32 / 60
第32話
しおりを挟む
「とりあえず…休もうか…夜も遅いし…」
時計を見るともう23時を回っている。
いくらあの子の力で少し良くなったとはいえサクラの体力も心配だ。
「サクラさんは、私が部屋に送ります」
本当はツイン部屋にベッドを一つ増やして3人で寝れるようにしてもらっていたのだが1人増えてしまったので、空いていたツイン部屋をもう一部屋借りたのだった。
「サクラ1人は心配だから…ネルはサクラと一緒の部屋で休んでくれないか?」
「はっ?!そ、そんなこと出来るわけないでしょう?!私がお嬢様と…同室だなんてっ!」
「…別に俺が一緒でもいいがそれでもお前はいいのか?」
ネルの手がワナワナと震える。
少年は怯えたように俺の後ろに隠れてネルの様子を見ている。
「…分かりましたよ…さぁ、サクラさん…行きましょう」
諦めた様にサクラを連れて部屋を出て行く。
「さてと、お前に聞きたいことが山ほどあるんだが・・・どうしてこの町に現れていたんだ?しかも、魔法使いの前だけに」
「……」
「どんな事情で俺の使役になった?」
少年は沈黙を守る。
話す気は無さそうだ。
「おい…別にお前を責めている訳じゃない。ただ…理由を知りたいだけなんだ…ご主人になるなら必要だろ?」
少年の肩にポンと手を乗せる。
少年は俺の顔をじっと見つめて、ゆっくりと話し始めた。
「へへ~ん!こっちこっち!」
「こら!待て!」
杖を持って街中をバタバタと走る銀色の髪の少年。
その少年を追いかける青年も同じ銀色の髪をしていた。
「捕まえた!」
「う~…ちくしょう…」
がっくりと肩を落とす少年。
「何で杖をいつも持って行くんだ…レオン」
「俺だって、兄さんみたいに魔法を使いたいんだよ」
「お前はまだ幼い…もう少ししたら教えるよ」
その返答はもう聞き飽きたかのようにあからさまに不機嫌な顔を向ける。
「不機嫌な顔をしても無駄だ」
レオンの額に拳をコツンと当てて青年は笑う。
青年の笑顔を見て、レオンは顔を下に向ける。
「ロー兄さん…次はいつ旅に出るの?」
「ん~…そうだな…2、3日かな…近くに来たから少し寄っただけだからな」
「そう…なんだ」
レオンはがっくりと肩を落とす。
「まぁ、またすぐ戻るさ…」
「ロー!ここにいたの?」
「ルディ…どうかしたのか?」
ルディと呼ばれた金髪のポニーテールの少女がローに近づく。
「あ…レオンと話…してたのね…でもちょっといい?ミルヴォが呼んでる…」
「あぁ…ごめんなレオン、家で待っててくれるか?」
「…うん」
ルディの少し焦った顔と『ミルヴォ』の名前でレオンは何も言えなかった。
ローが帰ってきた時は、普通じゃなかった。
真夜中に家に来て、ローもルディも血だらけ…ミルヴォを担いで急いで入ってきた。
「に、兄ちゃん?!」
「レオン…ルディとミルヴォを頼む…」
「兄ちゃんは?」
「ちょっと…結界を張ってくる」
「え?兄ちゃん?!」
「レオン!申し訳ないけど手伝って!」
ローを追いかけようとしたがルディに呼び止められ、ミルヴォを2階の寝室へと運んだ。
「な、何があったの?」
「今は言えない…とりあえず止血しないと…タオルはある?」
「う、うん…」
ルディの支持でミルヴォの治療にあたる。
僧侶のミルヴォが負傷するとこんなに大変なのか。
家に置いてある薬草などで何とかミルヴォの様態は安定した。
レオンとルディは安心してルディと1階に降りる。
「兄ちゃん…大丈夫かな」
「…ローなら大丈夫よ…町全体に結界を張りに行っただけよ」
「なんで結界を張らないといけないの?…何かから逃げてるの?ねぇ…ルディ…」
「…何もないわ…ちょっと手強い魔物に襲われただけよ…」
レオンはこれ以上ルディに聞けなかった。
ルディの顔が真っ青だったのだ。
時計を見るともう23時を回っている。
いくらあの子の力で少し良くなったとはいえサクラの体力も心配だ。
「サクラさんは、私が部屋に送ります」
本当はツイン部屋にベッドを一つ増やして3人で寝れるようにしてもらっていたのだが1人増えてしまったので、空いていたツイン部屋をもう一部屋借りたのだった。
「サクラ1人は心配だから…ネルはサクラと一緒の部屋で休んでくれないか?」
「はっ?!そ、そんなこと出来るわけないでしょう?!私がお嬢様と…同室だなんてっ!」
「…別に俺が一緒でもいいがそれでもお前はいいのか?」
ネルの手がワナワナと震える。
少年は怯えたように俺の後ろに隠れてネルの様子を見ている。
「…分かりましたよ…さぁ、サクラさん…行きましょう」
諦めた様にサクラを連れて部屋を出て行く。
「さてと、お前に聞きたいことが山ほどあるんだが・・・どうしてこの町に現れていたんだ?しかも、魔法使いの前だけに」
「……」
「どんな事情で俺の使役になった?」
少年は沈黙を守る。
話す気は無さそうだ。
「おい…別にお前を責めている訳じゃない。ただ…理由を知りたいだけなんだ…ご主人になるなら必要だろ?」
少年の肩にポンと手を乗せる。
少年は俺の顔をじっと見つめて、ゆっくりと話し始めた。
「へへ~ん!こっちこっち!」
「こら!待て!」
杖を持って街中をバタバタと走る銀色の髪の少年。
その少年を追いかける青年も同じ銀色の髪をしていた。
「捕まえた!」
「う~…ちくしょう…」
がっくりと肩を落とす少年。
「何で杖をいつも持って行くんだ…レオン」
「俺だって、兄さんみたいに魔法を使いたいんだよ」
「お前はまだ幼い…もう少ししたら教えるよ」
その返答はもう聞き飽きたかのようにあからさまに不機嫌な顔を向ける。
「不機嫌な顔をしても無駄だ」
レオンの額に拳をコツンと当てて青年は笑う。
青年の笑顔を見て、レオンは顔を下に向ける。
「ロー兄さん…次はいつ旅に出るの?」
「ん~…そうだな…2、3日かな…近くに来たから少し寄っただけだからな」
「そう…なんだ」
レオンはがっくりと肩を落とす。
「まぁ、またすぐ戻るさ…」
「ロー!ここにいたの?」
「ルディ…どうかしたのか?」
ルディと呼ばれた金髪のポニーテールの少女がローに近づく。
「あ…レオンと話…してたのね…でもちょっといい?ミルヴォが呼んでる…」
「あぁ…ごめんなレオン、家で待っててくれるか?」
「…うん」
ルディの少し焦った顔と『ミルヴォ』の名前でレオンは何も言えなかった。
ローが帰ってきた時は、普通じゃなかった。
真夜中に家に来て、ローもルディも血だらけ…ミルヴォを担いで急いで入ってきた。
「に、兄ちゃん?!」
「レオン…ルディとミルヴォを頼む…」
「兄ちゃんは?」
「ちょっと…結界を張ってくる」
「え?兄ちゃん?!」
「レオン!申し訳ないけど手伝って!」
ローを追いかけようとしたがルディに呼び止められ、ミルヴォを2階の寝室へと運んだ。
「な、何があったの?」
「今は言えない…とりあえず止血しないと…タオルはある?」
「う、うん…」
ルディの支持でミルヴォの治療にあたる。
僧侶のミルヴォが負傷するとこんなに大変なのか。
家に置いてある薬草などで何とかミルヴォの様態は安定した。
レオンとルディは安心してルディと1階に降りる。
「兄ちゃん…大丈夫かな」
「…ローなら大丈夫よ…町全体に結界を張りに行っただけよ」
「なんで結界を張らないといけないの?…何かから逃げてるの?ねぇ…ルディ…」
「…何もないわ…ちょっと手強い魔物に襲われただけよ…」
レオンはこれ以上ルディに聞けなかった。
ルディの顔が真っ青だったのだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説


もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる