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ギルド到着
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アルに抱えられてやってきたのは、大きな木造の建物。
中に入るとそこは結構広くて、受付カウンターや依頼が詳しく書かれている紙が貼られたボードがあり、酒場のようなものも併設されている。
ちなみにボードに貼ってある依頼書の文字はどういう原理か何となく意味だけは分かる。全然知らない文字なのに不思議。
上に続く階段もあり、3階建てらしい。
「あんまり人がいないんだね…?」
「良い依頼は早い者勝ちだからな。みんな朝早くに来るんだ」
もっと人がいっぱいいて賑わっているイメージだったけれど、今はみんな依頼をこなすために外にいる時間みたい。
フードから顔が出ないように注意しながら周りを見てみると、少しだけど人がいて、みんな筋肉が凄い。
元の世界だとボディービルの大会とかじゃないとなかなか見れないかも。ちょっとあの筋肉憧れる。
「わ、ムキムキ…」
「ん?」
「みんな筋肉がすごいね!」
他の人を褒めるとあからさまにアルがムッとして僕の目を隠してしまった。
「俺ももっと筋肉を付けた方がいいか…?武器の幅も増えるかもしれないしな…」
「僕も頑張ったらあんな感じになれるかなぁ?」
「え…いや、どんな姿のソラでも俺は愛する自信がある…が…その……」
「嫌?」
アルの顔を覗き込んだら逸らされてしまった。僕がムキムキになるのは嫌みたい。まぁ元々筋肉は付きにくい体質なんだけどね。
「ふふっ、じゃあやめとく」
「あぁ…」
アルが僕を抱えたままカウンターに近づいていく。
「アルさん、こんにちは。昨日はいらっしゃらなかったようですが、何かあったんですか?」
「ああ、まぁな」
優しくて心地よい女の人の声がする。ちらっと覗いてみると目が合ってしまった。声と同じく優しそうで綺麗な女の人だ。耳が尖っていたからエルフ族なのかもしれない。
「そちらの方は?」
「俺の番だ」
「まあ!番?誰かと番う予定はないって仰っていたはずでは…?」
「運命なんだ」
「運命!?…ああ、だからお顔を隠しているのね?こんにちは、アルさんの番さん」
「わっ、え、えっと、はじめまして、ソラです…!」
突然話しかけられたのでびっくりしてしまった。ぎこちない挨拶になってしまった。今の僕の顔は真っ赤だろう。フードを被っていてよかった。
「可愛らしい番さんだわ。……アルさん、リアには気を付けてくださいね」
「はぁ…考えたくもない。あの女も番がいるとなれば諦めるだろ」
「でも彼女は人間ですし…何を考えるかは分かりません。警戒するに越したことはないと思います」
「めんどくさいな…」
2人が誰かについて話しているが、なんのことだか分からない。番がいたら諦めるかもしれないってことはアルのことを好きな人なんだろうか。
確かにアルはカッコイイしモテそうだ。でもなんかやだかも…独占欲ってやつかな?
「そういえばソラ、ギルドのカードは持っているか?」
「え?」
そんな事を考えていると唐突にアルに話しかけられた。
「えーと、持ってない…かな?」
「カードを持っていないなんて珍しいですね。今お作りしましょうか?」
「どうする?あったら他の街に移動するのが楽だったり色々と便利だから作っておいて損はないと思うが…」
「じゃあ…作ってみる」
そうは言ったものの何か特別な手続きが必要だったりするかな…?
知らないことがたくさんあるとは言っているが、異世界から来たという話はしていない。アルが気を使ってくれているのか、無理に聞かれたりもしなかった。
どうしよう。急に不安になってきた…
奥にある小さめの部屋に移動する。
「じゃあ、この水晶に手をかざして魔力を注いでください」
「魔力…」
まずい。魔力の出し方なんて知らない。
どうしたらいいのかな…ここまで来てやっぱり辞めますって言うのも変だし、こうやって言われるということはこの世界の人達は当たり前に魔力の扱い方が分かっているようだ。
それならどうやって魔力って出すんですか、とは聞けない。
こうなったらやけくそだ!そう思って手を透明な水晶にかざして、お願いする。
魔力、ちょっとでいいから出て!
パキッ
あ、まずいかもしれない。
チート能力を僕が持っていたらここで水晶が割れちゃったりするんだよね………多分大丈夫…多分…だってこっちに来てから変わったことを実感することなんて何も無かったし…
僕はもう嫌な音がした水晶の方を見られなくなってしまった。
中に入るとそこは結構広くて、受付カウンターや依頼が詳しく書かれている紙が貼られたボードがあり、酒場のようなものも併設されている。
ちなみにボードに貼ってある依頼書の文字はどういう原理か何となく意味だけは分かる。全然知らない文字なのに不思議。
上に続く階段もあり、3階建てらしい。
「あんまり人がいないんだね…?」
「良い依頼は早い者勝ちだからな。みんな朝早くに来るんだ」
もっと人がいっぱいいて賑わっているイメージだったけれど、今はみんな依頼をこなすために外にいる時間みたい。
フードから顔が出ないように注意しながら周りを見てみると、少しだけど人がいて、みんな筋肉が凄い。
元の世界だとボディービルの大会とかじゃないとなかなか見れないかも。ちょっとあの筋肉憧れる。
「わ、ムキムキ…」
「ん?」
「みんな筋肉がすごいね!」
他の人を褒めるとあからさまにアルがムッとして僕の目を隠してしまった。
「俺ももっと筋肉を付けた方がいいか…?武器の幅も増えるかもしれないしな…」
「僕も頑張ったらあんな感じになれるかなぁ?」
「え…いや、どんな姿のソラでも俺は愛する自信がある…が…その……」
「嫌?」
アルの顔を覗き込んだら逸らされてしまった。僕がムキムキになるのは嫌みたい。まぁ元々筋肉は付きにくい体質なんだけどね。
「ふふっ、じゃあやめとく」
「あぁ…」
アルが僕を抱えたままカウンターに近づいていく。
「アルさん、こんにちは。昨日はいらっしゃらなかったようですが、何かあったんですか?」
「ああ、まぁな」
優しくて心地よい女の人の声がする。ちらっと覗いてみると目が合ってしまった。声と同じく優しそうで綺麗な女の人だ。耳が尖っていたからエルフ族なのかもしれない。
「そちらの方は?」
「俺の番だ」
「まあ!番?誰かと番う予定はないって仰っていたはずでは…?」
「運命なんだ」
「運命!?…ああ、だからお顔を隠しているのね?こんにちは、アルさんの番さん」
「わっ、え、えっと、はじめまして、ソラです…!」
突然話しかけられたのでびっくりしてしまった。ぎこちない挨拶になってしまった。今の僕の顔は真っ赤だろう。フードを被っていてよかった。
「可愛らしい番さんだわ。……アルさん、リアには気を付けてくださいね」
「はぁ…考えたくもない。あの女も番がいるとなれば諦めるだろ」
「でも彼女は人間ですし…何を考えるかは分かりません。警戒するに越したことはないと思います」
「めんどくさいな…」
2人が誰かについて話しているが、なんのことだか分からない。番がいたら諦めるかもしれないってことはアルのことを好きな人なんだろうか。
確かにアルはカッコイイしモテそうだ。でもなんかやだかも…独占欲ってやつかな?
「そういえばソラ、ギルドのカードは持っているか?」
「え?」
そんな事を考えていると唐突にアルに話しかけられた。
「えーと、持ってない…かな?」
「カードを持っていないなんて珍しいですね。今お作りしましょうか?」
「どうする?あったら他の街に移動するのが楽だったり色々と便利だから作っておいて損はないと思うが…」
「じゃあ…作ってみる」
そうは言ったものの何か特別な手続きが必要だったりするかな…?
知らないことがたくさんあるとは言っているが、異世界から来たという話はしていない。アルが気を使ってくれているのか、無理に聞かれたりもしなかった。
どうしよう。急に不安になってきた…
奥にある小さめの部屋に移動する。
「じゃあ、この水晶に手をかざして魔力を注いでください」
「魔力…」
まずい。魔力の出し方なんて知らない。
どうしたらいいのかな…ここまで来てやっぱり辞めますって言うのも変だし、こうやって言われるということはこの世界の人達は当たり前に魔力の扱い方が分かっているようだ。
それならどうやって魔力って出すんですか、とは聞けない。
こうなったらやけくそだ!そう思って手を透明な水晶にかざして、お願いする。
魔力、ちょっとでいいから出て!
パキッ
あ、まずいかもしれない。
チート能力を僕が持っていたらここで水晶が割れちゃったりするんだよね………多分大丈夫…多分…だってこっちに来てから変わったことを実感することなんて何も無かったし…
僕はもう嫌な音がした水晶の方を見られなくなってしまった。
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