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深山へ、そして…
書き上げましたよ菊花は万能の薬草。間違えて上げたらすみません
しおりを挟むワイナール皇国暦286年、9の月
「ねぇ魔世?」
『はい。主人様』
「少し頼みごとなんだけど」
『はい。なんでしょう?』
「ほら、たぶん今は此の世の9の月でしょ?でね?此の世でも今が旬であろう多様な大小様々な菊をね?数多く魔世の胎内で育ててくれないかな?って思ってさ。それに菊をエウリュスが従えて魔植物化させてくれてもありがたいかな?」
『菊を?突然、どうなされたのですか?』
「うん。それがさ、昨日母子虎を洗ったじゃないか
その時に体内を診たら想像以上に荒れててね?此の世の疾患や傷病はヤバイなぁって思っててね?今はピルキやシュリってのもいるからほぼ全てが花から根までヒト種に益ある薬草になる菊科がたくさんあったらこの先は心配事が減るかな?って思ってたんだよね?内臓の調子を整えたり、止血したり、虫下しにしたりさ
俺の家族だって弟妹や母たちは常人だし
普通に薬草使って生きてきてるだろうから魔法薬よりは薬草が抵抗感も少ないんじゃないか?と思っててね?
それに世に広めたら薬師の研究者も増えるだろうから後々の家の為にもなるかな?って思ったのもね?コウモリ印で魔導家のコロージュンが製剤する薬草なんて民衆へのイメージとしても良いやん?
ちょっと皇家の商売を邪魔するかもしれないから面倒くなりそうでもあるんだけどね?」
『なるほど⁉︎それは良いかもしれませんね?
では、主人様?我も何も無い状態からでは少し難しいですから、この山の中を走ってみて菊科らしいモノを採取してきてもらえませんか?』
「そりゃもちろんさ!言い出しっぺだからね?俺が走るよ」
『我も着いていきますか?主人様の収納魔法ではダメだと思いますが』
「あー、そっか…標本用にドライフラワーみたいにするわけじゃないもんな?」
『では。』と、魔世がロウの前に茶色い袋を落とす
「お?収納袋?」
『はい。コレであれば生物が乾燥したり死ぬ事はありません。気になる小動物や昆虫も大丈夫ですよ』
「うん、ありがとう魔世。じゃあ早速行ってくるよ」
『はい。あ、主人様?ヨモギがあれば大量に根から採取してくださいね?アレほど使い勝手が良い菊科植物もありませんから』
「あははは…食べてヨシ、飲んでヨシのヨモギだね?わかったよ緑も白もたくさん採取してくるね?」
と、ロウが軽く2回ほどトーントーンとジャンプすると魔世分体の前からフッと消えていた
30分ほどしたらほぼ同じ場所にロウがファサッと現れる
「ふうやれやれ…」
と収納袋を持って逆さまにして振ると足元にバサバサバサッと大小の土根が付いた花や草がこんもりと溜まる
魔世が草花を浮かせて消えると泉の辺りに現れ
『エウリュス?貴女にこれを任せますから大きく元気に育てて従えなさい』
と、命じて消える
エウリュスは微かに頷き、草花を浮かせて泉に沈めた
エウリュスがしばらくしゃがんで沈めた菊の草花を眺め
両手を上げるとザザーと水を滴らせて菊の草花が水面に、そして空中まで浮き上がり
エウリュスが両手を岸に向けて下すと、岸辺に草花の塊りが小さい山盛りに置かれた
再びエウリュスが眺めていると、菊の草花がモゾモゾと動き出しだす
そして、モゾモゾと動き出した草花を見ていた魔世は左手手の平に軽く右手をトントンと当て
当てるたびに地面に小さな窪みが出来ていた
菊の草花が窪みまでモゾモゾと移動し自分達の根を窪みに納めていくと
エウリュスが泉の水を両手で掬い手首から息をフーッと吹きかけると霧状になった水が菊の草花の周りに漂った
『コレで菊の魔植物が生まれたようですね?後は勝手に育っていくでしょう、主人様にエウリュスが上手くやりました。との御報告をしなければ』
と魔世が後は興味がないと言わんばかりに背を向けて消えた
エウリュスはまだ少し菊の草花に手を向けて何かを与えるようにしている
エウリュスの手を向けられている菊の草花は葉や花弁が艶めいて蠢き、開こうとしたり少し輝きが増している
そしてあたりには菊の芳香が濃密に漂いだした
『おや、主人様?まだまだ青いですが柿や栗もあったのですね?』
「うん。そうそう、それは自分でも良い収穫だと思ったよ?」
『そうですね?甘柿は探すのが困難でしょうが干し柿やカマネや湯練り柿で甘くする方法は主人様の前世にたくさんありましたからね』
「そうそう、少し時間が必要になるけどね?」
『コチラの小粒の実はムカゴではないですか、山芋を掘ってまでは来なかったのですか?』
「そうだね?掘り出してまではこなかったよ
でも、かなりたくさん埋まってるのは判明したよ、少し気を付けて掘ればザクザクと出てくるぐらいにはね?
この山って宝の山レベルの食材の宝庫だよ」
『あ、主人様…トマトも根っ子から…』
「うん。ついでに掘り出してきた…少し厄介だったけどね?ほら?」
とロウが服の胸や腹辺りを摘み少し黄色く濡れている状態を魔世に見せる
『厄介?』
「そう。たぶんね茎から皮膚貫通するぐらい高速で大量水棘飛ばしてきたんだけどね?アレはニコチン混じってる水じゃないかな?ナス属植物みたいだしね?毒分に慣れてない動物なんかは麻痺したり心臓に異常を起こして動けなくなるかもね?」
『なるほど…それがトマトの狩りなのでしょうね?』
「たぶんね?別に他には武器になりそうなのは気付かなかったからね?」
「さて、じゃあ魔世?トマトは一株だけど後は任せて大丈夫かな?」
『はい。問題ありませんよ?我の胎内でしっかりと調教致します』
「はあ~~~~~~~~~~!やっとだよコマちゃーーーーーーーーーん」
【やっとだねーーーーーーーーーーー私もやっとの喜びが湧き上がってきてるよーーーーーーーーーーーーーーー】
「おい!!ちょっと待てコマちゃん!!!!!!」
【どうしたの?】
「周りをみなよ!様子が少しおかしいよ!!!」
ロウがキョロキョロ見回すと陽光が強くなり辺りが少し明るくなり、木々や草花が少し前から繁茂密度が濃くなっていく
「コマちゃんの喜びに合わせて周辺の動植物が祝福されてんじゃねーか!気を付けないとヤバイから!
他の龍王達も来ちゃうじゃないか‼︎」
【ゴメンゴメン】
「魔世?トマトは完全に任せても大丈夫そう?何か俺やコマちゃんが手伝ったほうがいいかな?」
『う~んまだ我にも何とも言えませんが大丈夫ではないかと思います…何しろ初めてですので…』
「そりゃそうだよね?
どうにもならなそうならすぐに言ってね?対処方をすぐに考えるからね?」
『はい。ありがとうございます』
「んじゃ、まずはトマトの味見からしてみっかなぁ
エウリュスのミニトマトも結局は味見しなかったもんな?
前世トマトと大きさは段違いだけど味が同じなら問題は無いだろうしね
毒分は無いと思うけど…つか、あってほしくはないけどな?
要らない下処理と手間が大変そうだし…
つーか、トマト……デカ過ぎるだろうよ……実がバスケボールぐらいの大きさとかさぁ…育ち過ぎやん⁉︎よくも完熟するまで落ちて弾けなかったな?重量もかなりのもんだろ
魔世?」
『はい。』
「完熟してんのはもいで収納魔法に仕舞っておこうかな?」
『それでも良いかもしれませんね?問題は無いかと思います。あと、我の胎内の一株は魔植物に制圧されてますよ?やはり今まで野性だったせいか敵わないようですね』
「うん。枯らさなければ任せるよ?宜しくね?」
魔世の胎内でエウリュスがフラフラとトマト株に近づくとトマトは四方八方から伸びたツタに抑制されて身動きが全く出来なくなっている
トマトからは締め付けられているせいか完熟したトマトの実がポロリポロリと落ち
落ちた実は魔世が回収しているのか地面に消えていく
「しかし、あのトマトは1個だけでも充分量のケチャップが作れるしトマトソースなんて何十人前作れるんだよ
凄いな……こっちの世って規格外のデカさのばっかりだよな」
「魔世どうした?俺に何を見せるって?」
『はい。主人様。』
魔世とロウが歩く先にはピルキとシュリが待っている
「ピルキ?シュリ?」
『主人様、少しだけ観ていただきたいものがあります』
「なんだろう?」
『はい。』
魔世が観せるはまだ幼いと言っていいほどのピルキとシュリ
シュリは暗い森で地面にペタリと座り木の実をガツガツと食べ、ピルキは林を走りながら適当に草花の上を手で払いながら走る
「ん?ん?ピルキは何やってんの?」
『よくご覧になってみてください』
ロウが目を凝らすとピルキは払った手を口に運ぶ
なおもロウが見ていたら
「あゝ草花の上に居た虫とかカエルとか食べてんのか?
あ、ヘビか」
ピルキがヘビのクビに噛みつき皮をピーッと剥ぎヘビを剥き身にした
「ふむ。ありゃ毒無しのヘビやな?」
ピルキはそのまま皮を剥いたヘビのクビからポリポリと食べる
「で?魔世?コレがピルキとシュリの幼い頃からの食事なの?」
『はい。日常的な食事だったみたいです。』
「今は何を食べさせてるの?」
『はい。主に魔獣肉の塩焼きを』
「うん。メインはそれで大丈夫だよ他には芋類を食べさせて?
焼きでも茹ででも蒸しでも揚げでも構わないよ
野菜類は根菜メインをスープにしてあげてくれる?」
『はい。畏まりました。
それで幼い頃からの栄養バランスは回復しますか?』
「どうかな?しないよりマシってぐらいじゃない?
あとは採ってきた菊花の花弁を酢漬けにして食べさせてみてくれるかな?もう少しマシになるかもしれないよ?」
『はい。酢漬けは甘酢で?』
「そうそう。甘酢でお願いね?」
『ヨモギや春菊はどうされますか?』
「まだ使わなくても大丈夫じゃない?
あ、青柿…渋柿は泉に放り込んどきなよ?明日には甘柿になってんじゃない?」
『はい。そうですね?』
ロウが収納魔法から小さな木樽を出して匂いを嗅ぎ顔をキュッとしていた
「はい。酢だよ?強いねー」
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