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お忍びでおでかけ④
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重たいお腹を抱えて、リーシャは必死に人波を掻き分けた。おしっこ、おしっこ。でちゃう。だめ、まだだめ。足を進めるたびにお腹の奥がちゃぷちゃぷと揺れる。それでも、じっと立っているよりはマシだと思った。必死に周りを見回す。どこか、人目につかないところ。誰にも見られないところ。どこでもいい。どこでもいいから、おしっこさせて。
本当はちゃんとお手洗いで済まさなければいけないとわかっている。だけど、だけど、あのまま並んで自分の順番を待つなんてこと、もうできそうになかった。
おしっこしたい。もう我慢できない。漏れちゃう。
泣きそうになりながら人の少ないところを目指して走る。
夜会のときに来客用のお手洗いに女性が長い列を作っているのと同じように、こういうところのお手洗いは混むだろうと思ったから、なるべく水分を摂らないようにしようと思っていたのに。喉が渇いていたところで口にしたお茶は美味しくて、少しだけなら大丈夫だろうと二杯も飲んでしまったことをいまとなっては後悔していた。
少し時間が経ったらすぐにおしっこがしたくなってしまって、恥ずかしいけれどカイルに声をかけたのに、トイレは混んでいて。刻一刻と強くなる尿意の波に堪らず列を抜けて駆け出してしまったが、もうお腹の中はぱんぱんに膨らんでいた。
早くしたい。おしっこ出したい。
細い道を見つけて、足を進める。路地裏なら人はいないかもしれない。だめだとわかっているけれど、でもだめなの、もう出ちゃう。
ごめんなさい、おしっこ、おしっこさせて……!
路地裏には誰もいなかった。ここなら大丈夫。おしっこできる。誰にも見られない。そう思った途端、突然誰かに羽交い締めにされて、口元に何かを当てられた。それから――。
はっ、とリーシャは目を覚ました。見覚えのない天井が目に映る。
(どこ、ここ……?)
さっきまで路地裏にいたと思ったのに。
なんだか身体が揺れている。座り心地の良い椅子に横たわっていて、馬車の中だと遅れて気が付いた。身体を起こそうとするが、なぜだか力が入らなくて動けない。
どうしたのだろう、と不思議に思った瞬間、下腹部に圧迫感を感じた。
(おしっこ……っ!)
忘れていた尿意が勢いを増して襲いかかってくる。しょろ、と下着が一瞬濡れるのを感じて、なんとか力を込めて押し止める。微かに脚を動かすと、突然顔を覗き込まれた。
「リーシャ様……!」
「カ、イル……?」
心配そうな顔をしたカイルと視線がぶつかる。彼はどこか焦ったような様子で口を開いた。
「ご気分が悪くはありませんか? どこか痛いところは?」
「だ、大丈夫、ですけど、あの、」
「まだ起き上がってはいけません。横になっていてください」
身体を動かそうとするリーシャを優しく諌める。じゅ、じゅ、とまた、下着に雫が零れた。
(や、だめ、出てきちゃだめっ)
下肢に感じる熱い感触に頬が熱くなる。
どうして馬車に寝かされているのか。ここは一体どこなのか。疑問がぐるぐると頭の中を巡るけれど、何よりも強い生理的欲求に感情が支配されていた。
(だめ、漏れちゃう……っ、出ちゃう……っ)
ぞわぞわと震えが走り、カイルに見られているにも構わず、なんとなく重い腕を動かして脚の付け根を押さえつけてしまう。もうだめ。
「お、おしっこぉ……っ」
切羽詰まった気持ちのまま口を開くと、子どものように直接的な言葉が自然と飛び出していた。
「カイル、おしっこ、おしっこ出ちゃうっ」
リーシャは涙を浮かべながら、傍らにいる騎士に欲求を訴える。しょろ、とまた少し、下着に熱い水が零れてしまう。
カイルはすぐに馬車を止めさせると、リーシャを抱き上げて外へと飛び出した。
「どうしました?」
「姫様が、ご気分が優れないとのことなので。ここで待っていてください」
驚いた顔をしている御者に告げ、カイルは街道から離れた木立の中へ足を向けた。
身体に伝わってくる振動が辛い。リーシャは必死に身体を硬くしていた。
少しでも気を抜いたら、我慢しているものが溢れてしまいそうだった。
城下町から城へと続く街道の途中なのか、周囲に人気はなかった。カイルは馬車から少し距離を取り、太い木の陰に隠れるようにして足を止めた。
これから何をされるのか、直観的に理解する。恥ずかしいけれど、身体の自由が効かなくて彼に手伝ってもらうほかない。
「失礼いたします」
カイルは彼女を腕の中に抱えたまま、ドレスの裾を捲り上げた。
「姫様、手を」
促されて、必死に前を押さえつけていた手をおずおずと離す。カイルの逞しい手はするすると器用に下着を膝まで下ろした。彼の手が触れた下着はしっとりと湿っていて、恥ずかしさに頬が赤くなる。
カイルは太腿の裏を持つようにしてリーシャを抱え直した。幼子の排泄を手伝うような恰好だ。剥き出しの肌が外気に触れた途端、しゅ、しゅう、と我慢していた飛沫が迸った。ぽたぽたと地面に小さな染みが作られる。
突然、羞恥心に押し潰されそうになり、リーシャは思わず身を捩った。
「や、やだ、カイル、いや、見ないでっ」
「目を瞑っています。大丈夫です、我慢せず全部出してください」
優しい声が耳元で囁く。
彼が本当に目を閉じているのか、確認することはできない。けれどもう我慢は限界を超えていて。彼の腕に抱えられたまま、リーシャは強張っている身体からそっと力を抜いた。
――ちょろ、しょろろ……。
始めは、躊躇いながら少しずつ。しかし、すぐにそれは勢いを増していった。
たくさん我慢していたおしっこは大きく弧を描き、激しい水音を立てながら地面に落ちていく。
(……っ、恥ずかしい、のに、おしっこ、気持ちいい……)
足元に広がる水溜まりが大きさを増すごとに、下腹部の重さが軽くなっていく。
リーシャは呆けたようにそれを見ていた。細い身体のどこにこれほど溜め込んでいたのか自分でもよくわからない。溢れる水流は止まることを知らず、いつまでも出続けるのではないかと思ってしまう。
びちゃびちゃ、ばしゃばしゃ……。
耳に入ってくる水音を感じながら、お腹の中身が空っぽになるまで信頼する騎士の腕に身を委ねていた。
本当はちゃんとお手洗いで済まさなければいけないとわかっている。だけど、だけど、あのまま並んで自分の順番を待つなんてこと、もうできそうになかった。
おしっこしたい。もう我慢できない。漏れちゃう。
泣きそうになりながら人の少ないところを目指して走る。
夜会のときに来客用のお手洗いに女性が長い列を作っているのと同じように、こういうところのお手洗いは混むだろうと思ったから、なるべく水分を摂らないようにしようと思っていたのに。喉が渇いていたところで口にしたお茶は美味しくて、少しだけなら大丈夫だろうと二杯も飲んでしまったことをいまとなっては後悔していた。
少し時間が経ったらすぐにおしっこがしたくなってしまって、恥ずかしいけれどカイルに声をかけたのに、トイレは混んでいて。刻一刻と強くなる尿意の波に堪らず列を抜けて駆け出してしまったが、もうお腹の中はぱんぱんに膨らんでいた。
早くしたい。おしっこ出したい。
細い道を見つけて、足を進める。路地裏なら人はいないかもしれない。だめだとわかっているけれど、でもだめなの、もう出ちゃう。
ごめんなさい、おしっこ、おしっこさせて……!
路地裏には誰もいなかった。ここなら大丈夫。おしっこできる。誰にも見られない。そう思った途端、突然誰かに羽交い締めにされて、口元に何かを当てられた。それから――。
はっ、とリーシャは目を覚ました。見覚えのない天井が目に映る。
(どこ、ここ……?)
さっきまで路地裏にいたと思ったのに。
なんだか身体が揺れている。座り心地の良い椅子に横たわっていて、馬車の中だと遅れて気が付いた。身体を起こそうとするが、なぜだか力が入らなくて動けない。
どうしたのだろう、と不思議に思った瞬間、下腹部に圧迫感を感じた。
(おしっこ……っ!)
忘れていた尿意が勢いを増して襲いかかってくる。しょろ、と下着が一瞬濡れるのを感じて、なんとか力を込めて押し止める。微かに脚を動かすと、突然顔を覗き込まれた。
「リーシャ様……!」
「カ、イル……?」
心配そうな顔をしたカイルと視線がぶつかる。彼はどこか焦ったような様子で口を開いた。
「ご気分が悪くはありませんか? どこか痛いところは?」
「だ、大丈夫、ですけど、あの、」
「まだ起き上がってはいけません。横になっていてください」
身体を動かそうとするリーシャを優しく諌める。じゅ、じゅ、とまた、下着に雫が零れた。
(や、だめ、出てきちゃだめっ)
下肢に感じる熱い感触に頬が熱くなる。
どうして馬車に寝かされているのか。ここは一体どこなのか。疑問がぐるぐると頭の中を巡るけれど、何よりも強い生理的欲求に感情が支配されていた。
(だめ、漏れちゃう……っ、出ちゃう……っ)
ぞわぞわと震えが走り、カイルに見られているにも構わず、なんとなく重い腕を動かして脚の付け根を押さえつけてしまう。もうだめ。
「お、おしっこぉ……っ」
切羽詰まった気持ちのまま口を開くと、子どものように直接的な言葉が自然と飛び出していた。
「カイル、おしっこ、おしっこ出ちゃうっ」
リーシャは涙を浮かべながら、傍らにいる騎士に欲求を訴える。しょろ、とまた少し、下着に熱い水が零れてしまう。
カイルはすぐに馬車を止めさせると、リーシャを抱き上げて外へと飛び出した。
「どうしました?」
「姫様が、ご気分が優れないとのことなので。ここで待っていてください」
驚いた顔をしている御者に告げ、カイルは街道から離れた木立の中へ足を向けた。
身体に伝わってくる振動が辛い。リーシャは必死に身体を硬くしていた。
少しでも気を抜いたら、我慢しているものが溢れてしまいそうだった。
城下町から城へと続く街道の途中なのか、周囲に人気はなかった。カイルは馬車から少し距離を取り、太い木の陰に隠れるようにして足を止めた。
これから何をされるのか、直観的に理解する。恥ずかしいけれど、身体の自由が効かなくて彼に手伝ってもらうほかない。
「失礼いたします」
カイルは彼女を腕の中に抱えたまま、ドレスの裾を捲り上げた。
「姫様、手を」
促されて、必死に前を押さえつけていた手をおずおずと離す。カイルの逞しい手はするすると器用に下着を膝まで下ろした。彼の手が触れた下着はしっとりと湿っていて、恥ずかしさに頬が赤くなる。
カイルは太腿の裏を持つようにしてリーシャを抱え直した。幼子の排泄を手伝うような恰好だ。剥き出しの肌が外気に触れた途端、しゅ、しゅう、と我慢していた飛沫が迸った。ぽたぽたと地面に小さな染みが作られる。
突然、羞恥心に押し潰されそうになり、リーシャは思わず身を捩った。
「や、やだ、カイル、いや、見ないでっ」
「目を瞑っています。大丈夫です、我慢せず全部出してください」
優しい声が耳元で囁く。
彼が本当に目を閉じているのか、確認することはできない。けれどもう我慢は限界を超えていて。彼の腕に抱えられたまま、リーシャは強張っている身体からそっと力を抜いた。
――ちょろ、しょろろ……。
始めは、躊躇いながら少しずつ。しかし、すぐにそれは勢いを増していった。
たくさん我慢していたおしっこは大きく弧を描き、激しい水音を立てながら地面に落ちていく。
(……っ、恥ずかしい、のに、おしっこ、気持ちいい……)
足元に広がる水溜まりが大きさを増すごとに、下腹部の重さが軽くなっていく。
リーシャは呆けたようにそれを見ていた。細い身体のどこにこれほど溜め込んでいたのか自分でもよくわからない。溢れる水流は止まることを知らず、いつまでも出続けるのではないかと思ってしまう。
びちゃびちゃ、ばしゃばしゃ……。
耳に入ってくる水音を感じながら、お腹の中身が空っぽになるまで信頼する騎士の腕に身を委ねていた。
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