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第4章 もつれた糸

田上の告白

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田上はびっくりした。自分の感情にである。俺は翔子が好きだ!強くそう思う。自分のことよりも相手の事を思う。一緒にいたい。離れたく無いと思った。

この時、田上の中で何かが変わった。

「……」

そして翔子が田上の異変に気付く。どうしたのだろう?

翔子は気になった。今にも告白するつもりでいた翔子だったが、田上が急に無言になり、こちらを見つめてきたのだ。酔っぱらったのだろうか?

田上の気持ちはどんどん盛り上がってきた。しかし田上の気持ちとは裏腹に翔子は、今日、田上に告白をするのはやめようと考えはじめていたのだ。

悪魔の誘惑に乗せられて、こんな形で告白をして玉砕しても悲しいだけだ。

あげくの果てには悪魔の薬を使って先輩に対する恋心を無くしてしまおうなんて……それでは先輩を思い続けた、この2年間はどうなってしまうのだろう?

先輩を好きだったことも忘れてしまうのだろうか?

それはあまりにつら過ぎることだ。こんな薬はここに置いて今日はもう帰ろう。翔子がそう決心をして田上に帰りたい旨を伝えた時、事件は起こった!!

田上の口から信じられない言葉が飛び出してきたのだ。

「石原……俺……石原のことが好きだよ」

「!?」

翔子は一瞬、なんと言われたのか分からなかった。

田上先輩に「好きだよ」と言われた?まさか!

翔子は自分が飲みなれないお酒をたくさん飲んで、酔っぱらっているのだろうか?と疑った。

「先輩?」

翔子が田上の方を見ると田上の顔は、もしそんなものがあればの話だが、たこ焼き屋のたこの人形のように真っ赤になっていた。

田上は意を決してもう一度言う。

「石原のことが好きだ。どうだろう?俺と付き合ってくれないだろうか?」

「!?」

どう聞いてもきき違いでは無い!翔子は一瞬思考と動きがとまった。内心は先ほどの田上同様、口から火でも吹きそうなほどびっくりしていた。

「えっ!えっ!?先輩、本当ですか?」

信じられない!あの先輩が!私をからかっているのだろうか?それとも何か悪いものでも食べたのでは無いだろうか?

「まあ、石原、落ち着いて。いきなりこんな事を言っても石原もびっくりしてしまうよね」

本当は落ち着かなければいけないのは田上の方だが、相手が年下の女性なので少しは田上にも余裕があるようだ……

「返事はいつでもいいよ。俺、慌てないから」

「先輩、私……私……」

 翔子は嬉しさのあまり、下を向いて泣き出してしまう……

周りにはたくさんの人がいるので田上はちょっと慌てたがどうすることも出来ない。

慣れないお酒でかなり酔っぱらっているのだろう。翔子の方も溢れ出てくる涙と感情をどうすることも出来なかった。

翔子は思う。先輩、私嬉しいです。ずっと先輩のこと好きでした……もちろん、これからもずっと先輩のことが好きです。

そのように翔子は田上に伝えたいのだが、泣いて呼吸が荒くなりうまく喋れない。

田上は田上で、自分のハンカチで涙を拭いてあげた方がいいのだろうか?それともハンカチをそっと渡すだけでいいのだろうか?いやまて、一度外に出たほうがいいのだろうか?と訳の分からないことで悩んでいる……

時間がたつにつれ、翔子は少し落ち着いてきた。

さあ、先輩に告白の返事をしよう!幸せだ!

翔子はこの時、かなり酔っていて、田上の告白でかなり舞い上がってもいた……

一度、呼吸を整えようと翔子は飲み物を一口飲むことにする……

そしてあろうことか翔子は、自分が蒼い華の蜜をいれたグラスを手に取った!!

そしていっきにそれを飲んでしまったのだ!!
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