黄龍漫遊記

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成長編 西へ

人の上に立つ者

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『ありー なにするのー?』

「お、来たなルーン」
「今日は後で子供衆はオアシスの周りで野草摘みとかするのよ。でも今からは晩ごはん作りのお手伝い、一緒に行こ?」
と、ソフィアがルーンの手を引く
「12歳までの子供衆は朝ごはん食べたら世話老達から勉強教えてもらってー」
「お昼ごはん食べたら、陽が傾くまで遊んだり お昼寝したりしてー」
「晩ごはん作るの手伝ってー」
「晩ごはん食べたら野草摘みとかー、女衆の乳搾りのお手伝いするんだよ」
他の子供達が順々に教える

「ルーンはお手伝いとかした事あるのか?」
『ないー なにするの?』
「ないのか?ダメなんだぞ、大人のお手伝いしないと!」
『うぅ…だめー?るーん だめ?』
金色の瞳がウルウルしてる

ズッキューン!!!!

おや?


「なに言ってんのよアリ!そんなことルーンはしなくていいの!」
と、ソフィアがプンスカ
「「「そーよ、そーよ!!」」」
と、大合唱
「な、なんだよお前ら 何か変だぞ」
『るーん だめじゃないですか?』
「ダメじゃないですよ~ ルーンはそれで良いんです!」
「うん!ルーン君は良いんです!」
「ルーン様は…しなくていい…」
「いや、ダメだろう…なんなんだ?(ボソッ…)」


そんな声を聞きながら、寝そべった白虎が
『(クックック…)仲良く話すもんだな?不思議なこった』

他の男衆と水煙草を愉しんでいたハッサムが聞き咎める
「え?なにか不思議なのですか?私には子供同士で仲良く話してる光景にしか見えませぬが」

『ん~?ルーンは最初から喋ってないぞ、ただ、お前達が聴こえた気になってるだけだ』

「はっ?それはいったい…」

『俺と同じだ、周りに居る奴等の頭の中に声を響かせてんだよ。よく聞いてみろ、耳からは聴こえないだろ?それに人の声が10mぐらい離れてるのに、そんな綺麗に聴こえるか?』

「は…? は…?そんなことが…」

『そもそも俺はルーンにお前達の言葉は教えていないし、ルーンが人種ひとしゅ一言語いちげんごを覚える必要も無いしな』

「はーーーーなるほど…では我々の言葉は どうやって理解するのでしょう?」

『そこはそれこそアレだ、神種しんしゅ特権ってやつだろうなぁ』
クックックッと笑う白虎

『まぁそれでも、蟲とかの生き物の声まで理解出来るのはルーンだけだな。あいつは特別なんだ』
ニンマリと目を細める




シャイフのテントで夕餉を食べ終えた一同は何気ない会話を楽しんでいると

『どーして あついさばくにいるの?』

ハッサムが
「砂漠の向こうには緑溢れる平原があり、そこは肌の白い人間が国を作ってます。我々バドゥは遊牧民と言う駱駝や山羊と生きるたみで一つの場所に留まれませんから税を取れません」
別の男衆が
「それを気に入らない白い肌の者達は、我々を攻めてくるのです」
また別の男衆が
「別の場所で遊牧していた部族には攻め滅ぼされたのもあります」
悔しそうにうつむ

『うー ひとはたいへん?』

ハッサムが
「ルーン様、我々が住むのは砂漠でも幸運な場所なのですよ。天樹てんじゅの森の近くに住めて、少し危険ですが森の恩恵を受けれ。オアシスもあり、白虎様も近くに御坐おわします」

『よかったね~♪』


「ただ、人には永い時の間に天樹を見縊みくびる風潮もありまして…我々の様な考え方をしない者共もあります」

『ふ~ん』

「ルーン様がちょうじて、その様な愚か者共のせいで御宸襟ごしんきんを悩ます事がないかと心配です」


『ん~ まだわかんない けど ありがとー』

『うん、ルーンは まだまだ分かんなくていーんだよ。ルーンは10歳になれば天樹の元を出ることになっている。これは決まっている事だ、その時に人の世を見て理解すればいい』

「なんと!?その様な仕儀に!?」
一同がザワリと

『あぁ、天樹が決めた事だ』

「あ、あの、白虎様!ルーンに付いて行きたい!」
アリが叫ぶ
「あ、あたしも!」
ソフィアが手を挙げる
「僕も付いて行きたい…」
ハシムが控えめに
「あたしも!」「僕も!」「ウチも!」
他の子達も次々に

『ん?無理じゃないか?今のお前達は森を越えられないし、後8年も経てばルーンはとんでもないぞ?多分 突き抜けた存在になっているから、人の子には厳しいのではないか?』

一気にペシャンとなる子供達

ハッサムが
「おいおい、子供衆よ、皆が皆行くと言うたら次代の部族を誰が担うのだ」

「で、でも、頑張って鍛えたら…頑張ったら…」
アリが中々諦めが悪い

『まぁ頑張って鍛えるのは悪い事ではない、後8年経てば20歳ぐらいか?その頃に森や砂漠の魔獣を1人で狩れて、シャイフになれるぐらいの力を付ければどうなるか分からんぞ?』

「っし!頑張る!」
アリが拳を作る、と、隣でソフィアも無言でグッと短杖を握る

おやおや?


『さぁ夜も更けた、そろそろ寝よう。ルーン?砂楼窟に帰ろうか?』

『あい』
目がトロンとしている

『では皆、また明日の朝からくる』

白虎はルーンを背に横たえ風を巻いて駈け去った


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えー、フラグなど立っていません
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