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剣術を学ぼう
第11話 パフェを食べよう
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そんなことを話していると、メル待望のパフェがやってきた。僕の注文したコーヒーも一緒だ。
「すっごーい! 綺麗! なにこのスプーン、面白い!」
パフェ用の長いスプーンって確かにちょっとテンション上がるよね。それ専用って感じが凄くいい。
メルは恐る恐ると言った感じでチョコレートソースのかかったチョコレートアイスを一匙掬って口に運ぶ。
「ん~~、美味しい~」
「上から順番に食べていってもいいけど、縦に掘り進めるのもオススメだよ」
「こうかな?」
メルがチョコレートパフェを抉るようにスプーンを突っ込んで中身を掻き出して口に運ぶ。
「さくさくのふわふわだぁ」
色んな味わいが口に広がるから僕は縦に食べるほうが好きだ。もちろん異論は認める。流石に色んな甘いものを食べてきて慣れてきたのか、メルはゆっくりと味わいながらパフェを口に運んでいる。
「アーリアのみんなにもこんな美味しいものがあるってこと知って欲しいなあ」
そんなことを言えるなんて、この子こそが聖女なんじゃない?
ふと疑問に思って僕は聞いた。
「さっき聖女ギルドにお世話になっていたって言ってたけど」
「うん。聖女ギルドの運営する孤児院にいたんだ」
あ、しまった。と、僕は思った。踏み込みすぎた。てっきりメルこそが聖女の称号を持っているんじゃないかとか軽く冗談で考えてしまったのだ。
「ごめん。余計なことを聞いた」
「ん? そんなことないよ。別に珍しいことでもなんでもないしね」
それはメルが孤児院にいたからこそそう思うのだろう。アーリアでも孤児院育ちが一般的だとかそんなはずはない。
「家はさ、両親が両方とも冒険者だったんだ」
メルはパフェを口に運びながら語り出す。僕はそれを止める言葉を持たない。
「だから幼い頃は結構裕福な生活だったんじゃないかな。お手伝いさんが家にいたしね。いやー、我儘で贅沢な子どもだったよ。でもある日、お父さんもお母さんも家に帰ってこなかった。パーティメンバーだった人が言うにはアーリアのダンジョンの20層でいるはずのないドラゴンに襲われて、パーティメンバーはバラバラに逃げたんだって。それ以来、お父さんもお母さんも行方不明のまま。冒険者証も返ってこなかった」
「そう、なんだ……」
「それ以来、アーリアのダンジョンの20層の一角にはドラゴンが住み着いて、誰もそこには近づかなくなった。近づかなければ襲ってこないから、誰も手出しをしてない」
「ドラゴン……」
ドラゴン、つまり西洋竜種は地球のダンジョンでも確認されている。軍隊の武器を持ち込んでようやく倒せたという。アーリアの人々がドラゴンと戦うには相当のレベルと、魔法、あるいは魔術が必要になるだろう。
「私の家にはそれなりの蓄えがあったはずだけど、それは冒険者ギルドに預けられていて、私には引き出せなかった。路頭に迷った私は冒険者ギルドの口利きで聖女ギルドの運営する孤児院に入ったんだ。そこで10歳までお世話になって、仕事を見つけてきて、その後は自分で生きてきた」
それは日本でぬくぬくと育ってきた僕には想像もできない壮絶な人生だった。
「じゃあ冒険者になろうと思ったのは……」
「んー、私がね、そのドラゴンを倒してやろうかと思って。誰もやらないなら、自分でやるしかないよね」
無茶な願いだと思った。止めるべきだと思った。なのに――、
「それ、僕が手伝ってもいいかな?」
僕の口から出てきたのはまったく別の言葉だったのだ。
「すっごーい! 綺麗! なにこのスプーン、面白い!」
パフェ用の長いスプーンって確かにちょっとテンション上がるよね。それ専用って感じが凄くいい。
メルは恐る恐ると言った感じでチョコレートソースのかかったチョコレートアイスを一匙掬って口に運ぶ。
「ん~~、美味しい~」
「上から順番に食べていってもいいけど、縦に掘り進めるのもオススメだよ」
「こうかな?」
メルがチョコレートパフェを抉るようにスプーンを突っ込んで中身を掻き出して口に運ぶ。
「さくさくのふわふわだぁ」
色んな味わいが口に広がるから僕は縦に食べるほうが好きだ。もちろん異論は認める。流石に色んな甘いものを食べてきて慣れてきたのか、メルはゆっくりと味わいながらパフェを口に運んでいる。
「アーリアのみんなにもこんな美味しいものがあるってこと知って欲しいなあ」
そんなことを言えるなんて、この子こそが聖女なんじゃない?
ふと疑問に思って僕は聞いた。
「さっき聖女ギルドにお世話になっていたって言ってたけど」
「うん。聖女ギルドの運営する孤児院にいたんだ」
あ、しまった。と、僕は思った。踏み込みすぎた。てっきりメルこそが聖女の称号を持っているんじゃないかとか軽く冗談で考えてしまったのだ。
「ごめん。余計なことを聞いた」
「ん? そんなことないよ。別に珍しいことでもなんでもないしね」
それはメルが孤児院にいたからこそそう思うのだろう。アーリアでも孤児院育ちが一般的だとかそんなはずはない。
「家はさ、両親が両方とも冒険者だったんだ」
メルはパフェを口に運びながら語り出す。僕はそれを止める言葉を持たない。
「だから幼い頃は結構裕福な生活だったんじゃないかな。お手伝いさんが家にいたしね。いやー、我儘で贅沢な子どもだったよ。でもある日、お父さんもお母さんも家に帰ってこなかった。パーティメンバーだった人が言うにはアーリアのダンジョンの20層でいるはずのないドラゴンに襲われて、パーティメンバーはバラバラに逃げたんだって。それ以来、お父さんもお母さんも行方不明のまま。冒険者証も返ってこなかった」
「そう、なんだ……」
「それ以来、アーリアのダンジョンの20層の一角にはドラゴンが住み着いて、誰もそこには近づかなくなった。近づかなければ襲ってこないから、誰も手出しをしてない」
「ドラゴン……」
ドラゴン、つまり西洋竜種は地球のダンジョンでも確認されている。軍隊の武器を持ち込んでようやく倒せたという。アーリアの人々がドラゴンと戦うには相当のレベルと、魔法、あるいは魔術が必要になるだろう。
「私の家にはそれなりの蓄えがあったはずだけど、それは冒険者ギルドに預けられていて、私には引き出せなかった。路頭に迷った私は冒険者ギルドの口利きで聖女ギルドの運営する孤児院に入ったんだ。そこで10歳までお世話になって、仕事を見つけてきて、その後は自分で生きてきた」
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「んー、私がね、そのドラゴンを倒してやろうかと思って。誰もやらないなら、自分でやるしかないよね」
無茶な願いだと思った。止めるべきだと思った。なのに――、
「それ、僕が手伝ってもいいかな?」
僕の口から出てきたのはまったく別の言葉だったのだ。
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