100 / 109
第百話 主人公への道
しおりを挟む
私達が泊めて貰うことになったお宅は若い娘さんとお母さんの二人暮らしの家だった。
「カノン、久しぶりー」
「ノア、元気だった?」
「元気元気、カノンは大変なことになってるね」
「そうなの。迷惑掛けちゃうかも知れないけど、今晩だけ泊めてね」
事情は話したのか。じゃあ、追い出されることはないわね。
「でもカノンちゃん、羨ましいな」
「何が?」
「大恋愛の末、逃亡生活なんてなかなかできることじゃないよ」
何が大恋愛よ。でも今は我慢ね。追い出されたら大変だわ。
「こちらの方がその恋人さん?」
「ええ、まあ」
「素敵な人ね。カノンにお似合いだわ」
「ありがとう。とても優しい人なのよ」
我慢、我慢。今は我慢よ。私は深呼吸をして心を落ち着かせた。
「それで? 将来は結婚するつもりなの?」
「そんなぁ恥ずかしい。でも四郎さんが良ければ」
私が勢いよく席を立つと、両側から芽依ちゃんと菫が慌てて私を押さえた。
「野宿したいの?」
「わ、わかってるわよ」
1・2・3私はゆっくりと数を数え始める。
「それで? もうキスとかしたの?」
「やだ~」
私と芽依ちゃんと菫は緊張して耳を傾けた。
「一回だけね」
「「四郎君!!!!!」」「お兄ちゃん!!!!!」
三人が机をバンと叩いて勢いよく立ち上がった。
「俺はしてないぞ!」
「冗談よ」
「そう言えばこちらの女性達は誰なの?」
気付くの遅いだろ! あっ! 気付くの遅いわよ。
「自己紹介して頂戴。紹介の仕方によってはここに泊めて貰えない人も出るかも知れませんので、言葉に気を付けてくださいね」
・・・・・・この女もしかして性悪なのでは?
「私は小百合。四郎君と同じ学校に通ってた同級生よ。よろしく」
「私は芽依。妹だよ」
「私は四郎君の幼馴染みの菫よ」
「俺は葛城四郎。中学三年生だ。よろしく頼む」
「自己紹介ありがとう。私はノア。昔カノンの家の近くに住んでたの。今は引っ越して離ればなれだけど、ずっと親友をしているわ」
もどかしいわね。どうしてカノンの友達に気を遣わなくてはいけないのよ。四郎君もカノンの言いたい放題を何で否定しないの? できないからか? きっと私達を野宿させるわけにはいかないから否定できないのよね。
「見ての通りこの家は小さいからみんなのベッドを用意できないの。だから悪いけど屋根裏部屋に雑魚寝って形になるけどいい?」
「全然いいよ」
カノンが笑顔で答えている。私だって全然いいわよ。だって泊めて貰えるんですもの。贅沢は言わないわ。
「カノンはいいよ。私のベッドを使って。私はお母さんと寝るから。ここのベッド大きめなんだ」
「そんなのダメよ。私だけベッドを使わせて貰うことなんてできないよ」
「だったらカノンと四郎さんがベッドを使いなよ」
「ええ! でも~、もう仕方ないな。じゃあ、お言葉に甘えようかな?」
「「「殺すぞてめえ!」」」
私達三人はキャラを忘れて大声でツッコんだ。これって仕方ないことよね?
結局、私達のプレッシャーに負けた四郎君は、
「俺ここで寝るから」
と居間の床を指さした。
あれ? 今回は何か違和感が・・・・。いつもと違うような? そうか。そうだわ! 遂にマリーから一人称の座を奪ったのよ! これで私が正式な主人公なんだわ。後は題名を変更すれば完璧よ!
「よっしゃー!」
「小百合さん、屋根裏部屋で寝るのに感動しないで」
こうして私はまた一歩自分の地位を上げていくのであった。
因みに今回は第百話記念という特別企画で小百合が一人称になったのだが、勿論そんなことを小百合は知る由もなかった。
「カノン、久しぶりー」
「ノア、元気だった?」
「元気元気、カノンは大変なことになってるね」
「そうなの。迷惑掛けちゃうかも知れないけど、今晩だけ泊めてね」
事情は話したのか。じゃあ、追い出されることはないわね。
「でもカノンちゃん、羨ましいな」
「何が?」
「大恋愛の末、逃亡生活なんてなかなかできることじゃないよ」
何が大恋愛よ。でも今は我慢ね。追い出されたら大変だわ。
「こちらの方がその恋人さん?」
「ええ、まあ」
「素敵な人ね。カノンにお似合いだわ」
「ありがとう。とても優しい人なのよ」
我慢、我慢。今は我慢よ。私は深呼吸をして心を落ち着かせた。
「それで? 将来は結婚するつもりなの?」
「そんなぁ恥ずかしい。でも四郎さんが良ければ」
私が勢いよく席を立つと、両側から芽依ちゃんと菫が慌てて私を押さえた。
「野宿したいの?」
「わ、わかってるわよ」
1・2・3私はゆっくりと数を数え始める。
「それで? もうキスとかしたの?」
「やだ~」
私と芽依ちゃんと菫は緊張して耳を傾けた。
「一回だけね」
「「四郎君!!!!!」」「お兄ちゃん!!!!!」
三人が机をバンと叩いて勢いよく立ち上がった。
「俺はしてないぞ!」
「冗談よ」
「そう言えばこちらの女性達は誰なの?」
気付くの遅いだろ! あっ! 気付くの遅いわよ。
「自己紹介して頂戴。紹介の仕方によってはここに泊めて貰えない人も出るかも知れませんので、言葉に気を付けてくださいね」
・・・・・・この女もしかして性悪なのでは?
「私は小百合。四郎君と同じ学校に通ってた同級生よ。よろしく」
「私は芽依。妹だよ」
「私は四郎君の幼馴染みの菫よ」
「俺は葛城四郎。中学三年生だ。よろしく頼む」
「自己紹介ありがとう。私はノア。昔カノンの家の近くに住んでたの。今は引っ越して離ればなれだけど、ずっと親友をしているわ」
もどかしいわね。どうしてカノンの友達に気を遣わなくてはいけないのよ。四郎君もカノンの言いたい放題を何で否定しないの? できないからか? きっと私達を野宿させるわけにはいかないから否定できないのよね。
「見ての通りこの家は小さいからみんなのベッドを用意できないの。だから悪いけど屋根裏部屋に雑魚寝って形になるけどいい?」
「全然いいよ」
カノンが笑顔で答えている。私だって全然いいわよ。だって泊めて貰えるんですもの。贅沢は言わないわ。
「カノンはいいよ。私のベッドを使って。私はお母さんと寝るから。ここのベッド大きめなんだ」
「そんなのダメよ。私だけベッドを使わせて貰うことなんてできないよ」
「だったらカノンと四郎さんがベッドを使いなよ」
「ええ! でも~、もう仕方ないな。じゃあ、お言葉に甘えようかな?」
「「「殺すぞてめえ!」」」
私達三人はキャラを忘れて大声でツッコんだ。これって仕方ないことよね?
結局、私達のプレッシャーに負けた四郎君は、
「俺ここで寝るから」
と居間の床を指さした。
あれ? 今回は何か違和感が・・・・。いつもと違うような? そうか。そうだわ! 遂にマリーから一人称の座を奪ったのよ! これで私が正式な主人公なんだわ。後は題名を変更すれば完璧よ!
「よっしゃー!」
「小百合さん、屋根裏部屋で寝るのに感動しないで」
こうして私はまた一歩自分の地位を上げていくのであった。
因みに今回は第百話記念という特別企画で小百合が一人称になったのだが、勿論そんなことを小百合は知る由もなかった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を庇おうとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる