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第百七話 見ちゃった

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 小百合達は検問をかいくぐりながら森の中を北へと向かっていた。
「北へ進んでいるはずなのに全然涼しくなってこないわよね。本当にこの方角であってるの?」
「大丈夫よ。朝、太陽がある方向に右手を出して後ろ側が北だからあってるはずよ」
「逆でしょうが!」
小百合の声が木々に響き渡る。

「でも、この景色は見覚えがあるわ。間違ってないはずよ」
「芽依には森の中って全て同じに見えるよ」
小百合は腕組みをしながら少し考えて言った。
「ねえ、カノン。あなたこんな南方に来たことあるの?」
「ないわ」
「だったら見覚えあるわけないでしょ!」
「あら私の勘は良く当たるのよ」
「じゃあ今頃は北部に接する黄色の国に着いてるはずよね!?」

 日も暮れかけてきた頃、小百合が提案した。
「ここは丁度いい広場になってるわ。今日はここで寝ることにしましょう」
「ええ~! また野宿なの?」
菫が不満そうに言う。
「文句言わないの。みんなで食材集めに行くわよ」

 そしていよいよ就寝時間。
「今夜も当番を決めましょう。0時から1時、1時から2時、2時から3時、3時から4時、4時から5時でいいかしら。いつ獣が襲ってくるかも知れないわ。自分の当番が終わったら次の人を起こして寝ること。いい?」
「わかったわ」
全員渋々賛成する。

「じゃあ、誰がどの時間にする?」
「私、2時から3時でいいわ」
「カノンていつもこの時間ね」
「その時間は一番きつい時間でしょう。だから私がするわ」
「ダメだよ。カノンちゃんにそんなきつい仕事をさせられないよ。その時間は僕がする」
「ありがとう。その気持ちだけで十分よ。私に任せて」
「ダメだよカノンちゃん」

「何なの体の底から湧き上がってくるこの怒りに満ちた感情は?」
「小百合、安心して私も同じ気持ちよ」
「芽依もだよ。でも、どうしてお兄ちゃんはここまでカノンさんのこと好きになちゃったんだろ?」
「こんな一途な性格だとは思わなかったわ」
取り敢えず芽依、菫、カノン、四郎、小百合の順番になった。

 そして無事に朝を迎える。
「さあ、起きて朝よ」
「まだ五時だよ」
眠そうに目を擦りながら菫が言った。
「五時と言ったらもう朝よ。みんな起きて朝食を取りに行くわよ」
小百合のかけ声にみんながのそのそと動き出した。

「ええっと、朝日がこちらに出ているから右手を朝日に向けて背中が北よね」
「何してるの?」
「今日進む方角を見てるのよ」
「カノンはそれしなくていいから! てか私達を黄色の国に行かせる気がないでしょ!」

「さあ、早く動く。朝ご飯食べられないわよ」
いつものように仕切る小百合に芽依が近づきそっと言った。
「芽依、昨日の夜見ちゃった」
「え? 何を? まさか幽霊とか?」
「違うよ」
「じゃあ何を見たの?」
「話すと長くなるから次話で話すよ」
「次話って・・・・」
もしかして次の内容が気になって次話も読んでくれるかもという作者の心情を見事に理解した芽依なのであった。
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