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クソザコナメクジくん、異世界に行く
第6話 キャラクターデータコンバート
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キャラクターデータコンバート。
何も無かったはずの技能欄に突然現れていたこれが、どうやら僕の状況を理解する上で役立ちそうだった。
まず大前提として地球の属する宇宙はゲーム空間である。
10年くらい前に突然、世界中の人々の脳裏に届いたアナウンスがそう言った。
正確に記すのであれば、
「すべての知性ある皆様へ。業務連絡です。現時刻をもって本シミュレーターの管理運営はアッヘンベル大学からコルパゲームズへと移管されました。それに伴い、本シミュレーターはゲームの舞台として再編成されます。では皆様、良い一日を」
となる。僕も聞いたので大筋で間違ってはいないはずだ。
すぐに人々は自分の脳裏にステータスが浮かぶことに気が付いた。さらに世界中に発生した時空の歪みからモンスターが溢れ出し、人々はアナウンスが真実を語ったのだと知った。
この世界はより高次元の世界にあるコンピューターによるシミュレーションで、あの日以来、ゲーム会社が管理運営することになったのだ。
その後の変化や混乱についてはひとまず置いておくとして、地球の属する宇宙はゲームであり、僕たち人類は一種のAIに過ぎない。つまりデータだ。
キャラクターデータコンバートというのはつまりゲーム間でキャラクターを相互に利用できるようデータの変換を行うということなのではないだろうか。
「メル……、この世界ってゲームかな?」
「なにそれ、どういうこと?」
そう返されると説明するのは難しい。だがメルの反応からどうやら彼女は世界がゲームであるとハッキリさせたあのアナウンスを聞いてはいないのだと分かる。
「いや、分からないならいいよ」
「……? ま、いっか。じゃあ私からも質問。ひーくんはどうしてこんなところでスモールスライムに殺されかかってたの?」
「ダンジョンでミミックに食べられたと思ったんだけど、気が付いたらメルに助けられてた」
「ええー!? ミミックってあのミミックだよね? ひーくんって冒険者だったんだ。てっきり旅人だと」
「いや、僕はただの運び屋で……」
「あー、なるほどー」
メルが遠い目になる。僕の境遇を勝手に想像したようだ。まあ、それほど外れてはいないような気がするけど。
「きっと転移罠だね。ミミックと同じ場所に罠があったんでしょ。ダンジョンの外まで飛ばされる転移罠って聞いたこと無いけど、それ以外考えられないし」
「完全に食べられてたと思うから、転移ミミックとかそんな感じかも。聞いたことは無いけれど」
「どちらにせよ結構遠くまで飛ばされたね。ダンジョンとは完全に逆方向だし」
メルの言うダンジョンは橿原ダンジョンのことではないだろう。まだ確信が持てたわけではないが、僕はどうやら別のゲーム世界に来てしまったらしい。
「念のため、そのダンジョンの名前を聞いていい?」
「アーリアのダンジョンって言われてるけど、それがどうかしたの?」
「じゃあ僕が入ってたダンジョンとは違う。アーリアって町のことも初めて聞いたし、相当遠くに飛ばされたみたいだ」
相当遠くって言っても多分異世界みたいなもんなんだけど。
そこでふと疑問が浮かんだ。キャラクターデータコンバートは技能だ。能動的に使えるのではないだろうか?
「メル、ちょっと試したいことがあるんだ。もし僕が消えてすぐに戻ってこなければ、僕のことは忘れていい。自分の予定に戻って欲しい。でももし良ければ少しの間待っててくれないかな?」
「消えて、ってどういうこと?」
「僕にもどうなるか分からない。でも試してみたいんだ」
「分かった。いいよ。30分くらい待ってみるね」
これでキャラクターデータコンバートが能動的に使えなかったらお笑いだ。
僕は頭の中でキャラクターデータコンバートと強く念じた。
・キャラクターをコンバートするサーバーを選択してください。
>拡張サーバー 新たなる地平
選択肢はひとつだった。
文言から察するに、やはり地球のある宇宙はこの世界にとって拡張サーバーに当たるようだ。
「やってみる」
「うん」
僕は頭の中で“新たなる地平”を選択した。
何も無かったはずの技能欄に突然現れていたこれが、どうやら僕の状況を理解する上で役立ちそうだった。
まず大前提として地球の属する宇宙はゲーム空間である。
10年くらい前に突然、世界中の人々の脳裏に届いたアナウンスがそう言った。
正確に記すのであれば、
「すべての知性ある皆様へ。業務連絡です。現時刻をもって本シミュレーターの管理運営はアッヘンベル大学からコルパゲームズへと移管されました。それに伴い、本シミュレーターはゲームの舞台として再編成されます。では皆様、良い一日を」
となる。僕も聞いたので大筋で間違ってはいないはずだ。
すぐに人々は自分の脳裏にステータスが浮かぶことに気が付いた。さらに世界中に発生した時空の歪みからモンスターが溢れ出し、人々はアナウンスが真実を語ったのだと知った。
この世界はより高次元の世界にあるコンピューターによるシミュレーションで、あの日以来、ゲーム会社が管理運営することになったのだ。
その後の変化や混乱についてはひとまず置いておくとして、地球の属する宇宙はゲームであり、僕たち人類は一種のAIに過ぎない。つまりデータだ。
キャラクターデータコンバートというのはつまりゲーム間でキャラクターを相互に利用できるようデータの変換を行うということなのではないだろうか。
「メル……、この世界ってゲームかな?」
「なにそれ、どういうこと?」
そう返されると説明するのは難しい。だがメルの反応からどうやら彼女は世界がゲームであるとハッキリさせたあのアナウンスを聞いてはいないのだと分かる。
「いや、分からないならいいよ」
「……? ま、いっか。じゃあ私からも質問。ひーくんはどうしてこんなところでスモールスライムに殺されかかってたの?」
「ダンジョンでミミックに食べられたと思ったんだけど、気が付いたらメルに助けられてた」
「ええー!? ミミックってあのミミックだよね? ひーくんって冒険者だったんだ。てっきり旅人だと」
「いや、僕はただの運び屋で……」
「あー、なるほどー」
メルが遠い目になる。僕の境遇を勝手に想像したようだ。まあ、それほど外れてはいないような気がするけど。
「きっと転移罠だね。ミミックと同じ場所に罠があったんでしょ。ダンジョンの外まで飛ばされる転移罠って聞いたこと無いけど、それ以外考えられないし」
「完全に食べられてたと思うから、転移ミミックとかそんな感じかも。聞いたことは無いけれど」
「どちらにせよ結構遠くまで飛ばされたね。ダンジョンとは完全に逆方向だし」
メルの言うダンジョンは橿原ダンジョンのことではないだろう。まだ確信が持てたわけではないが、僕はどうやら別のゲーム世界に来てしまったらしい。
「念のため、そのダンジョンの名前を聞いていい?」
「アーリアのダンジョンって言われてるけど、それがどうかしたの?」
「じゃあ僕が入ってたダンジョンとは違う。アーリアって町のことも初めて聞いたし、相当遠くに飛ばされたみたいだ」
相当遠くって言っても多分異世界みたいなもんなんだけど。
そこでふと疑問が浮かんだ。キャラクターデータコンバートは技能だ。能動的に使えるのではないだろうか?
「メル、ちょっと試したいことがあるんだ。もし僕が消えてすぐに戻ってこなければ、僕のことは忘れていい。自分の予定に戻って欲しい。でももし良ければ少しの間待っててくれないかな?」
「消えて、ってどういうこと?」
「僕にもどうなるか分からない。でも試してみたいんだ」
「分かった。いいよ。30分くらい待ってみるね」
これでキャラクターデータコンバートが能動的に使えなかったらお笑いだ。
僕は頭の中でキャラクターデータコンバートと強く念じた。
・キャラクターをコンバートするサーバーを選択してください。
>拡張サーバー 新たなる地平
選択肢はひとつだった。
文言から察するに、やはり地球のある宇宙はこの世界にとって拡張サーバーに当たるようだ。
「やってみる」
「うん」
僕は頭の中で“新たなる地平”を選択した。
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