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パワーレベリングをしよう

第3話 ダンジョンを走り抜けよう

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 言うまでもないことかも知れないがソールさんたちは強かった。第10層までを一気に駆け抜ける。道中出くわした魔物とは戦いというほどの戦いにもならなかった。僕らが追いつく前に処理が終わっている。僕のしたことと言えば魔石を拾ったことくらいだ。

 ただ第10層に到着した時点でニーナちゃんの魔力が尽きた。ロージアさんもかなりキツそうだ。この2人はレベルが低いし、素の肉体も鍛えていたわけではない。ニーナちゃんは回復魔法を、ロージアさんは小回復魔術を使いつつ頑張ってきたが、ここが限界だというわけだ。

「よく頑張った。ここからはペースを落とすぞ」

 休憩はしないということだ。この辺の厳しさはメルに限った話ではないんだな。アーリアではこういうものだと言うことなのかも知れない。

「ニーナさん、ロージアさん、大丈夫?」

「私は大丈夫ですけど、ロージアさんが……」

「魔力は尽きてないから大丈夫よ。ちょっと息切れしてるだけ」

 回復力という点では回復魔法のほうが圧倒的に優位だ。魔力効率でも上回る。小回復魔術の良い点は構成さえ覚えれば誰でも使えるという点に尽きる。

 僕らは先行するソールさんのパーティを見失わないように付いていく。

 第11層へのポータルの前でソールさんはようやく足を止めた。

「よし、昼飯にしよう。11層からは湿地帯だ。進むのはさらにキツくなる」

 僕らはそれぞれに買っていた昼食を取り出して口にする。流石に日本からお弁当の類いを持ち込むわけにもいかないから、アーリアで購入した携帯食だ。硬い黒パンに切り込みを入れて肉のようなものを挟み込んだもの。水分は湧水の魔術でなんとかする。

 食事が終わるとソールさんはすぐに立ち上がった。休憩を取るという考えはなさそうだ。日暮れまでに15層というのは僕の希望だから文句を言える筋合いでは無い。

 第11層からはソールさんの言う通り湿地帯だった。ぬかるみを避けて進むため、どうしても遠回りになりがちだ。先行するソールさんたちに付いて僕らは進む。進む速度自体はゆっくりになったので、付いていくのは苦ではない。

 魔物への対処も相変わらず完璧だ。ただ倒した魔物が消えた後、魔石が水場に落ちることがあって、回収が難しいことがあった。

「これだから湿地帯は厄介だよな」

 回収は難しいと感じた魔石は放置することに決まった。通常の狩りであれば探すのが当然だが、今回の目的はポータルの開通だ。ソールさんたちが良いというのなら、魔石を回収する必要はそれほどない。

 これが理由で第10層で足踏みをする冒険者は少なくないのだそうだ。生活していくだけのお金を稼ぐなら第10層で十分だ。お釣りが来る。

「10層でそこそこ稼いで引退して別の商売を始めるのは王道だな」

 と、ソールさんは言う。冒険者として大成する気が初めから無いのであれば、第11層以降に挑む必要は無いのだそうだ。金貨の50枚も稼げば屋台で商売を始められる。アーリアで屋台を出している人にはそう言う人が少なくないらしい。

 第13層に到達した時点で、1度ポータルでダンジョンの外に出て休憩することになった。湿地帯では腰を落ち着けて休憩することも難しい。

 時間は良い感じだ。このペースなら日暮れまでに15層に到達できるだろう。

「ものは相談なんだが、どうせなら16層まで目指さないか? 君らも次回また湿地帯からというのは辛いだろう? 経験者としても16層から挑戦するほうがいい。金貨1枚の追加で請け負うが」

「そういうのってアリなんですか?」

「ダメじゃ無いさ。ギルドはあくまで仲介だ。冒険者が自分で仕事を取ってくるのは実力さ」

「15層に到着したら決めるということでいいですか?」

「もちろんそれで構わない」

 それから僕らはダンジョンに戻って先に進む。追加報酬のためか、心なしか歩調が速くなった。日暮れまでは十分な時間を残して第15層に到達する。

「みんな、後1層頑張れる?」

「頑張ります!」

 ニーナちゃんがそう言えば誰も拒否はできない。僕はソールさんに金貨1枚を直接支払って第16層を目指すことにする。なんとか日暮れ前に第16層へのポータルに辿り着いた。

 第16層からは凍土だった。なんでも一年中凍り付いているのだそうだ。寒くなってきたアーリアの外気温よりずっと寒い。防寒対策が必要だ。第16層まで進んでおいたほうがいいというソールさんの進言は正しかった。

 僕らはポータルでダンジョンの外に出る。魔石を折半して、ソールさんに冒険者ギルドから預かった割り符を渡して依頼完了だ。

「まいどあり。16層でパワーレベリングするなら俺たちが引き受けるが?」

「いえ、もっと先まで進むつもりです。今日はありがとうございました」

「金があって羨ましいことだ。それじゃ機会はもう無さそうだが、見かけたらよろしく頼む」

 ソールさんが手をひらひらと振って去って行く。彼のパーティもそれに続いていった。
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