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第八十九話 四郎がいない!
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「とりあえず私ってばれてないのことが不幸中の幸いよね」
「ばれてるに決まってるじゃない」
「小百合、よく考えなさい。私は覆面を被っていったのよ。誰かなんてわかるわけないじゃない」
「あなたこそよく考えてよ。いくら覆面をしてたっていかにもお姫様って服装で行ったらすぐに誰かわかるでしょう?」
「え?」
これはまずいわ。私にカノンと会ってたのを見られたって四郎が思ったらこの城に帰り辛いわよね。
「今すぐ四郎をこの城に連れてきなさい!」
私は大きな声で家来達に命じた。何か嫌な予感がするわ。
そして夜を迎える。
「申し上げます。四郎様はどこにもおりません」
「どういうこと? カノンの家も捜したの?」
「はい、隈なく捜しました」
「カノンの両親を連れてきなさい。きっと何か知ってるはずよ」
「こっちへ来い」
家来達がカノンの両親を捕らえてきたらしい。
「連れてきました」
「あなた達がカノンの親ね」
「はい、その通りでございます」
「カノンはどこにいるの? 隠し立てすると大変ことになるわよ」
「私どももカノンがどこにいるのかわかりません」
「何も知らないって言うの?」
「はい」
「嘘をつくと死刑よ」
「本当でございます」
どうやら嘘をついてる顔じゃないわね。
「質問を変えるわ。カノンが次期女王である私のフィアンセと付き合い出したのは知っていたの?」
「いえ、全く知りません」
「嘘をつくと死刑だって言ってるでしょ!」
「本当です。信じてください」
行き詰まった私は小百合の方を見た。それを見た小百合は落ち着いた口調で質問した。
「今、次期女王のフィアンセと付き合ってることを知ったの?」
「はい」
「その割には驚かないのね」
「え?」
「普通、次期女王のフィアンセを横取りしたとなったら間違いなく極刑よね。自分の娘が極刑になるかもしれないと言う事実を知ってこの程度の反応はおかしいわ」
カノンの両親は暫く黙っていた。
「知ってたのね」
私はその様子を見て尋ねた。
「はい、申し訳ありません。もちろん初めはとんでもないことだと止めました。しかし、本気で好きになったようでしたので悩みぬいている娘が不憫で」
どんだけ過保護なのよ。普通許可する? 相手は次期女王のフィアンセなのよ。考えられないわ。
「それで娘さんはどこにいるの?」
小百合はこれまたゆっくりと話した。
「知りません」
「正直に話したら極刑にはしないと約束するわ」
「何で小百合が決めてるのよ!」
「いいから私に任せて」
「もう」
「このままだと城の者がお宅の娘さんを探し出すことになるわ。そうしたら間違いなく極刑よ。それでもいいの?」
「いえ、それだけは」
「だったら私達に協力しなさい。そうしたら命は助けると約束するわ」
「でも・・・・」
「本当よ。私を信じなさい」
カノンの両親はお互い顔を見合わせから言った。
「しかし、次期女王様は我が儘で横暴な方だと聞いております」
「それはその通りよ」
「ちょっと! 本人の前で何言ってるのよ!」
「いいから私に任せてって言ってるでしょ」
小百合は小さな声で私に言った。
「私はこの城では陰の権力者よ。私の言うことには次期女王も逆らえないわ」
「何言い出すのよ!!」
「いいから黙ってて」
「どう? 私を信じて協力しない? 悪いようにはしないわ。それともこのまま娘さんを見殺しにする?」
「・・・・・・」
「この後、城中の家来達総動員で娘さんを捜索する予定よ。見つかるのも時間の問題だと思うの」
「・・・・・・・・」
「もちろん国内だけじゃなく隣国も捜すわ」
「わかりました。何でもお話しします」
「よく決心してくれたわ。娘さんの命は保証しましょう」
「お願いします」
「それで娘さんと四郎君はどこにいるのですか?」
「はい、隣国のグレーの国に向かっています」
「グレーの国!?」
「どうしたのマリー。突然大きな声を上げて」
「グレーの国はまずいわ!」
「どうしてよ?」
「グレーの国は白の国の同盟国なの。これをホワイティアが知ったら大変なことになるわ!」
「どうしてグレーの国を選んだのですか?」
小百合はこの状況でも落ち着いた口調で聞いた。
「はい、黒の国と友好関係にない国の方が見つかりにくいと娘が申しまして」
「全力で国境封鎖よ。四郎を国外に出さないようにしなさい!」
私は全家来を動員して国境封鎖を命じた。四郎が敵国の女王ホワイティアに捕まったら大変だわ。ホワイティアと言ったら以前四郎と結婚未遂をした人物よ。絶対に渡すわけにはいかないわ。突然迫ってきた危機に私は動揺を隠せなかった。
「ばれてるに決まってるじゃない」
「小百合、よく考えなさい。私は覆面を被っていったのよ。誰かなんてわかるわけないじゃない」
「あなたこそよく考えてよ。いくら覆面をしてたっていかにもお姫様って服装で行ったらすぐに誰かわかるでしょう?」
「え?」
これはまずいわ。私にカノンと会ってたのを見られたって四郎が思ったらこの城に帰り辛いわよね。
「今すぐ四郎をこの城に連れてきなさい!」
私は大きな声で家来達に命じた。何か嫌な予感がするわ。
そして夜を迎える。
「申し上げます。四郎様はどこにもおりません」
「どういうこと? カノンの家も捜したの?」
「はい、隈なく捜しました」
「カノンの両親を連れてきなさい。きっと何か知ってるはずよ」
「こっちへ来い」
家来達がカノンの両親を捕らえてきたらしい。
「連れてきました」
「あなた達がカノンの親ね」
「はい、その通りでございます」
「カノンはどこにいるの? 隠し立てすると大変ことになるわよ」
「私どももカノンがどこにいるのかわかりません」
「何も知らないって言うの?」
「はい」
「嘘をつくと死刑よ」
「本当でございます」
どうやら嘘をついてる顔じゃないわね。
「質問を変えるわ。カノンが次期女王である私のフィアンセと付き合い出したのは知っていたの?」
「いえ、全く知りません」
「嘘をつくと死刑だって言ってるでしょ!」
「本当です。信じてください」
行き詰まった私は小百合の方を見た。それを見た小百合は落ち着いた口調で質問した。
「今、次期女王のフィアンセと付き合ってることを知ったの?」
「はい」
「その割には驚かないのね」
「え?」
「普通、次期女王のフィアンセを横取りしたとなったら間違いなく極刑よね。自分の娘が極刑になるかもしれないと言う事実を知ってこの程度の反応はおかしいわ」
カノンの両親は暫く黙っていた。
「知ってたのね」
私はその様子を見て尋ねた。
「はい、申し訳ありません。もちろん初めはとんでもないことだと止めました。しかし、本気で好きになったようでしたので悩みぬいている娘が不憫で」
どんだけ過保護なのよ。普通許可する? 相手は次期女王のフィアンセなのよ。考えられないわ。
「それで娘さんはどこにいるの?」
小百合はこれまたゆっくりと話した。
「知りません」
「正直に話したら極刑にはしないと約束するわ」
「何で小百合が決めてるのよ!」
「いいから私に任せて」
「もう」
「このままだと城の者がお宅の娘さんを探し出すことになるわ。そうしたら間違いなく極刑よ。それでもいいの?」
「いえ、それだけは」
「だったら私達に協力しなさい。そうしたら命は助けると約束するわ」
「でも・・・・」
「本当よ。私を信じなさい」
カノンの両親はお互い顔を見合わせから言った。
「しかし、次期女王様は我が儘で横暴な方だと聞いております」
「それはその通りよ」
「ちょっと! 本人の前で何言ってるのよ!」
「いいから私に任せてって言ってるでしょ」
小百合は小さな声で私に言った。
「私はこの城では陰の権力者よ。私の言うことには次期女王も逆らえないわ」
「何言い出すのよ!!」
「いいから黙ってて」
「どう? 私を信じて協力しない? 悪いようにはしないわ。それともこのまま娘さんを見殺しにする?」
「・・・・・・」
「この後、城中の家来達総動員で娘さんを捜索する予定よ。見つかるのも時間の問題だと思うの」
「・・・・・・・・」
「もちろん国内だけじゃなく隣国も捜すわ」
「わかりました。何でもお話しします」
「よく決心してくれたわ。娘さんの命は保証しましょう」
「お願いします」
「それで娘さんと四郎君はどこにいるのですか?」
「はい、隣国のグレーの国に向かっています」
「グレーの国!?」
「どうしたのマリー。突然大きな声を上げて」
「グレーの国はまずいわ!」
「どうしてよ?」
「グレーの国は白の国の同盟国なの。これをホワイティアが知ったら大変なことになるわ!」
「どうしてグレーの国を選んだのですか?」
小百合はこの状況でも落ち着いた口調で聞いた。
「はい、黒の国と友好関係にない国の方が見つかりにくいと娘が申しまして」
「全力で国境封鎖よ。四郎を国外に出さないようにしなさい!」
私は全家来を動員して国境封鎖を命じた。四郎が敵国の女王ホワイティアに捕まったら大変だわ。ホワイティアと言ったら以前四郎と結婚未遂をした人物よ。絶対に渡すわけにはいかないわ。突然迫ってきた危機に私は動揺を隠せなかった。
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