠りの間に夢を見る時がある。
楽しい夢から、怖い夢まで、幅広い夢があると思う。
中には、稀に不思議な夢を見ることがあるだろう。
例えば、世界線が違う夢、転生して勇者になる夢とか。
俺も、不思議な夢を見た。
しかも、何回も続きを見るように連続で。
第二の人生を歩んでいくような、そんな夢を見ることになる。
本当に夢なのか?
夢ではないのかもしれない。
そんなことを考えていると、次第に俺の意識は薄れていった。
そして俺は、暗闇の中へと吸い込まれていった。
ーーーーー
俺は、運送業で働いている二十八歳独身の伊藤 寝太郎しんたろうだ。
結婚はしていないが、結婚など、興味ない。そう、興味がないんだ!
ちなみに、一度も彼女が出来たことはない。
別に求めてもない。はず。
俺は、そこまで頭が良い訳でもないはずだが、ぼちぼちの高校に入り、奇跡的にそれなりに頭の良い大学に入ることが出来た。
そんな良い学校に入れたのは良いものの、友達ができるわけでもなく、陰キャとして今まで育ってきたわけだ。
そんな俺は、もともと車に興味があった。
小さい頃に、小遣いで買ったミニカー(車の玩具)を見ながら、トラックの運転手になってやるんだ!と夢を持ったことを今でも覚えている。
高校、大学とバイトで稼いだ金を使い大型車の免許をとることに成功。
そんなこんなで、今の運送屋に就職することができたのだ。
今となっては、勉強をもう少しして良い企業に就職しておけばよかったと思う。が、後悔しても意味がない。
小さい頃から夢見てた職業に就職できたは良いものの、実際は、生活のリズムが崩れていく、少しハードな仕事だった。
毎日、高速を走り回り荷物を送り届けてあちこち飛び回る日々。
睡眠も深夜帯にトラックを運転することもあってか不規則にしか寝れない生活が続いた。
まぁ元々、ゲームにハマりすぎて不規則な生活が続いていたから慣れっこだけどな。いや、慣れちゃダメだわ。
自分に自分で突っ込みを入れるなんてなんかバカだな。
だがしかし、明日は久々の休みなのだ!
明日は何しよう? まず明日起きたらドライブでもしてみようかな。
そんな風に明日の休みの予定を考える。明日の為に今日はもう寝よう。
次に起きるのは明後日になることを知らずに、俺は深い眠りに落ちた。
ーーーーー
「もう朝か。少し寝たりない気もするが……。もっと寝たいけど今日はやりたいことがたくさんあるんだ。起きよう」
そう独り言を呟きつつ、俺は瞼を開こうとする。
だが、何故か瞼を開こうと思ってもなかなか開かない。
それに体に何か大きな違和感を感じる。
しかも、起き上がろうとしても力が入らない。
何も見えない。動けない。一体どういう状態なのだろう。
これは所謂、金縛りだろうか?
そしてしばらくすると、俺の後ろの方から足音が聞こえてきた。近づいてきた足音は、瞼が開かず見えなくても、俺の近くで止まったのがすぐ分かった。
それと同時に、徐々に瞼が開いてくる。
まだはっきりしない俺の視界に映ったのは──。
「お主、なぜここにおるのじゃ?」
なんだ、このおじいさん。
「は、はい?」
「うむ、お主……。死んでしまったのではなかろうかな?」
死んだ?俺は部屋で寝てただけだぞ。一体どうしたものか。そもそもここはどこなんだ?
まだ思うように体は動かないが、見える範囲で辺りを見回す。真っ白い空間で、霧がかかっている。
物などは置いてある訳でもなく、雲のようなフワフワとした地面の上にいるようだった。
「……いやいや、そんなわけないですよ、突然何を言うんですか」
「……気づいていないようじゃが、ここ天界じゃぞ?」
「は……?」
突然出てきたかと思えば、何を言ってくるんだ、この人は……?天界、というのは少しだけゲームかなにかで聞いたことのあるワードだ。
しかし、この展開はなんなんだ?急に出てきたおじいさんが死んだとか言ってきて。
……天界と展開をかけてみた。我ながら素晴らしいと思う。
いや、この状況で俺は何やってんだか。能天気なことをしている場合ではない。未だに状況が掴めていないままだし。
「天界というのはじゃな、神が集うところじゃ。」
神……?俺、本当に死んだのか……。いやさすがに……無いと信じたいところだ。
というか、この俺の目の前にいる人も神様なのか?人じゃないかもしれないけど。
「ということはあなたも…神様なんですか?」
「うむ、もちろんじゃぞ。」
「え?ええええええええ!」
「そう驚くでない」
驚かない人なんているのかよ、と思いつつも妙に納得した。
「というか何故、天界とやらに俺はいるんですか……?」
「うむ、それはな……」
「それは?」
「わしにもさっぱりわからん」
フェイントかよ。
「神様なら分かるんじゃないですか!」
「神にもわからんことはあるのじゃ」
神に分からないんじゃどうしようもないか。妙に納得できた。
「……俺、死んじゃったんですかね」
「うーむ。あくまでわしの推測だがな?お主、死んどるはずじゃ。」
「やっぱり死んじゃったんですね……」
ああ、寝ている間に苦しまず死ねたのはラッキーだったのかな……?
「まあ、魂は普通、三途の川に行くんじゃけど、稀にここまで来てしまう魂もあるんじゃ、お主のようにな?」
「……!そうなんですね」
三途の川……。本当にあるんだ。感心してる場合ではないけど。
「折角ここまで来たんじゃ、特別な転生をさせてやらなくもないのじゃが……」
「転生……!してみたいです」
転生と言えば、最近の漫画とかで人気あるやつ、つまり異世界系のやつだよな?
「強さとか、スキルとか、生まれる世界とか。色々選べるんじゃがどうするんじゃ?」
転生、か。マンガとかだと転生したらめっちゃ強くなるとかそういうのが多かったが……。
別に欲を出さなくても良いな。そもそも力とかは求めてないし。
せっかくならのんびーり暮らしていきたいよな。
「平凡に生きたいので、弱めで、スキルもいらないです」
「欲がないのぉ。それじゃ、転生先でも楽しんでおくれ」
え?もう転生……?そんなあっさり転生できるんだな、なんて思いつつ俺は神様に感謝を伝えた。
魔法陣のような物に囲まれたかと思うと、辺りが光だした。
「行ってきます」
ーーーーー
鳥の鳴き声で目が覚める。ここは異世界だろうか?
どうやら、そうではないらしい。
つまり、夢オチってやつだ。
そんな楽に転生とか、できるわけなかった。所詮、神なんているかも分からないしな。
とりあえず今日の休みを堪能するか。そう考えつつスマホをいじる。
「は?」
なんと、休みはもう終わっていた。そう、俺は昨日の休みは一日中寝ていたんだ。あんなに休みの予定考えたのに……。あーあ。
今更、そう思っても仕方がない。それに、俺はもう家を出なければならない。
「もう出発しないとじゃねぇか!」
そう慌てつつ、支度をして俺は一人暮らしのくせに靴が何足も散らかっている玄関を後に駆け足で会社に向かう。
点呼までに間に合うといいが……。
「運転するのは嫌いじゃあないが、だいぶ疲れるな。」
俺はあの後、遅刻しそうではあったものの、何とか間に合わせ、トラックのエンジンをかけ出発させた。
しかし突然、何故かとてつもない眠気に襲われる。
「運転中に寝そうになったらさすがにやばいなこれ……」
今日は長距離運転の日ではなかったので、比較的早く家に帰れる。
帰ったらすぐ寝よう。
そしてようやく、帰りの点呼を終えて帰路に着く。
ああ、疲れた。やっと帰れる。
いつにもまして疲れた。
こんな感覚、久々だ。すぐ寝よう。
俺はろくに夕食もとらず、風呂からあがると、布団に倒れこんだ。案の定、すぐに眠りに落ちた。
ーーーーー
気が付くと、俺は何故か森のようなところにいた。どうやら、昨日の夢の続きのようだ。
たまにあるよね、夢の続き見ること。知らんけど。
夢にしては妙にリアルだが。
「お主、起きたか?」
「一昨日の夢の神様……?」
「一昨日?夢?何を言っておるのか知らんが、無事転生出来たぞい」
「は、はあ……」
「まぁ、聞くんじゃ転生者よ。このわしが直々にこの世界について説明してやる。一回しか言わないからよーく聞くんじゃぞ」
そんな急に言われても困るし……。
「なぁに、困ることはないぞ。心配するでない」
なっ……。心を読んだ、だと?
「当たり前じゃよ、わしを誰じゃと思っておる」
「んー、おじいさん」
「おじいさんじゃと?わしはもっと若いんじゃ!わしはな、こう見えてまだ300歳くらいなんだぞ!」
全っ然若くないけど!?どこが若いのよあんちゃん……。
「天界じゃとこのくらい普通じゃ」
「まぁ、とりあえずこの世界の説明してくださいな」
ーーーーー
唐突だったが、神様によると、俺が転生したこの世界では、魔法が存在するらしい。
技術は発展していないものの、我が地球にはない魔法や、その他には魔物色々ある……らしい。
まぁ、詳しいことはこのまま生きていけば分かるらしい。
というか、夢なのにこんな忠実な設定があるなんてすごいな。
もしかしたら夢ではないんじゃないか、と考えたりもしたが面白そうなので、まだ目を覚ましたくない。
こんな夢を見るなんてな。
ちなみに、ここの世界の俺の体は、15歳くらいの男になっていた。赤ちゃんから始まるわけじゃないんだな。
こうして俺の転生ライフが始まった。まぁ、どうせ夢オチするんだろうけど。
転生ライフ初日は、森からまず抜け出そう。というかなんかさっきから気配を感じるんだけど……?
もしかしたら神様が言ってた魔物か……?
「グルルルルル…」
「めっちゃでかい熊?狼?みたいなやつがいる……。確か昔見たテレビで死んだふりをすると良いとか言ってたな。やってみるか……」
どうだ……?な、なんか近寄ってきてる……。
ガブッ
「痛えええええ!いや、あんま痛くない……かも?」
噛まれたみたいだけどあまり痛くない……?
「ほっほっほ、ずっと見ていたんじゃが死んだふりをするとはのう?」
あ、神様だ。てか最初から見てたなら助けろよジジィ!
「あ?なんじゃと?ジジィ?」
心を読むことができるんだった。忘れていた。
「なななな、なんでもないです……。というか、熊?狼?みたいなやつは?」
「あれは巨熊狼と言ってだな?この自然界のボスとして恐れられているやつなんじゃ。そいつはお主のその体にかぶり付いた途端逃げていったぞ」
「に、逃げる?かぶりついただけでなぜ?」
「何故じゃろうな?恐らくじゃが、お主のとんでもないスキルのせいではなかろうか」
「スキル……そういえば転生する時にいらないって言った気がしますね」
「それについてなんじゃが。お主の力というか、魔力が強すぎてじゃな、自動的に色んなスキルがついてしまったのじゃ」
「ま、マジか」
「うむ。マジじゃ」
もしかして俺、強い……のか?よくある転生の物語で強すぎて無双する……みたいに?
少し嬉しかった。が、内心強すぎるのはそこまで嫌じゃないが、平凡が良かったなとも思った。
俺はその後、巨熊狼の森を抜け出した。
夜も近かったため、ジジィ……じゃなくて神様に近くの村へ案内され、そこの宿に泊めてもらうことになった。
それなりにジジィ……ではなく、神様は優しく、この世界に慣れるまでは一緒にいてくれる…かもしれない、と言っていた。
宿に到着すると、疲れたこともあってか、すぐ眠りに落ちてしまった──。
続く
ヒトには、眠ることが必要だ。
その眠りの間に夢を見る時がある。
楽しい夢から、怖い夢まで、幅広い夢があると思う。
中には、稀に不思議な夢を見ることがあるだろう。
例えば、世界線が違う夢、転生して勇者になる夢とか。
俺も、不思議な夢を見た。
しかも、何回も続きを見るように連続で。
第二の人生を歩んでいくような、そんな夢を見ることになる。
本当に夢なのか?
夢ではないのかもしれない。
そんなことを考えていると、次第に俺の意識は薄れていった。
そして俺は、暗闇の中へと吸い込まれていった。
ーーーーー
俺は、運送業で働いている二十八歳独身の伊藤 寝太郎しんたろうだ。
結婚はしていないが、結婚など、興味ない。そう、興味がないんだ!
ちなみに、一度も彼女が出来たことはない。
別に求めてもない。はず。
俺は、そこまで頭が良い訳でもないはずだが、ぼちぼちの高校に入り、奇跡的にそれなりに頭の良い大学に入ることが出来た。
そんな良い学校に入れたのは良いものの、友達ができるわけでもなく、陰キャとして今まで育ってきたわけだ。
そんな俺は、もともと車に興味があった。
小さい頃に、小遣いで買ったミニカー(車の玩具)を見ながら、トラックの運転手になってやるんだ!と夢を持ったことを今でも覚えている。
高校、大学とバイトで稼いだ金を使い大型車の免許をとることに成功。
そんなこんなで、今の運送屋に就職することができたのだ。
今となっては、勉強をもう少しして良い企業に就職しておけばよかったと思う。が、後悔しても意味がない。
小さい頃から夢見てた職業に就職できたは良いものの、実際は、生活のリズムが崩れていく、少しハードな仕事だった。
毎日、高速を走り回り荷物を送り届けてあちこち飛び回る日々。
睡眠も深夜帯にトラックを運転することもあってか不規則にしか寝れない生活が続いた。
まぁ元々、ゲームにハマりすぎて不規則な生活が続いていたから慣れっこだけどな。いや、慣れちゃダメだわ。
自分に自分で突っ込みを入れるなんてなんかバカだな。
だがしかし、明日は久々の休みなのだ!
明日は何しよう? まず明日起きたらドライブでもしてみようかな。
そんな風に明日の休みの予定を考える。明日の為に今日はもう寝よう。
次に起きるのは明後日になることを知らずに、俺は深い眠りに落ちた。
ーーーーー
「もう朝か。少し寝たりない気もするが……。もっと寝たいけど今日はやりたいことがたくさんあるんだ。起きよう」
そう独り言を呟きつつ、俺は瞼を開こうとする。
だが、何故か瞼を開こうと思ってもなかなか開かない。
それに体に何か大きな違和感を感じる。
しかも、起き上がろうとしても力が入らない。
何も見えない。動けない。一体どういう状態なのだろう。
これは所謂、金縛りだろうか?
そしてしばらくすると、俺の後ろの方から足音が聞こえてきた。近づいてきた足音は、瞼が開かず見えなくても、俺の近くで止まったのがすぐ分かった。
それと同時に、徐々に瞼が開いてくる。
まだはっきりしない俺の視界に映ったのは──。
「お主、なぜここにおるのじゃ?」
なんだ、このおじいさん。
「は、はい?」
「うむ、お主……。死んでしまったのではなかろうかな?」
死んだ?俺は部屋で寝てただけだぞ。一体どうしたものか。そもそもここはどこなんだ?
まだ思うように体は動かないが、見える範囲で辺りを見回す。真っ白い空間で、霧がかかっている。
物などは置いてある訳でもなく、雲のようなフワフワとした地面の上にいるようだった。
「……いやいや、そんなわけないですよ、突然何を言うんですか」
「……気づいていないようじゃが、ここ天界じゃぞ?」
「は……?」
突然出てきたかと思えば、何を言ってくるんだ、この人は……?天界、というのは少しだけゲームかなにかで聞いたことのあるワードだ。
しかし、この展開はなんなんだ?急に出てきたおじいさんが死んだとか言ってきて。
……天界と展開をかけてみた。我ながら素晴らしいと思う。
いや、この状況で俺は何やってんだか。能天気なことをしている場合ではない。未だに状況が掴めていないままだし。
「天界というのはじゃな、神が集うところじゃ。」
神……?俺、本当に死んだのか……。いやさすがに……無いと信じたいところだ。
というか、この俺の目の前にいる人も神様なのか?人じゃないかもしれないけど。
「ということはあなたも…神様なんですか?」
「うむ、もちろんじゃぞ。」
「え?ええええええええ!」
「そう驚くでない」
驚かない人なんているのかよ、と思いつつも妙に納得した。
「というか何故、天界とやらに俺はいるんですか……?」
「うむ、それはな……」
「それは?」
「わしにもさっぱりわからん」
フェイントかよ。
「神様なら分かるんじゃないですか!」
「神にもわからんことはあるのじゃ」
神に分からないんじゃどうしようもないか。妙に納得できた。
「……俺、死んじゃったんですかね」
「うーむ。あくまでわしの推測だがな?お主、死んどるはずじゃ。」
「やっぱり死んじゃったんですね……」
ああ、寝ている間に苦しまず死ねたのはラッキーだったのかな……?
「まあ、魂は普通、三途の川に行くんじゃけど、稀にここまで来てしまう魂もあるんじゃ、お主のようにな?」
「……!そうなんですね」
三途の川……。本当にあるんだ。感心してる場合ではないけど。
「折角ここまで来たんじゃ、特別な転生をさせてやらなくもないのじゃが……」
「転生……!してみたいです」
転生と言えば、最近の漫画とかで人気あるやつ、つまり異世界系のやつだよな?
「強さとか、スキルとか、生まれる世界とか。色々選べるんじゃがどうするんじゃ?」
転生、か。マンガとかだと転生したらめっちゃ強くなるとかそういうのが多かったが……。
別に欲を出さなくても良いな。そもそも力とかは求めてないし。
せっかくならのんびーり暮らしていきたいよな。
「平凡に生きたいので、弱めで、スキルもいらないです」
「欲がないのぉ。それじゃ、転生先でも楽しんでおくれ」
え?もう転生……?そんなあっさり転生できるんだな、なんて思いつつ俺は神様に感謝を伝えた。
魔法陣のような物に囲まれたかと思うと、辺りが光だした。
「行ってきます」
ーーーーー
鳥の鳴き声で目が覚める。ここは異世界だろうか?
どうやら、そうではないらしい。
つまり、夢オチってやつだ。
そんな楽に転生とか、できるわけなかった。所詮、神なんているかも分からないしな。
とりあえず今日の休みを堪能するか。そう考えつつスマホをいじる。
「は?」
なんと、休みはもう終わっていた。そう、俺は昨日の休みは一日中寝ていたんだ。あんなに休みの予定考えたのに……。あーあ。
今更、そう思っても仕方がない。それに、俺はもう家を出なければならない。
「もう出発しないとじゃねぇか!」
そう慌てつつ、支度をして俺は一人暮らしのくせに靴が何足も散らかっている玄関を後に駆け足で会社に向かう。
点呼までに間に合うといいが……。
「運転するのは嫌いじゃあないが、だいぶ疲れるな。」
俺はあの後、遅刻しそうではあったものの、何とか間に合わせ、トラックのエンジンをかけ出発させた。
しかし突然、何故かとてつもない眠気に襲われる。
「運転中に寝そうになったらさすがにやばいなこれ……」
今日は長距離運転の日ではなかったので、比較的早く家に帰れる。
帰ったらすぐ寝よう。
そしてようやく、帰りの点呼を終えて帰路に着く。
ああ、疲れた。やっと帰れる。
いつにもまして疲れた。
こんな感覚、久々だ。すぐ寝よう。
俺はろくに夕食もとらず、風呂からあがると、布団に倒れこんだ。案の定、すぐに眠りに落ちた。
ーーーーー
気が付くと、俺は何故か森のようなところにいた。どうやら、昨日の夢の続きのようだ。
たまにあるよね、夢の続き見ること。知らんけど。
夢にしては妙にリアルだが。
「お主、起きたか?」
「一昨日の夢の神様……?」
「一昨日?夢?何を言っておるのか知らんが、無事転生出来たぞい」
「は、はあ……」
「まぁ、聞くんじゃ転生者よ。このわしが直々にこの世界について説明してやる。一回しか言わないからよーく聞くんじゃぞ」
そんな急に言われても困るし……。
「なぁに、困ることはないぞ。心配するでない」
なっ……。心を読んだ、だと?
「当たり前じゃよ、わしを誰じゃと思っておる」
「んー、おじいさん」
「おじいさんじゃと?わしはもっと若いんじゃ!わしはな、こう見えてまだ300歳くらいなんだぞ!」
全っ然若くないけど!?どこが若いのよあんちゃん……。
「天界じゃとこのくらい普通じゃ」
「まぁ、とりあえずこの世界の説明してくださいな」
ーーーーー
唐突だったが、神様によると、俺が転生したこの世界では、魔法が存在するらしい。
技術は発展していないものの、我が地球にはない魔法や、その他には魔物色々ある……らしい。
まぁ、詳しいことはこのまま生きていけば分かるらしい。
というか、夢なのにこんな忠実な設定があるなんてすごいな。
もしかしたら夢ではないんじゃないか、と考えたりもしたが面白そうなので、まだ目を覚ましたくない。
こんな夢を見るなんてな。
ちなみに、ここの世界の俺の体は、15歳くらいの男になっていた。赤ちゃんから始まるわけじゃないんだな。
こうして俺の転生ライフが始まった。まぁ、どうせ夢オチするんだろうけど。
転生ライフ初日は、森からまず抜け出そう。というかなんかさっきから気配を感じるんだけど……?
もしかしたら神様が言ってた魔物か……?
「グルルルルル…」
「めっちゃでかい熊?狼?みたいなやつがいる……。確か昔見たテレビで死んだふりをすると良いとか言ってたな。やってみるか……」
どうだ……?な、なんか近寄ってきてる……。
ガブッ
「痛えええええ!いや、あんま痛くない……かも?」
噛まれたみたいだけどあまり痛くない……?
「ほっほっほ、ずっと見ていたんじゃが死んだふりをするとはのう?」
あ、神様だ。てか最初から見てたなら助けろよジジィ!
「あ?なんじゃと?ジジィ?」
心を読むことができるんだった。忘れていた。
「なななな、なんでもないです……。というか、熊?狼?みたいなやつは?」
「あれは巨熊狼と言ってだな?この自然界のボスとして恐れられているやつなんじゃ。そいつはお主のその体にかぶり付いた途端逃げていったぞ」
「に、逃げる?かぶりついただけでなぜ?」
「何故じゃろうな?恐らくじゃが、お主のとんでもないスキルのせいではなかろうか」
「スキル……そういえば転生する時にいらないって言った気がしますね」
「それについてなんじゃが。お主の力というか、魔力が強すぎてじゃな、自動的に色んなスキルがついてしまったのじゃ」
「ま、マジか」
「うむ。マジじゃ」
もしかして俺、強い……のか?よくある転生の物語で強すぎて無双する……みたいに?
少し嬉しかった。が、内心強すぎるのはそこまで嫌じゃないが、平凡が良かったなとも思った。
俺はその後、巨熊狼の森を抜け出した。
夜も近かったため、ジジィ……じゃなくて神様に近くの村へ案内され、そこの宿に泊めてもらうことになった。
それなりにジジィ……ではなく、神様は優しく、この世界に慣れるまでは一緒にいてくれる…かもしれない、と言っていた。
宿に到着すると、疲れたこともあってか、すぐ眠りに落ちてしまった──。
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