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第5章 親友

厳しい選択

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そんな室町と翔子のやりとりがあったことなど知るわけもない田上は、その日は大事な講義があるにも関わらず大学を休んだ……

田上は田上なりに何事かを一人で考えたかったようだ。

一方、室町は室町で翔子とのやりとりの後、大学の授業はサボって、自宅で一人考えていた。

本当は田上のことが心配で帰りに様子を見に行きたかったのだが、さんざん迷ったあげくに行くのを止めた。

翔子の変化を知って、まだ自分の気持ちを整理しきれないでいる室町は田上に会わせる顔が無かったからだ。

室町は考えた「俺は石原が好きだ。あの様子だと、石原も俺のことを多少好きになってくれているのだろう」と。

しかし田上も翔子のことを好きなのが問題だ。

室町は田上のことも親友として本当に好きだった。

真面目で素直で邪気が無い田上。室町が何か人間関係で嫌なことがあって人間の汚さに幻滅しても、田上に会えばそれが忘れられた。

室町は本当に田上が自分の親友で良かったといつも思っている……

しかし状況は翔子か田上を選ばなければいけなくなっているように思えた。

まさか自分がこんな、つまらないドラマの主人公みたいな選択を迫られることになるとは予想していなかった。

田上が「自分はいつもドラマの脇役みたいな人生だ。たまには主人公みたいな燃えるような恋をしたり、大恋愛がしたい」と言っていたのを思い出して、「田上が喜びそうなシチュエーションだな」と室町は部屋で一人寂しく呟いた。

しかし考えれば考えるほどおかしい。

「まさか、田上が石原のことを好きだったなんて……」

室町にしてみれば晴天の霹靂のようなことである。

愚痴らずにはいられない。

「石原のあのかわりようも納得がいかない」

室町は考えれば考えるほど不思議でたまらなかった。

その時ふっと窓辺に飾ってある例の蒼い華が目に止まった……

ハッとした室町は何かを思いつきそうになる。

一日目にはあったのに二日目には消えてしまった紅い華と蒼い華……

変わってしまった田上と翔子。

何かつながるものを感じずにはいられないが、まさか!?という気持ちも強い。

とりあえず明日またあの大学の裏庭に行ってみよう。何か分かるかもしれない……
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