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第5章 親友

繰り上げ一番

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翔子は昨日の事を思い出していた。

あの田上先輩に告白をされてしまった。

翔子は可愛らしい顔立ちで性格も良かった。その真面目で少し子供っぽいところが受けるのか、高校生の時からかなりもててもいた。

もちろん告白されたのは、これが初めてではないのだが、やはりドキドキはした。

しかし今の翔子は田上のことを全く好きではなかった。

あの蒼い華のカクテルを飲んだ瞬間、気持ちが変わったのだ。

翔子は自分が田上を好きだった時のことを覚えているが、しかしそれは以前の事である。今の翔子は田上に告白されたことを困った事態と受け取っていた。

田上は優しい先輩だ。これからも仲良くやりたい。翔子はどうすればいいか悩んだ。

田上は返事を急がないと言ったが、翔子はその場でしっかり「ごめんなさい」と言った。

突然告白をされて混乱する中、なぜ翔子が即座に「ごめんなさい」と言えたか?それには理由がある。

その理由とは室町の事だ。返事を延ばしたり、うやむやにして室町にあらぬ誤解を受けないだろうかと……

翔子はそれが心配になったのだ。

困ったことに田上への恋心が完全に消えた今、翔子は自分が少しではあるが、室町のことが好きなのに気付いてしまったのである。

本来、翔子は一途なタイプなので、田上以外は全く目に入らなかったが、田上への恋心が完全に消えた今、急に室町が浮かび上がってきたのだ。

室町はもとから女性にもてるタイプである。女性に優しいし、友達思いで人の痛みの分かる好人物だ。

そしてセンスも良く、楽しい。翔子は知らない事だが、特に翔子には優しく接して、気も使っているので子供っぽい翔子が室町に好意を抱いても仕方の無い事だろう。

翔子は思う。自分はずっと田上先輩を好きだった。先輩もずっと私のことが好きだったのだろうか?

全く、そんな素振りは見えなかったが……

そういう性質の人なのだろうか?

つまらないことをした。悪魔に頼った罰だ。

田上を好きだった2年間、つらいことも多かったけど、楽しいことも多かった。こんな形で終わるなんて……

翔子は、日に日に思いが募っていくタイプである。

だからこれから毎日少しずつではあるが自分は室町のことを好きになっていくだろうと翔子は思った。

そしていつか室町を想う気持ちは、以前の田上に対する想いを越えることになるのだろうか?

自分が告白を断った時の田上の哀しそうな瞳が頭から離れず苦しむ翔子だった……
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