黄龍漫遊記

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成長編 東へ

族長の務め

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『ずるい、そんなのこまる…』
ルーンが呟く
『ふむ、まだ世に現れ3年では難しかったかな?』
『うん…』
「なんと!?まだ3歳であらせられるか!?」

『ルーンよ、難しいかもしれぬが白龍を見てどう思う?』
『もう、こうさんしたからいい』
『そうか、判った。だがテュポーンだけかね?白龍の眷族はどうするかな?』
『すくないからいい』
『成る程な、良く考えているではないか。聴いたな?白龍テュポーンとその眷族よ、己れらは今回の件を不問とする』
「ははっ!天帝様の慈悲を賜わり感謝の念に堪えません。これからはおのが分を守って参ります」
白龍テュポーンは平伏したまま応え
邪魔にならないよう龍宮の中へ入っていった

『では、黑龍と赤龍は如何どうするかね?』
『おおいからだめ』
ロンが満面の笑みで頷く
『そうだな、彼奴あやつらは眷族が多過ぎるゆえに今回の様なバカげた行いを仕出かしたのも理由の内だろうからな』
『うん、だからへらす』

黑龍と赤龍の眷族達の後方で待機していた龍達は、一瞬悪寒がして反射的に逃げ出すと
ルーンが逃げ出す龍に掌を向ける
『むり、にげられないよ?』

海水が纏わり付き拘束するかの様に
逃げ出そうとしていた龍達をその場でピタリと止める
それを見る黑龍と赤龍の群れも動けず足掻く
「海の水が我らの邪魔をする!?」
今迄に無い、有り得ない状況に焦る

ルーンが広げていた手をギュッと握り込んだ瞬間
逃げ出そうとしていた200ぐらいの龍達が一吼えも無くプチュンと霧散し
その場で見ていたの龍が呆然となる

青龍のマーレは震え声で
「り、龍王様…天帝様とは此れ程の御方なのですか?」
『ん?ああ…はっはっは…此れ程であったなぁ…龍が虫けらの如く潰されたな』
ロンが乾いた笑い声を上げる

黑龍スティーリアが声を上げる
「お、お待ち下さい!黑龍は降参致します!」
と焦ると、赤龍プロクスも
「我ら赤龍も降参致します!」
と声を上げるが
『おそいよぉ、ね?ロンにぃ』
『そうだな、己が宮に籠って世を舐めた結果だな。言ったであろう?死の覚悟もなく挑んできたのか、と。自業自得だ』

ルーンが再び手をパッと開いてグッと握ると
龍の群れの後方に固まっていた200ほどが滅した
「そ、そんな…こんなにもアッサリと…」

『ルーンよ、黑龍スティーリアと赤龍プロクスと他の2匹づつを残して滅し尽くしてくれるかな?』
『うん、わかった』

ルーンが両のてのひらを頭上に上げ力を入れて振り下ろすと
水面の方から海水を貫いて雷が走る
ルーンが為す事に海水は何の邪魔もしない
ほぼ全ての黑龍と赤龍に雷が届くと、雷が当たった龍は一瞬でパシュッとチリとなる

残った龍は、黑龍スティーリアと眷族2匹
赤龍プロクスと眷族2匹
青龍の全てだった

『さて、だいぶ減ってスッキリしたではないか?』

「「わ、我の眷族達が…」」

『これで暫くは大人しくせよ。それとも、まだ逆らい滅する道を選ぶのか?』

「わ、我らが滅すれば土と火は誰が司るのですか!」

『ふぅ…まだそんな事を言っておるのか?汝等うぬらは、我が他の三神獣に対抗してたわむれに創ったに過ぎん。言うなれば若気の至りだ、そんな汝等が滅しようとて我の心に何ら響くものは無い』

「そ、そんな…」
「で、では、我らが存在する意味は…」

『うむ、【無い】な。本来、龍王に反旗をひるがえした時点で汝等の存在する理由は無くなっている』
『今、生かしておるのは我の惻隠そくいんの情でしかないのだよ』

黑龍と赤龍は自分達の存在意義をされ何も言う事が出来ない
と言うより、心がへし折られた
それはそうだろう、アッサリと眷族が滅されたのみならず
自分達を生み出した存在から
【自分達が此の世に存在しなくてもいい】
とハッキリ言われ心折れない者は居ない
それに自分達が住まう海の水の様な自然さえ、今や敵の様なものだ
自分達がつかさどる火や土の力も使えない
スティーリアとプロクスは自分達の甘さに歯噛みし全て諦め
決して逆らってはいけない存在達が居ると悟った

しかし、心が折れたのは黑龍と赤龍ばかりではなく
その場に居た全ての青龍もだった
自分達は龍王側に立っていたとはいえ
(それは、たまたまだ)
と言わんばかりの威圧感は青龍達にも届いていた

実際、ロンは青龍達にも怒っているのだから当然だろう
特に、此処まで静観していたマーレに怒っている
マーレは浅はかだろうと何かをするべきだったのだ
【相手が言う事を聞かないから何も言わない何もしない】
という態度が相手を増長させ、自分達の首を絞めるだけだという、長として最も愚かな判断をしてしまっている
黙って待つだけでは物事が解決する事はないというのにだ

群れの長としての自分に逆らう者には、たとえ理不尽だろうとも、どんな手を使っても長として叩き潰さなければ群れは安心して付いてこれない
遣り方が綺麗か汚いかは相手を潰してから考えればいい
問答無用と争いを挑んでくる相手に綺麗事だけでは隷属するだけだ

それなりの力が有りながら何も行動しなかったマーレに群れの長の資格はなかった
資格以前に他の青龍達は安心して付いて行けない
長とは異常事態には何らかの行動をし、力を見せ、決定しなければならないのだ
でなければ、群れの平和は守れないのだから

「龍王様、我には次代青龍の資格が無いと思われます…」

『皆、取り敢えず龍宮へ入れ』
『黑龍と赤龍もだ』

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

テュポーン『ヒマだなぁ』
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みんなの感想(1件)

おそまつ茶トラ

タイトルに惹かれあらすじを見たのですが、成長編と漫遊編の同時進行だとどちらをどう読んだらいいのか戸惑います。
しおりが付くのは一ヶ所だけですし。
タイトル+成長編、タイトル+漫遊編と2本別の話としてそれぞれ投稿した方が読者としては読みやすいです。
ひとつの話に纏めたいなら、成長編が終わってから漫遊編が始まる流れだと読みやすくて助かります。
ひとつの話の中で○○編が同時進行だと、本文を読む前に閉じる人も多いと思いますのでご参考まで。

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