従順な俺を壊して

川崎葵

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第三章 出会い

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そんなある日、俺はバイトで学校が終わってから22時までのシフトで出勤していた。
平日のど真ん中の水曜は20時を過ぎると人はぐっと減り、店内は数名のお客さんがチラホラいるだけとなる。

シフトに入る人間も最小限となり、俺はウェイターと裏方の仕事を掛け持ちしながら仕事をこなしていた。

そんな時、新規のお客さんが来店し、俺は扉に付いたベルの音に合わせて振り返り、いらっしゃいませと声をかけた。
入店した客に焦点を合わせた時、俺は想定外の来客に思わず眉をひそめた。

そこには柿原が立っていたのだ。
正直、そいつはここに来るはずのない人間だった。

俺はバイト先を京介と多田にしか伝えていないし、二人は自分たちが行くと知ってて嫌がる人がいてはいけないのと、誰かに見つかってお店に影響を与える場合も考えられると来るのを遠慮してくれている。

場所的には同級生が訪れてもおかしくはない場所なのだが、このカフェは少し大人向けで値段も少し高めなので、高校生があまり訪れるような場所ではない。
実際働き始めて2ヶ月ほどたったが、一度も高校生が訪れたことはないのだからそれなりに確信は得ているのだが、そこには確かに柿原がいた。

おまけに親しげに胸元で小さく手を振って、さも俺がいると知っていたかのような錯覚に陥る。

俺はスタンバイ中で、ふきんとお盆を持っていたのをいいことに手を振り返さなかったが、入店したからには接客をしなければならない。
俺は仕方なく柿原の傍による。

「どうしたの?こんなところに。あんまり高校生が来ることないんだけど。」

「美味しいって聞いたから。亀城くん、ここで働いてたんだね。」

「まぁね。好きなとこ座りなよ、今すいてるから。」

俺は適当に店内へと促し、水を取りにカウンターに入る。

「亀城君の知り合い?」

店長は先ほどのやり取りを見ていたようだった。

「同級生です。同じクラスで。」

「そっか。お友達?」

「うーん、知り合い、程度ですかね。ここで働いてるとは言ってない人なんで、たまたまなんですけど。」

「でも、にしては熱烈な視線が飛んできてるよ。」

そう言われて顔を上げればバチリと視線があった。
俺は気味の悪さに頬を引きつらせる。

「不良ではないんで、お店の迷惑にはならないと思います。」

「いいよ、そういうことは気にしてないから。」

「ありがとうございます。」

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