控えなさい! 私はマリーよ!

小松広和

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第八十五話 これは浮気よね

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 今日も早起きをした四郎は軽く準備体操をすると門へと向かって行った。
「おはようございます。四郎様」
門で待っていたのはアリアだ。
「アリア、おはよう。今日もいい天気だね」
「どちらへお出かけですか?」
「朝の散歩だよ。すっかり気に入っちゃって」
「すみません。マリー様に城外に出すなと言われておりますので」
そう言うとアリアは四郎に向かって呪文を唱えた。

「今日も来てるわ」
「これは手強いかも」
私は小百合と城門が見える窓から外を眺めながら話した。
「カノンて言ったっけ? あの娘の親には四郎は私のフィアンセだと伝えたんだけど」
「これは問題ね。その情報を知っても毎日四郎君に会いに来るんでしょ? かなり惚れ込んだわね」
「まあ、いくら惚れ込もうが私の敵じゃないけど」
「甘いわねマリー。男が一番落ちやすいのは一途で健気な女性なのよ。油断していると取り返しの付かないことになりかねないわ」
「確かにそれはまずいわね」

「ハッ!」
「ようやく生き返ったわ」
私の言葉に四郎が敏感に反応する。
「生き返った?」
「そうよ」
「どういうことだ?」

「マリー様が殺してでも四郎様を城外に出すなとおっしゃられましたので」
アリアが落ち着いた口調で説明する。
「それで本当に殺したの!?」
「はい」

「そんなことより四郎」
「そんなことって、重要なことだよね。人間の命に関することだよね」
「いいから聞きなさい!」
「はい!」
私の強い口調に四郎が背筋を伸ばした。

「四郎、この頃よく散歩に行くわね」
「健康のために」
「本当にそれが目的なの?」
「もちろん」
「アリア、四郎はもう一度臨死体験をしたいって言ってるわ」
「嘘です嘘です。他にも用事がありました」

 私はゆっくりと頷くと四郎を睨み付けた。
「どんな用事かしら?」
「町の様子を覗いに」
「アリア」
「ああ、もう一つありました。少しお話をするために」
「ふうん。で? 誰と」
「町を元気に駆け回る子ども達です」

「アリア」
「嘘です。高校生の女の子です」
「カノンね」
「いえ・・・・はい」

 私は小百合とアイコンタクトを取ると、小百合は深く頷いた。
「これはれっきとした浮気よね」
「違います。違います」
「アリア、懲らしめてやりなさい」
「ギャー! どうして正直に言ったのにー!」

 でも、これはどうにかなくてはいけない大問題よね。まあ、カノンを国外追放にすればすむことだけど、人道的立場がどうのこうのという連中が出てくると厄介だし。それに一番大切なのは四郎がどこまで夢中になっているかってことだわ。確かめる必要があるかしら。こうして私は『四郎の本心を探ろう作戦』を実施することにしたのだった。
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