討伐師〜ハンター〜

夏目 涼

文字の大きさ
上 下
60 / 60

第59話

しおりを挟む
紫の服の女性の名前はレイラと言った。
表世界出身だが、今は裏世界のこの村で占い師として生計を立てながら暮らしているらしい。


「1年ほど前、シスタ様とはこの村で出会いました」

アスカは顔を覆っていた布を取る。黒い髪がパサりと落ちる。

「その時もこの様にお店を開いていました。その時に、お客様として来たのです」








「いらっしゃいませ」
「ここは何を占ってもらえるのかしら?」
「はい。なんでも大丈夫ですよ」

レイラはにっこりと笑いながら話すが、椅子に座る女性を見て戸惑っていた。
服装は庶民のありきたりな服を着ているがオーラが凄い。明らかに一般の民衆ではない。

「それじゃ、私の悩みを聞いてもらおうかしら」
「悩み・・・ですか?」
「そう・・・私の悩み。あなたなら言い当てられるでしょう?」

私の目を真っ直ぐ見て言うその人の言葉にはなぜか説得力があった。

「で、では少し見させてもらいます」

そう言ってレイラはタロットカードを取り出して占い始めた。

1枚1枚並べ、めくっていく。

「これは・・・」

私は、カードから女性へ目線を移す。
女性は落ち着いた笑顔でこちらを見ている。

「あなたは何に追われているんですか?」
「・・・」

女性は笑顔を崩さないがレイラへの視線は外さない。

何かに追われているのはわかるけど・・・何に追われているのかモヤがかかったようになってて見えない。

「流石のあなたでも見えないかしら・・・」
「えっと・・・少し待てください」

レイラは水晶を取り出し魔力を込める。
何やら赤い色が見えた。

なんだろう・・・この強い光と魔力・・・赤い・・・動物?いや・・・魔族?

レイラはもっと鮮明に見ようと魔力を込めた。
すると。


ピキッと水晶にヒビが入った。



「え・・・これは特別な水晶玉なのに・・・」
「それだけやばい相手ってことね」

女性に先程の笑顔はなく真剣な表情をいていた。

「え・・・っと・・・これは一体・・・」
「ありがとう。お金はここに置いておくわ。これ以上見てもらうとあなたまで巻き込んでしまうわ」
「それってどう言う・・・」
「ありがとう。この件が片付いたらまた伺うわ」

そう言い残し、女性は姿を消した。
紋章の入ったブレスレットを残して・・・。












「それがこのブレスレットですか・・・」
「はい。このブレスレットを通じて彼女の存在は感知できていたのですが・・・ここ最近感じなくなったので。感じれなくなった原因は2つ考えられます。亡くなったか表世界に行ったか・・・」
「!?では、なぜ亡くなったのではなく表世界に行ったと断言できるのですか?」
「亡くなったら感じられなくなったと同時に亡くなった感覚も感知できるのです。詳しく説明できませんが、それが感知できていないので亡くなっているわけではないと思います」
「・・・そうですか」
「でも、なんでこのブレスレット僕にくれたの?」
「彼女の存在が感じれなくなったと同時に銀色の狼の映像が流れてきました。そして君が現れた・・・これは偶然ではありません。きっと彼女があなたに会わせるように見せたのでしょう」
「シスタ様が・・・?あぁ、やっと掴んだ手がかりなのに・・・表世界だなんてなんて遠いところに・・・。そういえばサクラ様も表世界に行くためにパルスに向かっている途中だって行ってました。何か関係あるんでしょうか・・・サクラ様の容態が治れば聞けるんですけど・・・」
「そうだね・・・この国の王がなんとかしてくれるといいけど」
「王に用があってこの国に来たのですか?」
「そうなんだけど、女の人しか入れないって。でも、魔法使いの討伐師の仲間が一緒に入れたから心配はしてないんだけど・・・」
「魔法使いの討伐師・・・」

レイラは少し考え込みながら水晶玉を眺めている。
しばらく経つと、レイラはネルとチェインに向かって「明日またここで会いましょう。同じ時間に」と言いどこかへ行ってしまった。

ネルとチェインは呆気にとられながらも唯一の手がかりのレイラの言葉を今は信じるしかなかった。

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

成実ミナルるみな

投票させていただきました。
応援しています!

夏目 涼
2021.09.01 夏目 涼

ありがとうございます!

解除

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

不老に剣士

はらぺこおねこ。
ファンタジー
あらすじはありません。 でも、それにはそこあります。 泣き虫な少年が大人になる。 たったそれだけの話。 魔道師を目指していた少年は魔力をうまくコントロールできません。 でも、魔力はありました。 あるとき伝説の三剣といわれるプレゲトンに出会い。 少年は老いを失うことと引き換えに剣士になります。 もちろん剣の才能はありません。 最弱の剣士です。 でも魔法が使えます。 弱い少年はあるとき創造の神モトフミとの戦いに巻き込まれ傷つき失い、そして何かを得るのです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。

夢草 蝶
恋愛
 侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。  そのため、当然婚約者もいない。  なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。  差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。  すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。