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第八十六話 一致団結
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「四郎、今日からあなたは外出禁止よ! いいわね!」
「外出禁止って何だ?」
「城の外に行くなってことよ!」
「朝の散歩ができなくなるのか?」
「そういうことよ」
「なぜだ?」
「あんたが城の外で何してるかわからないからに決まってるでしょ!」
四郎は悪びれた様子もなく続けた。
「別に何もしてないよ。ただカノンちゃんと会って話をしてるだけだよ」
「どうやら死刑になりたいようね」
その時、突然小百合が私の前に割り込んできた。
「カノンとどんな話をしているの?」
「どんなことが好きだとか。将来どんな家に住みたいとか。子どもは何人欲しいとか」
「死刑決定ね!」
こうして四郎は外出禁止になった。当然よね。
四郎が部屋をうろうろと歩き回っている。落ち着きがないわね。
「ああ、カノンちゃんと会いたい・・・・」
「何か言った?」
「な、何も言ってないよ」
その時、外からとんでもない声がした。
「四郎君、四郎君いる?」
「あ! カノンちゃんだ!」
四郎はバルコニーへと飛んでいった。
「ああ、四郎君。会いたかったよ」
「ああ、カノンちゃん。僕もだよ」
「ああ、四郎君、四郎君、どうしてあなたは四郎君なの? マリーさんと縁を切り、その名を捨てて。それが無理ならせめて私を愛すると誓って」
「何なのよこれ!!!」
四郎を牢屋に入れてやったわ。これくらいしないと何するかわからないもの。
「さすがにやり過ぎじゃない?」
「そうだよ。牢屋は酷すぎだよ」
「うるさいわね。四郎がこれ以上カノンとひっついてもいいって言うの?」
「それは困るけど。牢屋はないわよ」
「だったらどうすればいいのよ?」
四人は黙り込んだ。
「四郎様の様子をご報告します」
家来の一人が私に向かって言った。
「どう? 元気にしてる?」
「下を向いたまま全く動きません。食べ物も一切お召し上がりになりません」
「・・・・・・・・」
「禁止すればするほど燃えるんじゃないの?」
菫にしては鋭いことを言うわね。
「勉強だってやれって言われたらやりたくなくなるでしょ?」
確かにそうだわ。
「だったらどうしろって言うのよ!」
「いっそのこと会わせてみてはどうかしら? カノンの悪い面を見せて幻滅させるのよ」
「それは危険だわ」
小百合が口を出す。
「二人は恋に夢中なのよ。益々仲良くなるに決まってるわ」
「でも、このままじゃ埒が明かないじゃない。とりあえず家来にカノンの欠点を調べさせて。四郎君を外出させるのはその後よ」
これは驚きだわ。まさか菫が『埒が明かない』なんて言葉を使うなんて思わなかったわ。
そして数日後、カノンを調べた家来達から報告が届いた。
「これはどういうことよ!」
「成績優秀。先生やクラスメイトからの信頼が厚く生徒会長を四期連続でしてるわね。まるで私のようだわ」
「小百合の場合は性格に問題ありなのよ」
「どういう意味?」
「肝心の色恋沙汰も全くないわね。三角関係の路線で行けると思ったのに」
菫はため息をついた。
「なかったらねつ造すればいいんだよ」
「芽依、どういうこと?」
「付き合ってるという高校生を出現させれば、さすがのお兄ちゃんもショックでカノンちゃんのことを諦めるよ」
「そんなうまくいかないわよ」
「いや、やる価値はあるわね」
私は自信たっぷりに言った。
「四郎はなぜかやたらとモテるけど振られた経験はないはずよ。初めての経験でショックを受けさせるのよ」
「そうね。だったら相手役のイケメンを捜すことからね。家来にめぼしい人はいないの?」
「この城には美女は山のようにいるけどイケメンは皆無よ」
「さすがハーレム系の小説ね。まずはイケメン捜しからね」
こうして私達はこの小説始まって以来初めて一致団結するのであった。
「外出禁止って何だ?」
「城の外に行くなってことよ!」
「朝の散歩ができなくなるのか?」
「そういうことよ」
「なぜだ?」
「あんたが城の外で何してるかわからないからに決まってるでしょ!」
四郎は悪びれた様子もなく続けた。
「別に何もしてないよ。ただカノンちゃんと会って話をしてるだけだよ」
「どうやら死刑になりたいようね」
その時、突然小百合が私の前に割り込んできた。
「カノンとどんな話をしているの?」
「どんなことが好きだとか。将来どんな家に住みたいとか。子どもは何人欲しいとか」
「死刑決定ね!」
こうして四郎は外出禁止になった。当然よね。
四郎が部屋をうろうろと歩き回っている。落ち着きがないわね。
「ああ、カノンちゃんと会いたい・・・・」
「何か言った?」
「な、何も言ってないよ」
その時、外からとんでもない声がした。
「四郎君、四郎君いる?」
「あ! カノンちゃんだ!」
四郎はバルコニーへと飛んでいった。
「ああ、四郎君。会いたかったよ」
「ああ、カノンちゃん。僕もだよ」
「ああ、四郎君、四郎君、どうしてあなたは四郎君なの? マリーさんと縁を切り、その名を捨てて。それが無理ならせめて私を愛すると誓って」
「何なのよこれ!!!」
四郎を牢屋に入れてやったわ。これくらいしないと何するかわからないもの。
「さすがにやり過ぎじゃない?」
「そうだよ。牢屋は酷すぎだよ」
「うるさいわね。四郎がこれ以上カノンとひっついてもいいって言うの?」
「それは困るけど。牢屋はないわよ」
「だったらどうすればいいのよ?」
四人は黙り込んだ。
「四郎様の様子をご報告します」
家来の一人が私に向かって言った。
「どう? 元気にしてる?」
「下を向いたまま全く動きません。食べ物も一切お召し上がりになりません」
「・・・・・・・・」
「禁止すればするほど燃えるんじゃないの?」
菫にしては鋭いことを言うわね。
「勉強だってやれって言われたらやりたくなくなるでしょ?」
確かにそうだわ。
「だったらどうしろって言うのよ!」
「いっそのこと会わせてみてはどうかしら? カノンの悪い面を見せて幻滅させるのよ」
「それは危険だわ」
小百合が口を出す。
「二人は恋に夢中なのよ。益々仲良くなるに決まってるわ」
「でも、このままじゃ埒が明かないじゃない。とりあえず家来にカノンの欠点を調べさせて。四郎君を外出させるのはその後よ」
これは驚きだわ。まさか菫が『埒が明かない』なんて言葉を使うなんて思わなかったわ。
そして数日後、カノンを調べた家来達から報告が届いた。
「これはどういうことよ!」
「成績優秀。先生やクラスメイトからの信頼が厚く生徒会長を四期連続でしてるわね。まるで私のようだわ」
「小百合の場合は性格に問題ありなのよ」
「どういう意味?」
「肝心の色恋沙汰も全くないわね。三角関係の路線で行けると思ったのに」
菫はため息をついた。
「なかったらねつ造すればいいんだよ」
「芽依、どういうこと?」
「付き合ってるという高校生を出現させれば、さすがのお兄ちゃんもショックでカノンちゃんのことを諦めるよ」
「そんなうまくいかないわよ」
「いや、やる価値はあるわね」
私は自信たっぷりに言った。
「四郎はなぜかやたらとモテるけど振られた経験はないはずよ。初めての経験でショックを受けさせるのよ」
「そうね。だったら相手役のイケメンを捜すことからね。家来にめぼしい人はいないの?」
「この城には美女は山のようにいるけどイケメンは皆無よ」
「さすがハーレム系の小説ね。まずはイケメン捜しからね」
こうして私達はこの小説始まって以来初めて一致団結するのであった。
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