試してみませんか?

るー

文字の大きさ
上 下
4 / 7

それはどうしてですか?

しおりを挟む


 
 私は正直戸惑った。

 姉から聞く話や過去の男性との記憶の中とは全然違っていた。
 目隠しという境遇は別として、私はダグラスの手や口でトロトロに溶かされてしまった。
 あんなに触られたのも、口づけが深く甘いのも、昇りつめたのも初めてのことだった。

 そして何より……時間が長い。

 ダグラスの部屋から出ると外はすでに夜が明けようとしていた。
 結局私は一睡もできずに朝の準備にとりかかった。


 それからというもの、ダグラスは時間のあるかぎり私を部屋へ呼んだ。

 何度目かわからないその快感にぐったりし、動けないでいるとダグラスの手はまた私の胸を触り、唇に深く口づけしてきた。
 彼も何度も達しているはずなのに、どれだけ体力があるんだろう。

 「……んっ、も、だめ……もう かんべんして……」
 息も途切れ途切れで訴える。
 「何だ今日は早いな。明日休みだって言ってたからもっとできるかと思ってたんだが」
 名残惜しそうに耳を舐めながらダグラスは囁く。

 「……やっ……」

 「お前すぐ、くたくたになるなぁ、もっと体力つけろよ」

 ダグラスは私の横に寝転ぶといつもはしない腕枕をしてきた。
 微塵も動けない私は寝た子のように彼にもたれかかっている。

 連日ダグラスにこんな状態にされ、少ない睡眠時間で仕事をこなしていたので今夜は本当にまいってしまっていた。
 睡眠時間はダグラスも同じだろうに全く疲れた様子が見えない。男だからなのか、ダグラスだからなのか、どちらにしろこのままでは仕事に支障をきたしてしまう。

 「あの……頻度が高いと思います」
 やっと落ち着いた息で弱々しく話す。
 「確かにこんな状態じゃあ俺が楽しめない。わかった少し考える」

 ダグラスが私の前髪をすくう。
 「これ、外すか?」

 腕枕され私のおでこのあたりにダグラスの顔がある。こんな距離で目隠しを解いたらなんだか気まずい。あんな事やこんな事もしておいて腕枕を気にするとは、どうなっているのか、私。

 「……まだ」

 「なぁ、なんで目隠し?何の意味があるんだ」

 最初に理由を聞いてこなかったからその質問はもうこないだろうと思っていたのに。

 絶対教えないけどね。

 「秘密です」

 ダグラスは私に覆いかぶさると胸に唇をあてた。その瞬間、ちくりと衝撃がはしる。それは一度だけでなく次々と場所を変え繰り返す。
 「……っな、に?」
 まだ力の入らない腕をダグラスに伸ばす。だが彼の手で両手とも頭の横に抑え込まれてしまう。
 「お前、肌が白いからすぐ後がつくな」
 「!!」

 まさか、と私は残っていた体力を使い身をよじる。
 キスマーク。私はつけられた事ないけど他の人のは見た事がある。あんな目立って恥ずかしいものどうしてつけるのか意味不明だ。

 ダグラスは私の首に舌を這わせると意地悪そうに低く話す。
 「ここにつけてほしくなかったら教えろ」
 そこは仕事着に隠れない。
 普段でも到底無理なのにそれでも抗う。

 「やめて!!」
 肌にあたる唇の感触が強くなる。

 「わかった!言うから、やめて!」

 ダグラスは私の手を解くと身体を起こし触れるだけのキスをひとつ唇におとした。
 「外すぞ」
 そう言うと私の返事を待たずに目隠しをほどいた。

 今のでまた息が上がってしまった私は彼にされるがままになっていた。
 ゆっくり目を開けると少し口元を緩めたダグラスが横から見下ろしていた。
 「これくらいなら朝までには消える」
 やっぱりちょっとついているのね。この男はなんて事を。

 「……何故知りたいのです?」
 「ヤってる最中気になる」
 「……」

 最初に、”行為の途中で絶対とらなで”とは頼んだが、理由を聞かない約束をしなかった事を後悔した。
 私はひとつため息をついた後、ダグラスの顔を見ないようベッドの中で天井を見上げる。

 「ダグラスさんの声が私の好きな人に似ているのです」

 「は!?お前好きな奴いないって……!」
 ダグラスは勢いよく起き上がり私を上から覗きこんできた。
 私は顔を彼のいないほうへ向けて目を瞑る。

 「訳ありなので。この想いを叶えるつもりはありません」
 「だからって……まて、目隠しとどう関係してるんだ」

 「単刀直入に言うと、目隠しであなたの声を借り、好きな人に抱かれているつもりでいました」

 私は顔を背けたままダグラスの言葉を待ったが彼はしばらく何も言わなかった。
 沈黙に耐えかねた私はよろよろと起き上がりダグラスに向かい合う。
 やはり彼は複雑な面持ちをしていた。彼を傷つけたかもしれない。

 「今度は私から聞きます ”どうしますか?”」

 ダグラスは私を見て目を見開いた。彼の瞳を見続ける勇気はなく私は彼に背を向けゆるりとベッドからおり服を手に取る。
 その瞬間後ろから腕を引かれた。脚がふらふらの状態だったので簡単にベッドに倒れ込んでしまった。

 思わずダグラスを見ると彼はベッドの端にあった目隠しの布を手にとった。

 ああ、返されるのか、と手を伸ばそうとした時

 「これはここで預かる」


 「……了解いたしました」



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

なし崩しの夜

春密まつり
恋愛
朝起きると栞は見知らぬベッドの上にいた。 さらに、隣には嫌いな男、悠介が眠っていた。 彼は昨晩、栞と抱き合ったと告げる。 信じられない、嘘だと責める栞に彼は不敵に微笑み、オフィスにも関わらず身体を求めてくる。 つい流されそうになるが、栞は覚悟を決めて彼を試すことにした。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ハイスペ男からの猛烈な求愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペ男からの猛烈な求愛

高級娼婦×騎士

歌龍吟伶
恋愛
娼婦と騎士の、体から始まるお話。 全3話の短編です。 全話に性的な表現、性描写あり。 他所で知人限定公開していましたが、サービス終了との事でこちらに移しました。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

処理中です...