従順な俺を壊して

川崎葵

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第二章 最強の男

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その日の授業は寝不足なこともあって俺はろくに受けることが出来なかった。
気づけば頬杖を付いて眠りに落ち、京介は端から起きておくつもりがないらしく、普通に机に突っ伏して眠っていた。

おかげで俺は一科目だけだが初めて黒板を写しそびれた。
咎められることは特にないだろうが、完璧主義なところがある俺は、そこが欠けてしまったことが悔しい。

「亀城くん、ノート写す?」

そう声をかけてきたのは柿原だった。
今日は京介が隣にいるのだが、きっと寝ているからいないものと考えたのかもしれない。

「よく俺が書いてないって気づいたね?」

「偶々後ろ見たら、寝てたから。田中くんも珍しく寝てるし、二人で夜更かししたの?」

「まぁ、そんなとこ。ノートありがと。ちょっと借りるね。」

俺は借りたその場でノートを写すことにした。
寝落ちていた時間は然程に長くなかったようで、そんなに時間も掛からず書き写す。

「亀城君って、ノートまとめるのうまいよね。字も綺麗だし。」

「そうかな?思ったことないけど。」

「見やすいと思うよ。朝比奈出身なんだよね?どうしてここ来たの?」

「特に理由はないよ。てか、俺朝比奈って話したっけ?」

「あ、ごめん。田中くんと話してるの聞こえちゃって。」

「そっか。まぁよく喋ってるしね。ノートありがと、助かった。」

写しおえればさっさとノートを返す。
写させてくれたのはありがたいことだが、借りて帰るのはどうにも嫌な気分だった。

目の前でやり取りを全て完結させたかったのだ。
もし仮にこの取っていたノートが京介のものだったなら、俺は放課後にでも時間を取ってゆっくり書いて返していたことだろう。

だが、この柿原とは長いやり取りを続けたくなかった。
未だによく分からない不信感は俺に根付いており、苦手意識を増幅させる。

そうしていれば小休憩は終わり、次の教科担が来たことによってそのやり取りはすぐに終わってくれる。

その後俺は何とか寝落ちず板書し、放課後になって京介を揺すり起こす。
京介は基本的には寝ており、起きている授業もあったが最後の授業とSHRは眠くなったようで突っ伏して寝ていた。
それだけの間寝ていたおかげか今朝のような目覚めの悪さはなく、揺すっただけできちんと起きてくれる。

「眠た。今日はもう帰るか。悪ぃけどジャージ洗って置いといて。どうせまた行くだろうし。」

「いいけど、ゲームとかは?」

「それも置いときゃいいよ、どうせ俺のもんだし。」

そんな話をしつつ教室から出て多田の教室のほうに向かえば廊下で鉢合わせるので、合流して今日は大人しく解散する日となった。

俺は多田にニケツして学校に連れてきてもらったので、直ぐそこだからと家まで連れて帰ってもらい、別れを告げた。

俺は何しようかと悩んだが、想定外の食材が沢山出たので、買い物ついでにバイト用の履歴書を買いに行くことにした。
その日はもう寝不足だったこともあるので特別何かをすることはせず、早々に眠りについた。
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