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第百一話 お世話になりました

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 小百合達がノアの家に泊めて貰った次の日。
「もう行くの?」
「私ももう少し居たいけど、早く黄色の国に行かないといけないの。それに迷惑を掛けると大変だから」
「水臭いよカノン。私のことは気にしないで」
「本当! じゃあもう一泊泊めて貰おうかな?」
「迷惑掛けるといけないんじゃなかったんかーい!」
「小百合さんすっかりツッコミキャラが板に付いてきたね」

 その時、激しくドアをノックする音が聞こえた。
「城の者だ。逃亡者を捜している。ここを開けなさい」
「まずいわ。とにかく隠れて」
「隠れるったってどこに隠れるのよ?」
小百合は『この小さな家で』という言葉を必死で飲み込んで聞いた。

「そうね。カノンと四郎さんは階段下の物置に。小百合さんと菫さんはクローゼットに。芽依さんは大きな時計の中へ隠れて」
「これって芽依だけが助かるパターンだよね」
「おとぎ話はいいから早く隠れるのよ!」
小百合は芽依を引っ張って移動した。

「この家に不審な人物は来なかったか?」
「いえ誰も来てませんけど」
「男三人と女数名だ」
「その人達がどうかしたんですか?」
「姫君の婿をさらって逃げたとんでもない犯罪者だ」
「そんな人達はこの辺りには来ていませんわ」
「そうか。もし見かけたらすぐに城へ報告するように。いいな」
「はい、わかりました」

 ガタン!
「今のは何の音だ?」
「どうするのよ小百合」
「足下にあった箱を蹴っちゃっただけじゃない」
「こっちの方だったな」
「近づいてきたわよ」
「チューチュー」
「何だ猫か」
「どうして猫なのよ!」
「シー」
「今、人の声がしたような」
「あんたキャラ変しすぎよ。元々は優等生キャラなんでしょう? いちいちツッコまないと気が済まないわけ?」

 男が小百合と菫の入ったクローゼットの扉に手を掛けた。
「そこには飼い猫のクロが入ってます」
「何ださっきのは猫の鳴き声か」
「単純か! モゴモゴ」
菫はとっさに小百合の口を塞いだ。

 城からの使者が帰ると小百合達はそーっと様子を覗いながら出てきた。
「もういない?」
「大丈夫よ」
「小百合! いい加減にしてよね! もし見つかったら死刑にされかねないのよ!」
「今回のことは反省してるわよ」
「小百合さんはもうツッコまないとダメなんだね」

 暫くすると落ち着きと安堵感が広がってくる。
「もう大丈夫よね?」
「多分大丈夫よ」
「もうこんな生活こりごりだわ」
「愛する人を守るためよ。仕方ないわ。別に菫だけ別行動してもいいのよ」
「嫌よそんなの」
みんなに笑いが戻りかけた時、芽依がとんでもないことに気付く。
「お兄ちゃんは?」

 小百合は階段下の物置にダッシュした!
「何二人で抱き合ってるのよ!!!」
「小百合! 城まで聞こえそうな大きな声で叫ばないの!」
この後、さすがのノアも早期旅立ちを提案するのであった。
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