黄龍漫遊記

コロ

文字の大きさ
上 下
39 / 39
成長編 東へ

族長の務め

しおりを挟む

『ずるい、そんなのこまる…』
ルーンが呟く
『ふむ、まだ世に現れ3年では難しかったかな?』
『うん…』
「なんと!?まだ3歳であらせられるか!?」

『ルーンよ、難しいかもしれぬが白龍を見てどう思う?』
『もう、こうさんしたからいい』
『そうか、判った。だがテュポーンだけかね?白龍の眷族はどうするかな?』
『すくないからいい』
『成る程な、良く考えているではないか。聴いたな?白龍テュポーンとその眷族よ、己れらは今回の件を不問とする』
「ははっ!天帝様の慈悲を賜わり感謝の念に堪えません。これからはおのが分を守って参ります」
白龍テュポーンは平伏したまま応え
邪魔にならないよう龍宮の中へ入っていった

『では、黑龍と赤龍は如何どうするかね?』
『おおいからだめ』
ロンが満面の笑みで頷く
『そうだな、彼奴あやつらは眷族が多過ぎるゆえに今回の様なバカげた行いを仕出かしたのも理由の内だろうからな』
『うん、だからへらす』

黑龍と赤龍の眷族達の後方で待機していた龍達は、一瞬悪寒がして反射的に逃げ出すと
ルーンが逃げ出す龍に掌を向ける
『むり、にげられないよ?』

海水が纏わり付き拘束するかの様に
逃げ出そうとしていた龍達をその場でピタリと止める
それを見る黑龍と赤龍の群れも動けず足掻く
「海の水が我らの邪魔をする!?」
今迄に無い、有り得ない状況に焦る

ルーンが広げていた手をギュッと握り込んだ瞬間
逃げ出そうとしていた200ぐらいの龍達が一吼えも無くプチュンと霧散し
その場で見ていたの龍が呆然となる

青龍のマーレは震え声で
「り、龍王様…天帝様とは此れ程の御方なのですか?」
『ん?ああ…はっはっは…此れ程であったなぁ…龍が虫けらの如く潰されたな』
ロンが乾いた笑い声を上げる

黑龍スティーリアが声を上げる
「お、お待ち下さい!黑龍は降参致します!」
と焦ると、赤龍プロクスも
「我ら赤龍も降参致します!」
と声を上げるが
『おそいよぉ、ね?ロンにぃ』
『そうだな、己が宮に籠って世を舐めた結果だな。言ったであろう?死の覚悟もなく挑んできたのか、と。自業自得だ』

ルーンが再び手をパッと開いてグッと握ると
龍の群れの後方に固まっていた200ほどが滅した
「そ、そんな…こんなにもアッサリと…」

『ルーンよ、黑龍スティーリアと赤龍プロクスと他の2匹づつを残して滅し尽くしてくれるかな?』
『うん、わかった』

ルーンが両のてのひらを頭上に上げ力を入れて振り下ろすと
水面の方から海水を貫いて雷が走る
ルーンが為す事に海水は何の邪魔もしない
ほぼ全ての黑龍と赤龍に雷が届くと、雷が当たった龍は一瞬でパシュッとチリとなる

残った龍は、黑龍スティーリアと眷族2匹
赤龍プロクスと眷族2匹
青龍の全てだった

『さて、だいぶ減ってスッキリしたではないか?』

「「わ、我の眷族達が…」」

『これで暫くは大人しくせよ。それとも、まだ逆らい滅する道を選ぶのか?』

「わ、我らが滅すれば土と火は誰が司るのですか!」

『ふぅ…まだそんな事を言っておるのか?汝等うぬらは、我が他の三神獣に対抗してたわむれに創ったに過ぎん。言うなれば若気の至りだ、そんな汝等が滅しようとて我の心に何ら響くものは無い』

「そ、そんな…」
「で、では、我らが存在する意味は…」

『うむ、【無い】な。本来、龍王に反旗をひるがえした時点で汝等の存在する理由は無くなっている』
『今、生かしておるのは我の惻隠そくいんの情でしかないのだよ』

黑龍と赤龍は自分達の存在意義をされ何も言う事が出来ない
と言うより、心がへし折られた
それはそうだろう、アッサリと眷族が滅されたのみならず
自分達を生み出した存在から
【自分達が此の世に存在しなくてもいい】
とハッキリ言われ心折れない者は居ない
それに自分達が住まう海の水の様な自然さえ、今や敵の様なものだ
自分達がつかさどる火や土の力も使えない
スティーリアとプロクスは自分達の甘さに歯噛みし全て諦め
決して逆らってはいけない存在達が居ると悟った

しかし、心が折れたのは黑龍と赤龍ばかりではなく
その場に居た全ての青龍もだった
自分達は龍王側に立っていたとはいえ
(それは、たまたまだ)
と言わんばかりの威圧感は青龍達にも届いていた

実際、ロンは青龍達にも怒っているのだから当然だろう
特に、此処まで静観していたマーレに怒っている
マーレは浅はかだろうと何かをするべきだったのだ
【相手が言う事を聞かないから何も言わない何もしない】
という態度が相手を増長させ、自分達の首を絞めるだけだという、長として最も愚かな判断をしてしまっている
黙って待つだけでは物事が解決する事はないというのにだ

群れの長としての自分に逆らう者には、たとえ理不尽だろうとも、どんな手を使っても長として叩き潰さなければ群れは安心して付いてこれない
遣り方が綺麗か汚いかは相手を潰してから考えればいい
問答無用と争いを挑んでくる相手に綺麗事だけでは隷属するだけだ

それなりの力が有りながら何も行動しなかったマーレに群れの長の資格はなかった
資格以前に他の青龍達は安心して付いて行けない
長とは異常事態には何らかの行動をし、力を見せ、決定しなければならないのだ
でなければ、群れの平和は守れないのだから

「龍王様、我には次代青龍の資格が無いと思われます…」

『皆、取り敢えず龍宮へ入れ』
『黑龍と赤龍もだ』

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

テュポーン『ヒマだなぁ』
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

おそまつ茶トラ

タイトルに惹かれあらすじを見たのですが、成長編と漫遊編の同時進行だとどちらをどう読んだらいいのか戸惑います。
しおりが付くのは一ヶ所だけですし。
タイトル+成長編、タイトル+漫遊編と2本別の話としてそれぞれ投稿した方が読者としては読みやすいです。
ひとつの話に纏めたいなら、成長編が終わってから漫遊編が始まる流れだと読みやすくて助かります。
ひとつの話の中で○○編が同時進行だと、本文を読む前に閉じる人も多いと思いますのでご参考まで。

解除

あなたにおすすめの小説

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

怖いからと婚約破棄されました。後悔してももう遅い!

秋鷺 照
ファンタジー
ローゼは第3王子フレッドの幼馴染で婚約者。しかし、「怖いから」という理由で婚約破棄されてしまう。

(完結)私は家政婦だったのですか?(全5話)

青空一夏
恋愛
夫の母親を5年介護していた私に子供はいない。お義母様が亡くなってすぐに夫に告げられた言葉は「わたしには6歳になる子供がいるんだよ。だから離婚してくれ」だった。 ありがちなテーマをさくっと書きたくて、短いお話しにしてみました。 さくっと因果応報物語です。ショートショートの全5話。1話ごとの字数には偏りがあります。3話目が多分1番長いかも。 青空異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。現代的表現や現代的感覚、現代的機器など出てくる場合あります。貴族がいるヨーロッパ風の社会ですが、作者独自の世界です。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

(完)私の家を乗っ取る従兄弟と従姉妹に罰を与えましょう!

青空一夏
ファンタジー
 婚約者(レミントン侯爵家嫡男レオン)は何者かに襲われ亡くなった。さらに両親(ランス伯爵夫妻)を病で次々に亡くした葬式の翌日、叔母エイナ・リック前男爵未亡人(母の妹)がいきなり荷物をランス伯爵家に持ち込み、従兄弟ラモント・リック男爵(叔母の息子)と住みだした。  私はその夜、ラモントに乱暴され身ごもり娘(ララ)を産んだが・・・・・・この夫となったラモントはさらに暴走しだすのだった。  ラモントがある日、私の従姉妹マーガレット(母の3番目の妹の娘)を連れてきて、 「お前は娘しか産めなかっただろう? この伯爵家の跡継ぎをマーガレットに産ませてあげるから一緒に住むぞ!」  と、言い出した。  さらには、マーガレットの両親(モーセ準男爵夫妻)もやってきて離れに住みだした。  怒りが頂点に到達した時に私は魔法の力に目覚めた。さて、こいつらはどうやって料理しましょうか?  さらには別の事実も判明して、いよいよ怒った私は・・・・・・壮絶な復讐(コメディ路線の復讐あり)をしようとするが・・・・・・(途中で路線変更するかもしれません。あくまで予定) ※ゆるふわ設定ご都合主義の素人作品。※魔法世界ですが、使える人は希でほとんどいない。(昔はそこそこいたが、どんどん廃れていったという設定です) ※残酷な意味でR15・途中R18になるかもです。 ※具体的な性描写は含まれておりません。エッチ系R15ではないです。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。