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第九十四話 メインヒロイン菫
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結婚式まであと八日。人生最大のイベントは着々と進んでるわ。でも何か空しいのはなぜ? 窓ガラスを流れる水滴を眺めつつ私はため息をついた。私の心を表すように寒い雨が降り続いている。私はそっと窓を開けると遠くの暗い景色を眺めた。
って! 何なの? この話に不似合いなストーリーは! これも小百合達のせいだわ。ううん、愛の言葉を語らない四郎も悪いのよ。もう、私は四郎と結婚して幸せになるんだから。これのどこがいけないっていうの?
「お姫様。挙式の打ち合わせの準備ができました。四郎様をお連れしますか?」
「いいわ。私が四郎の所に行くわ」
「でも、あのような場所に姫様を行かせるのはちょっと・・・・」
「大丈夫よ。結婚式まであと少し。ここで油断して四郎を逃がしては大変よ」
「では、誘拐犯を牢屋に入れたらどうでしょう?」
「それはそうなんだけど。何か唯一の友達を失ってしまようで嫌なのよね」
「わかりました」
「マリーが牢屋に向かったわ」
菫が小さな声で言う。
「お供の人数は?」
「3人ね。これなら何とかなるんじゃない?」
「黒いワンピースの女性でしょ?」
「そうよ」
「この城の特別部隊の人よ。最高の黒魔術の使い手だわ。下手をすれば私達全員殺されるわね」
「それは嫌よ。で、どうするの?」
「一人が囮になってお供を遠ざけるの。その隙に四郎君をさらって逃げるのよ」
「それはいい案ね。それで誰が囮になるの?」
「囮は何も考えなくてもできる役だわ。普通に考えて菫がやるべきね」
「どういう意味よ!」
「この作戦で一番の大役だからメインヒロインに相応しい菫が適役だって言ってるのよ」
「そっかー」
菫が照れ笑いをする。
「でも、捕まったりしない?」
「まあ、精鋭部隊だから普通は捕まるでしょうね」
「捕まったらどうなるの?」
「最悪その場で殺されるわ」
「全然駄目じゃない!」
「途中から出てきたキャラだし、別にいいじゃない」
「さっきメインヒロインって言ったよね!?」
「大丈夫。あなたにできないことはないわ。このまま四郎君がマリーと結婚しちゃってもいいの? これも四郎君のためなのよ」
「それもそうね。わかったわ。で、何をすればいいの?」
「結局やるんだね?」
「芽依ちゃん、余計なことは言わないの」
小百合は芽依にそっと耳打ちした。
「まずは目出し帽を被って」
「こうね」
「そして武器はマシンガンとライフルでいいわ」
「重いわね」
「目立たないとダメね。耳の横に蝋燭を付けた方がいいかしら」
「何かダサくない?」
「そんなことないわ。でもちょっとインパクトに欠けるわね。蝋燭は止めて花火にしましょう。どうせなら打ち上げ花火方がいいか」
「何か変よね?」
「そんなことないわよ。どこから見ても立派な不審者だわ」
「本当?」
「もちろんよ」
「やったー」
「不審者って言われて喜ぶんだね」
「芽依ちゃん、余計なことを言わないで」
小百合は芽依にそっと耳打ちした。
牢屋に着くと菫はやる気満々で言った。
「大きな声を出して牢屋に走って行けばいいのね」
「しっ、声が大きいわよ。確かに牢屋に向かって走るんだけどちょっと違うわね。牢屋にも向かって行った後、お供の人達があなたに気付いたら牢屋と反対方向に走るの」
「でも、本当にこの作戦でうまくいくんでしょうね?」
「大丈夫よ。私の計算に狂いはないわ」
「わかったわ。じゃあ行ってくる。四郎君は私と結婚するんだから」
そう言い残すと菫は、
「わー」
と言う大きな声を上げて走って行った。
「一秒で捕まっちゃったね」
「おかしいわね? こんなはずじゃなかったんだけど。まあいいわ。次の作戦を考えましょ」
こうして小百合と芽依はそっと部屋へと戻っていくのであった。
「ちょっと、私はどうなるのよ!」
菫の声が空しく牢屋に響いた。
って! 何なの? この話に不似合いなストーリーは! これも小百合達のせいだわ。ううん、愛の言葉を語らない四郎も悪いのよ。もう、私は四郎と結婚して幸せになるんだから。これのどこがいけないっていうの?
「お姫様。挙式の打ち合わせの準備ができました。四郎様をお連れしますか?」
「いいわ。私が四郎の所に行くわ」
「でも、あのような場所に姫様を行かせるのはちょっと・・・・」
「大丈夫よ。結婚式まであと少し。ここで油断して四郎を逃がしては大変よ」
「では、誘拐犯を牢屋に入れたらどうでしょう?」
「それはそうなんだけど。何か唯一の友達を失ってしまようで嫌なのよね」
「わかりました」
「マリーが牢屋に向かったわ」
菫が小さな声で言う。
「お供の人数は?」
「3人ね。これなら何とかなるんじゃない?」
「黒いワンピースの女性でしょ?」
「そうよ」
「この城の特別部隊の人よ。最高の黒魔術の使い手だわ。下手をすれば私達全員殺されるわね」
「それは嫌よ。で、どうするの?」
「一人が囮になってお供を遠ざけるの。その隙に四郎君をさらって逃げるのよ」
「それはいい案ね。それで誰が囮になるの?」
「囮は何も考えなくてもできる役だわ。普通に考えて菫がやるべきね」
「どういう意味よ!」
「この作戦で一番の大役だからメインヒロインに相応しい菫が適役だって言ってるのよ」
「そっかー」
菫が照れ笑いをする。
「でも、捕まったりしない?」
「まあ、精鋭部隊だから普通は捕まるでしょうね」
「捕まったらどうなるの?」
「最悪その場で殺されるわ」
「全然駄目じゃない!」
「途中から出てきたキャラだし、別にいいじゃない」
「さっきメインヒロインって言ったよね!?」
「大丈夫。あなたにできないことはないわ。このまま四郎君がマリーと結婚しちゃってもいいの? これも四郎君のためなのよ」
「それもそうね。わかったわ。で、何をすればいいの?」
「結局やるんだね?」
「芽依ちゃん、余計なことは言わないの」
小百合は芽依にそっと耳打ちした。
「まずは目出し帽を被って」
「こうね」
「そして武器はマシンガンとライフルでいいわ」
「重いわね」
「目立たないとダメね。耳の横に蝋燭を付けた方がいいかしら」
「何かダサくない?」
「そんなことないわ。でもちょっとインパクトに欠けるわね。蝋燭は止めて花火にしましょう。どうせなら打ち上げ花火方がいいか」
「何か変よね?」
「そんなことないわよ。どこから見ても立派な不審者だわ」
「本当?」
「もちろんよ」
「やったー」
「不審者って言われて喜ぶんだね」
「芽依ちゃん、余計なことを言わないで」
小百合は芽依にそっと耳打ちした。
牢屋に着くと菫はやる気満々で言った。
「大きな声を出して牢屋に走って行けばいいのね」
「しっ、声が大きいわよ。確かに牢屋に向かって走るんだけどちょっと違うわね。牢屋にも向かって行った後、お供の人達があなたに気付いたら牢屋と反対方向に走るの」
「でも、本当にこの作戦でうまくいくんでしょうね?」
「大丈夫よ。私の計算に狂いはないわ」
「わかったわ。じゃあ行ってくる。四郎君は私と結婚するんだから」
そう言い残すと菫は、
「わー」
と言う大きな声を上げて走って行った。
「一秒で捕まっちゃったね」
「おかしいわね? こんなはずじゃなかったんだけど。まあいいわ。次の作戦を考えましょ」
こうして小百合と芽依はそっと部屋へと戻っていくのであった。
「ちょっと、私はどうなるのよ!」
菫の声が空しく牢屋に響いた。
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