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第百三話 デジャブー

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 小百合達の行く手を拒むかのような高い山が目の前に聳え立っている。
「まさかこれを登れって言うんじゃないわよね?」
「山を越えなければ黄色の国には行けません」
「高いにしても限度があるじゃない。これはロッククライミング級の壁でしょう」
「これらの山があるから黄色の国と黒の国の間には国交がないのです」
「それは納得だけど。私達素人に登れるレベルじゃないわよ」
「でも、これらの山を越えなければいずれ捕まります」

 小百合は俯いて何かを考えていると、芽依が小百合に向かって言った。
「芽依もこんな高い山を登るの嫌だよ」
「そう言えば芽依ちゃんって高いの苦手だったわね」

意気投合した二人を無視する形でカノンが言う。
「このままでは捕まってしまいます」
「その通りだ。小百合、芽依。登ろう!」
突然四郎が決意を表明した。

『以前この手の山で酷い目に遭ってるのよね』
小百合は自分の黒歴史を振り返る。そう、あれは第八話『天空の町』の出来事だった。小百合はマリーに騙される形で酷い目に遭っているのだ。わ、忘れた人は読み直してくれてもいいんだからね。
「何、変なナレーション入れてるのよ!」

「とにかく登ろう」
「四郎君。まさかとは思うけど、カノンが提案したから賛成してるんじゃないわよね?」
「勿論そうだが」
「殺されたいんか! このくそガキが!」
「小百合さん、キャラを守って」

 小百合達は結局この断崖絶壁を登ることにした。引き返せば捕まるだけだという判断からである。
「四郎君が最初に登りなさいよ」
「どうしてだ?」
「何でもいいから最初に登って」
「順番なんて別にいいじゃねえか?」
「もう、私達女の子は全員スカート系の服だからよ!」
「そうか。でも、最初はよく道を知っているカノンが登るべきだ。俺はその後を登ろう」

 小百合が無言で妖刀村正を取り出す。
「やっぱり俺が最初に登ろうかな?」
カチャッ!
「お願いです。最初に登らせてください!」

「それにしてもこの断崖絶壁ってほぼ垂直よね。普通、女子中学生が登ることなんてあり得ないわ。ところでカノン、まさかあなただけ背中に羽が生えて飛べるなんてことないわよね?」
「ああ、忘れてました」
カノンはそう言うと、手を大きく振ってカノンと四郎の背中に天使の羽を生やした。

「その羽、私達にも生やしなさいよ」
「ごめんなさい。これはアベック用で私達の分しかないの」
「嘘つきなさい!」

 その時、小百合達の上空を鷲の三倍はあろうかという大きな鳥が旋回し始めた。
「まさか、あの鳥って肉食じゃないわよね?」
「よくご存じですね。肉食鳥です」
「嫌な予感しかしないんだけど」

 大きな鳥は旋回しながらゆっくりと近づいてくる。
「まずいですね。私達を狙っているようです」
「どうするのよ!?」
「えい!」
カノンが呪文を唱えると小百合の腰に大きな肉の塊が現れた。
「お前もマリーと同じかーい!」
と言う言葉を残して小百合は空高く連れ去られていった。

 山の頂上ではデジャブーのごとく大きな鳥が小百合に甘えていた。
「もしかしてあなた。以前私を助けてくれた鳥さん?」
大きな鳥は言葉がわかるかのように大きく頷いている。
「ありがとう。二度も助けてくれたのね」
小百合は鳥の羽をさすりながら言った。
「それにしてもカノンはマリー以上に許せないわ。絶対に後悔させてみせるんだから」
小百合が必死でカノンへの復讐を考えているとようやくみんなが登ってきた。

「あら? 小百合さん。無事だったんですね?」
「覚えてなさいよ。この逃亡生活が終わったときがあなたの命日になるわ」
「四郎さん、こわーい!」
「やっぱり今すぐ成敗してあげるわ」
小百合が妖刀村正に手を掛けると全員が小百合を止めた。

「今カノンさんが居なくなると黄色の国へ行く道がわからなくなるよ」
「う! 仕方ないわね。もう暫く命日になる日を延ばしてあげるわ」
「だったらまだまだ生きられそうですね。だってこのレベルの山をあと七つは超えなくてはいけませんもの」
「ええー!」
カノンを覗く全員の心の叫びであった。
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