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クソザコナメクジくん、異世界に行く
第24話 家族に説明をしよう
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それから10分ほどで母さんが帰ってきて、
「おかえり」
というと平手打ちで返された。いきなり頬を張られ、流石に混乱する。
「お前は、心配させて! 本当に心配させて、もう! ダンジョンに行ってるなんて聞いてないわよ!」
「それは、その、ごめん……」
未成年のダンジョン探索を親が制限できるということはない。中学さえ卒業していれば、ダンジョン探索は国に認められた、どころか推奨される行為だ。しかし親を心配させていい理由にはならない。
僕が謝ると母さんは僕にぎゅっと抱きついた。
「生きてて良かった。本当に良かったぁ」
母さんは平手を張っておいて今度はおいおいと泣き出した。ちょっと釣られそうになるが、僕はエロ本の隠し場所の件は忘れていないぞ。でも母さんの背中をポンポンと叩いて泣き止むのを待つ。
「すみません、みっともないところをお見せしちゃって」
なんかさっき僕も同じことを斉藤さんに言った気がするな。
「いえ、行方不明になっていたご子息との再会です。色々な感情が昂ぶって当然でしょう。必要とあれば席を外しますが……」
「いえ、できれば斉藤さんからもお話を聞きたいと思います。息子の言うことだけだと信じられる気がしなくて」
酷い扱いをされている気がするが、高校生の息子の言うことと、ダンジョン管理局勤めの公務員が言うことでは説得力が違うだろう。
「では、私の知っている範囲のことになりますが……」
斉藤さんが流暢に説明を始める。
「まずダンジョン管理局としては和也さんが9月11日に橿原ダンジョンに入場されたことを確認しています。9月12日に捜索願を出されましたね? それでダンジョン管理局にも問い合わせが来て、和也さんが橿原ダンジョンから退場されていないことが分かりました。その日のうちにダンジョン管理局から連絡があったと思います」
「はい。生きた心地がしませんでした」
「我々は記録を洗い、ほぼ同時刻に同学年の少年が3人橿原ダンジョンに入場していることを突き止めました。彼らに連絡を取ったところ、和也さんがミミックに丸呑みにされ、救出しようとしたができなかった、というお話を聞くことができました。これが9月13日のことになります。我々は和也さんをダンジョン内行方不明に指定しました。半年の猶予こそありますが、実質的な死亡判定です。結果的に誤った判断であったことを謝罪いたします」
斉藤さんが深々と頭を下げる。
「そして本日、10月13日13時42分、和也さんが橿原ダンジョンのゲートを通ろうと探索者証をかざしたことが記録されています。すぐにダンジョン管理局に連絡があって私がお迎えに上がり、奈良県立医科大学附属病院で精密検査を受けていただきました。詳しい検査結果は後日こちらにも届くと思いますが、簡易検査の結果は良好で、健康体とのことです。その後、和也さんから調書に協力いただいて、それから緊急連絡先として登録のあったお母様の携帯電話にご連絡を差し上げた、というわけです。私どもが確認している事実は以上となります」
「それで何があったの? ミミックに食べられたというのは本当だったの?」
斉藤さんの話を聞き終えた母さんが僕に向かって言う。
「本当だよ。ミミックに食べられて意識を失って気が付いたら誰もいなくなってたんだ。それでダンジョンからなんとか出てきたら、今日だったってわけ」
「アンタも斉藤さんを見習って分かりやすく説明なさい!」
「って言われても、本当にそれだけなんだよ。9月11日、僕はミミックに食われた。そしたら10月13日になってた。意味が分からないのは僕も同じだよ」
「斉藤さん、この子の言うようなことはあり得るんでしょうか?」
「まず事実として和也さんは9月11日に入場、10月13日に退場しており、この間に橿原ダンジョンを出入りした記録はありません。ダンジョン内で1ヶ月以上の間を生き延びてきたというよりは、和也さんが言うように、時間が跳んだというほうが可能性はあると思います。あるいはこの世界の運営による直接介入という可能性もありますが……、実際にそれが行われたという記録はどこにもありません」
この世界はゲームで、僕らはデータだ。運営が僕のデータをひょいとカットして、別の時間にペーストすれば簡単に時間は跳ぶ。だけど運営はそういう介入をしてこない。彼らがその気になれば死者のデータを生前に戻して3日の後に復活、ということも可能であるはずなのだ。
僕らは押し黙った。そのすぐ後に父さんが帰ってきて、僕と斉藤さんは同じ説明を繰り返すことになった。
「おかえり」
というと平手打ちで返された。いきなり頬を張られ、流石に混乱する。
「お前は、心配させて! 本当に心配させて、もう! ダンジョンに行ってるなんて聞いてないわよ!」
「それは、その、ごめん……」
未成年のダンジョン探索を親が制限できるということはない。中学さえ卒業していれば、ダンジョン探索は国に認められた、どころか推奨される行為だ。しかし親を心配させていい理由にはならない。
僕が謝ると母さんは僕にぎゅっと抱きついた。
「生きてて良かった。本当に良かったぁ」
母さんは平手を張っておいて今度はおいおいと泣き出した。ちょっと釣られそうになるが、僕はエロ本の隠し場所の件は忘れていないぞ。でも母さんの背中をポンポンと叩いて泣き止むのを待つ。
「すみません、みっともないところをお見せしちゃって」
なんかさっき僕も同じことを斉藤さんに言った気がするな。
「いえ、行方不明になっていたご子息との再会です。色々な感情が昂ぶって当然でしょう。必要とあれば席を外しますが……」
「いえ、できれば斉藤さんからもお話を聞きたいと思います。息子の言うことだけだと信じられる気がしなくて」
酷い扱いをされている気がするが、高校生の息子の言うことと、ダンジョン管理局勤めの公務員が言うことでは説得力が違うだろう。
「では、私の知っている範囲のことになりますが……」
斉藤さんが流暢に説明を始める。
「まずダンジョン管理局としては和也さんが9月11日に橿原ダンジョンに入場されたことを確認しています。9月12日に捜索願を出されましたね? それでダンジョン管理局にも問い合わせが来て、和也さんが橿原ダンジョンから退場されていないことが分かりました。その日のうちにダンジョン管理局から連絡があったと思います」
「はい。生きた心地がしませんでした」
「我々は記録を洗い、ほぼ同時刻に同学年の少年が3人橿原ダンジョンに入場していることを突き止めました。彼らに連絡を取ったところ、和也さんがミミックに丸呑みにされ、救出しようとしたができなかった、というお話を聞くことができました。これが9月13日のことになります。我々は和也さんをダンジョン内行方不明に指定しました。半年の猶予こそありますが、実質的な死亡判定です。結果的に誤った判断であったことを謝罪いたします」
斉藤さんが深々と頭を下げる。
「そして本日、10月13日13時42分、和也さんが橿原ダンジョンのゲートを通ろうと探索者証をかざしたことが記録されています。すぐにダンジョン管理局に連絡があって私がお迎えに上がり、奈良県立医科大学附属病院で精密検査を受けていただきました。詳しい検査結果は後日こちらにも届くと思いますが、簡易検査の結果は良好で、健康体とのことです。その後、和也さんから調書に協力いただいて、それから緊急連絡先として登録のあったお母様の携帯電話にご連絡を差し上げた、というわけです。私どもが確認している事実は以上となります」
「それで何があったの? ミミックに食べられたというのは本当だったの?」
斉藤さんの話を聞き終えた母さんが僕に向かって言う。
「本当だよ。ミミックに食べられて意識を失って気が付いたら誰もいなくなってたんだ。それでダンジョンからなんとか出てきたら、今日だったってわけ」
「アンタも斉藤さんを見習って分かりやすく説明なさい!」
「って言われても、本当にそれだけなんだよ。9月11日、僕はミミックに食われた。そしたら10月13日になってた。意味が分からないのは僕も同じだよ」
「斉藤さん、この子の言うようなことはあり得るんでしょうか?」
「まず事実として和也さんは9月11日に入場、10月13日に退場しており、この間に橿原ダンジョンを出入りした記録はありません。ダンジョン内で1ヶ月以上の間を生き延びてきたというよりは、和也さんが言うように、時間が跳んだというほうが可能性はあると思います。あるいはこの世界の運営による直接介入という可能性もありますが……、実際にそれが行われたという記録はどこにもありません」
この世界はゲームで、僕らはデータだ。運営が僕のデータをひょいとカットして、別の時間にペーストすれば簡単に時間は跳ぶ。だけど運営はそういう介入をしてこない。彼らがその気になれば死者のデータを生前に戻して3日の後に復活、ということも可能であるはずなのだ。
僕らは押し黙った。そのすぐ後に父さんが帰ってきて、僕と斉藤さんは同じ説明を繰り返すことになった。
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