130 / 139
パワーレベリングをしよう
第12話 美容院の予約を入れよう
しおりを挟む
僕はなんとなく先延ばしにしていた美容院の予約をようやく入れることにした。
いや、美容院ってハードル高くない?
理髪店なら勝手が分かる。髪を切られて、シャンプーされて、顔剃りされて、はい終了ってなもんだ。最近だと本当に髪を切るだけのクイック理髪店とかも増えてきている。そういうのって気楽で良いよね。値段も安いし。
それに比べて美容院ってそもそも男が予約を入れていいものなの? ってところから話は始まる。なんか女の園って感じがするじゃん。
家族に言わせれば考えすぎだとのことだ。美容院にも普通に男性客はいるし、むしろ髪の整え方まで教えてくれるという。
と言われても実際に電話をかけるにはハードルが高い。まず店を知らないし。
結局は母さんや水琴も利用しているという大和八木駅前の美容院に予約を入れることにした。紹介特典をどちらが貰うかで母さんと水琴の間で一悶着あったが、そこはお金を出してくれる母さんが勝った。
紹介用カードというのを母さんから受け取って、スマホの通話アプリを立ち上げる。なんか凄い緊張する。電話番号を入力したものの、通話ボタンをなかなかタッチできない。
店が忙しい時間とかそういうことないかな?
などと電話をしない言い訳ばかりを考えてしまう。分かるかな、分からないかな。多分陰キャ特有の病気みたいなものだと思うんだけど。
でもメルならきっと気にもしないんだろう。ひーくんのお母さんから紹介されました!って言って相手がきょとんとするところまで思い浮かぶ。
ふっと口元に笑みが浮かんで、緊張が解ける。通話ボタンを押した。
『お電話ありがとうございます。キュア大和八木店、佐々木です』
「えっと、そちらでお世話になっている柊早苗《ひいらぎさなえ》の紹介で、予約を入れたいんですけど」
『ありがとうございます。カットのご予約でよろしいですか?』
「はい」
『お名前をお伺いしてよろしいでしょうか?』
「柊和也です」
『ひいらぎかずや様ですね。お電話番号は今おかけになっている番号で問題無いでしょうか?』
「はい。それで大丈夫です」
『それではご予約の日時ですが、担当など、ご希望ございますか?』
「担当は、その、お任せします。日時は今週木曜までならいつでも大丈夫なんですが、金曜日だと夕方以降で、土日はちょっと都合が悪いです」
『そうですね、ちょっとお待ちください……。6日の木曜日夕方17時からで如何でしょう?』
「大丈夫です。それでお願いします」
『それでは当日お待ちしております。お電話佐々木が承りました』
「はい。失礼します」
『失礼致します』
電話を切って息を吐く。ふー、予約をするだけなのに緊張した。こんなんじゃお店に入る時に心臓発作を起こすのではないだろうか。
なんて言っている間に冬休みも終わりが近い。宿題は早めに終わらせてあるが、3学期の予習を始めておくことにした。知力の上昇に伴って教科書の理解度が格段に増している。一読しただけで大体の内容が理解、また記憶できる。ちょっと怖いほどだ。
日本でも金持ちは子どもをパワーレベリングさせることがあって、その是非について議論が巻き起こっている。一部では法規制するべきだとの声もある。確かにこれだけ理解力が上がると平等な競争だとはとても言えないだろう。富める者がさらに富めるという循環が生まれそうではある。
地球がゲーム化してまだ10年。企業も、人も、試行錯誤の段階だ。パワーレベリングがこれほど学力に影響を与えるのだとすれば、この流れは今後加速していくことだろう。
一方で地球の探索者たちはまだそれほどレベルが高くない。専業探索者でも10年で上げられるレベルはそれほどでもない。無理をすれば死ぬのだから当然だ。どうしても安全マージンを取った階層でレベルを上げることになる。
それでも第32層まで攻略されているというのならレベル40を越える探索者がいるということだ。あるいはレベルでは及ばなくとも地球の武器類によって無理矢理狩りが成立しているということだ。彼らに依頼すればレベル20くらいまでなら簡単にパワーレベリングできる。数十万円とか、数百万円の費用がかかるだろうが、それで得られる知力を安いと考えるか、高いと考えるかは、親の資産次第だろう。
考えようによれば僕の急激な学力向上もレベルと結びつけて考えられてもおかしくない。僕の通う高校は成績を順位で発表したりはしないから、僕の成績が急に伸びてもそれが分かるのは教師だけだが、それでもあまりにも急な学力向上は変に思われるかも知れない。成績のコントロールが必要だ。
やるべきこと、考えることはあまりにも多い。
いや、美容院ってハードル高くない?
理髪店なら勝手が分かる。髪を切られて、シャンプーされて、顔剃りされて、はい終了ってなもんだ。最近だと本当に髪を切るだけのクイック理髪店とかも増えてきている。そういうのって気楽で良いよね。値段も安いし。
それに比べて美容院ってそもそも男が予約を入れていいものなの? ってところから話は始まる。なんか女の園って感じがするじゃん。
家族に言わせれば考えすぎだとのことだ。美容院にも普通に男性客はいるし、むしろ髪の整え方まで教えてくれるという。
と言われても実際に電話をかけるにはハードルが高い。まず店を知らないし。
結局は母さんや水琴も利用しているという大和八木駅前の美容院に予約を入れることにした。紹介特典をどちらが貰うかで母さんと水琴の間で一悶着あったが、そこはお金を出してくれる母さんが勝った。
紹介用カードというのを母さんから受け取って、スマホの通話アプリを立ち上げる。なんか凄い緊張する。電話番号を入力したものの、通話ボタンをなかなかタッチできない。
店が忙しい時間とかそういうことないかな?
などと電話をしない言い訳ばかりを考えてしまう。分かるかな、分からないかな。多分陰キャ特有の病気みたいなものだと思うんだけど。
でもメルならきっと気にもしないんだろう。ひーくんのお母さんから紹介されました!って言って相手がきょとんとするところまで思い浮かぶ。
ふっと口元に笑みが浮かんで、緊張が解ける。通話ボタンを押した。
『お電話ありがとうございます。キュア大和八木店、佐々木です』
「えっと、そちらでお世話になっている柊早苗《ひいらぎさなえ》の紹介で、予約を入れたいんですけど」
『ありがとうございます。カットのご予約でよろしいですか?』
「はい」
『お名前をお伺いしてよろしいでしょうか?』
「柊和也です」
『ひいらぎかずや様ですね。お電話番号は今おかけになっている番号で問題無いでしょうか?』
「はい。それで大丈夫です」
『それではご予約の日時ですが、担当など、ご希望ございますか?』
「担当は、その、お任せします。日時は今週木曜までならいつでも大丈夫なんですが、金曜日だと夕方以降で、土日はちょっと都合が悪いです」
『そうですね、ちょっとお待ちください……。6日の木曜日夕方17時からで如何でしょう?』
「大丈夫です。それでお願いします」
『それでは当日お待ちしております。お電話佐々木が承りました』
「はい。失礼します」
『失礼致します』
電話を切って息を吐く。ふー、予約をするだけなのに緊張した。こんなんじゃお店に入る時に心臓発作を起こすのではないだろうか。
なんて言っている間に冬休みも終わりが近い。宿題は早めに終わらせてあるが、3学期の予習を始めておくことにした。知力の上昇に伴って教科書の理解度が格段に増している。一読しただけで大体の内容が理解、また記憶できる。ちょっと怖いほどだ。
日本でも金持ちは子どもをパワーレベリングさせることがあって、その是非について議論が巻き起こっている。一部では法規制するべきだとの声もある。確かにこれだけ理解力が上がると平等な競争だとはとても言えないだろう。富める者がさらに富めるという循環が生まれそうではある。
地球がゲーム化してまだ10年。企業も、人も、試行錯誤の段階だ。パワーレベリングがこれほど学力に影響を与えるのだとすれば、この流れは今後加速していくことだろう。
一方で地球の探索者たちはまだそれほどレベルが高くない。専業探索者でも10年で上げられるレベルはそれほどでもない。無理をすれば死ぬのだから当然だ。どうしても安全マージンを取った階層でレベルを上げることになる。
それでも第32層まで攻略されているというのならレベル40を越える探索者がいるということだ。あるいはレベルでは及ばなくとも地球の武器類によって無理矢理狩りが成立しているということだ。彼らに依頼すればレベル20くらいまでなら簡単にパワーレベリングできる。数十万円とか、数百万円の費用がかかるだろうが、それで得られる知力を安いと考えるか、高いと考えるかは、親の資産次第だろう。
考えようによれば僕の急激な学力向上もレベルと結びつけて考えられてもおかしくない。僕の通う高校は成績を順位で発表したりはしないから、僕の成績が急に伸びてもそれが分かるのは教師だけだが、それでもあまりにも急な学力向上は変に思われるかも知れない。成績のコントロールが必要だ。
やるべきこと、考えることはあまりにも多い。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界宿屋の住み込み従業員
熊ごろう
ファンタジー
なろう様でも投稿しています。
真夏の昼下がり歩道を歩いていた「加賀」と「八木」、気が付くと二人、見知らぬ空間にいた。
そこに居たのは神を名乗る一組の男女。
そこで告げられたのは現実世界での死であった。普通であればそのまま消える運命の二人だが、もう一度人生をやり直す事を報酬に、異世界へと行きそこで自らの持つ技術広めることに。
「転生先に危険な生き物はいないからー」そう聞かせれていたが……転生し森の中を歩いていると巨大な猪と即エンカウント!? 助けてくれたのは通りすがりの宿の主人。
二人はそのまま流れで宿の主人のお世話になる事に……これは宿屋「兎の宿」を中心に人々の日常を描いた物語。になる予定です。
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる