77 / 109
第七十七話 ホワイティアからの条件
しおりを挟む
ザザー。
「何? このボタンの山」
「通信よ」
「ああ、ボタンを押すと立体映像が出てきて話す奴だね」
芽依がボタンを触りながら言った。
「これって殆どが宣伝なのよね。こんな辺境の地へ宣伝送ってどうするのよ」
「立体映像って何?」
菫が珍しい物を見る目で近寄ってきた。もしかして通信ボタンのこと知らなかったの?
「あなた達の世界で言う手紙のことよ」
「へえ、それで? どうやって見るの?」
「ボタン部分を上にして押してみなさい」
菫は喜んでボタンを押した。
『顔のシミにお悩みのあなた朗報です。美白堂のファンデーションを使えばどんなシミもすぐに消えます。ほらシマウマも一瞬で白馬に。あなたも試してみませんか? 今なら九割引で買えちゃいます。さあ、すぐにご連絡を』
「わー、欲しいなぁ」
「なんでこんなのが欲しいのよ! こんなの顔に塗ったら真っ白になっちゃうわよ。もしかして菫って騙されやすいタイプなの?」
「なるほど。ネットでよく見た宣伝ね」
小百合もボタンをいじりながら言う。
「これってどこから来たのかって見なきゃわからないの?」
「ボタンの側面を見てると頭にどこから来たのかが浮かんでくるわ」
「本当だ! 凄いよ!」
芽依は簡単に見えたらしく、驚きの声を上げている。
「本当に宣伝ばかりね」
ジャラジャラ。
「あら? これってマリーのお父さんからじゃない?」
小百合が一個のボタンを指さして言った。
「え? 本当、パパからだ」
『小百合君、元気でいるかね。君の美しい顔が見られなくなって私は寂しいよ。立体映像でいいから近況を報告してくれたまえ。あと、菫君と芽依君にもよろしく言っておいてくれ」
「どうして私の名前が出てこないのよ!」
「本当に無駄な物ばかりね」
小百合はため息をつきながら言った。
「服の宣伝。化粧品の宣伝。旅行の宣伝。鞄の宣伝。ホワイティア。指輪の宣伝。香水の宣伝もううんざりだわ」
「今、ホワイティアって言った?」
「え!? 敵国の女王ホワイティアからボタンが来てるわ!」
私は慌ててそのボタンを手にして宛先を再確認した。確かに白の国の女王ホワイティアからだ。
「ボタンを押すわよ」
みんなが一斉に注目する。
『お久しぶりねピピプル。元気にしてたかしら? 今日通知したのはあなた達に生きるチャンスを与えるためよ。今から出す私の条件に従えば、あなたの国を攻めたりしないわ。条件は三つ。どれか一つに応じればOKよ。どうかしら? 私って心が広いと思わない?』「何言ってるのよ」
『じゃあ、一つ目の条件よ。無条件降伏して城を明け渡しなさい。そうすれば黒の国民の命は保障するわ。更にあなた達王族は他国への亡命を許可してあげる。凄い条件よね。二つ目は、四郎をこちらに渡しなさい。知っての通り私が四郎と結婚式を挙げているときにあなた方が無理矢理連れて行ったのよ。これっておかしくない? 四郎を返してくれたら今までの無礼は水に流してあげる。どう? これもいい条件でしょう』
「ふざけないでよ!」
「そうだよ。お兄ちゃんは絶対に渡さないからね」
私達は一斉にホワイティアを非難した。といってもこれは立体映像だからホワイティアに聞こえているわけじゃないんだけど。
『最後に三つ目よ。ピピプル・クレタ・ビチャ・ウン○。あんたが自害したら今回の攻撃は見送るわ。あなたが四郎を奪おうとしてる元凶なんだから当然よね。あなたさえ決心すれば国民も両親も友人もみんな助かるのよ。どう? いい条件でしょう?』
「何わけのわからないこと言ってるのよ。みんなもそう思うでしょ?」
なぜか誰も言葉を発しない。ちょっと、どういう意味よ!
『猶予は三日。三日だけ待ってあげるわ。決心がついたら連絡をちょうだい。連絡がなかった時は条件に従う意思がないものと見なして総攻撃を開始するわ。いい返事を待ってるわね』
「あれ? このボタン」
小百合がとんでもないことを発見する。
「一週間以上前に出された物よ」
「じゃあ、もう期限の三日をとうに過ぎてるじゃない。何で攻撃をしてこないのよ」
こうして、謎に満ちたボタンメッセージはお蔵入りするのであった。
「もう何で返事が来ないのよ! 本当に攻撃しちゃうわよ! でも四郎がいる国を攻撃して四郎にもしものことがあったらまずいし・・・・」
悩めるホワイティアなのであった。
「何? このボタンの山」
「通信よ」
「ああ、ボタンを押すと立体映像が出てきて話す奴だね」
芽依がボタンを触りながら言った。
「これって殆どが宣伝なのよね。こんな辺境の地へ宣伝送ってどうするのよ」
「立体映像って何?」
菫が珍しい物を見る目で近寄ってきた。もしかして通信ボタンのこと知らなかったの?
「あなた達の世界で言う手紙のことよ」
「へえ、それで? どうやって見るの?」
「ボタン部分を上にして押してみなさい」
菫は喜んでボタンを押した。
『顔のシミにお悩みのあなた朗報です。美白堂のファンデーションを使えばどんなシミもすぐに消えます。ほらシマウマも一瞬で白馬に。あなたも試してみませんか? 今なら九割引で買えちゃいます。さあ、すぐにご連絡を』
「わー、欲しいなぁ」
「なんでこんなのが欲しいのよ! こんなの顔に塗ったら真っ白になっちゃうわよ。もしかして菫って騙されやすいタイプなの?」
「なるほど。ネットでよく見た宣伝ね」
小百合もボタンをいじりながら言う。
「これってどこから来たのかって見なきゃわからないの?」
「ボタンの側面を見てると頭にどこから来たのかが浮かんでくるわ」
「本当だ! 凄いよ!」
芽依は簡単に見えたらしく、驚きの声を上げている。
「本当に宣伝ばかりね」
ジャラジャラ。
「あら? これってマリーのお父さんからじゃない?」
小百合が一個のボタンを指さして言った。
「え? 本当、パパからだ」
『小百合君、元気でいるかね。君の美しい顔が見られなくなって私は寂しいよ。立体映像でいいから近況を報告してくれたまえ。あと、菫君と芽依君にもよろしく言っておいてくれ」
「どうして私の名前が出てこないのよ!」
「本当に無駄な物ばかりね」
小百合はため息をつきながら言った。
「服の宣伝。化粧品の宣伝。旅行の宣伝。鞄の宣伝。ホワイティア。指輪の宣伝。香水の宣伝もううんざりだわ」
「今、ホワイティアって言った?」
「え!? 敵国の女王ホワイティアからボタンが来てるわ!」
私は慌ててそのボタンを手にして宛先を再確認した。確かに白の国の女王ホワイティアからだ。
「ボタンを押すわよ」
みんなが一斉に注目する。
『お久しぶりねピピプル。元気にしてたかしら? 今日通知したのはあなた達に生きるチャンスを与えるためよ。今から出す私の条件に従えば、あなたの国を攻めたりしないわ。条件は三つ。どれか一つに応じればOKよ。どうかしら? 私って心が広いと思わない?』「何言ってるのよ」
『じゃあ、一つ目の条件よ。無条件降伏して城を明け渡しなさい。そうすれば黒の国民の命は保障するわ。更にあなた達王族は他国への亡命を許可してあげる。凄い条件よね。二つ目は、四郎をこちらに渡しなさい。知っての通り私が四郎と結婚式を挙げているときにあなた方が無理矢理連れて行ったのよ。これっておかしくない? 四郎を返してくれたら今までの無礼は水に流してあげる。どう? これもいい条件でしょう』
「ふざけないでよ!」
「そうだよ。お兄ちゃんは絶対に渡さないからね」
私達は一斉にホワイティアを非難した。といってもこれは立体映像だからホワイティアに聞こえているわけじゃないんだけど。
『最後に三つ目よ。ピピプル・クレタ・ビチャ・ウン○。あんたが自害したら今回の攻撃は見送るわ。あなたが四郎を奪おうとしてる元凶なんだから当然よね。あなたさえ決心すれば国民も両親も友人もみんな助かるのよ。どう? いい条件でしょう?』
「何わけのわからないこと言ってるのよ。みんなもそう思うでしょ?」
なぜか誰も言葉を発しない。ちょっと、どういう意味よ!
『猶予は三日。三日だけ待ってあげるわ。決心がついたら連絡をちょうだい。連絡がなかった時は条件に従う意思がないものと見なして総攻撃を開始するわ。いい返事を待ってるわね』
「あれ? このボタン」
小百合がとんでもないことを発見する。
「一週間以上前に出された物よ」
「じゃあ、もう期限の三日をとうに過ぎてるじゃない。何で攻撃をしてこないのよ」
こうして、謎に満ちたボタンメッセージはお蔵入りするのであった。
「もう何で返事が来ないのよ! 本当に攻撃しちゃうわよ! でも四郎がいる国を攻撃して四郎にもしものことがあったらまずいし・・・・」
悩めるホワイティアなのであった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
誰にも愛されずに死んだ侯爵令嬢は一度だけ時間を遡る
月
ファンタジー
癒しの能力を持つコンフォート侯爵家の娘であるシアは、何年経っても能力の発現がなかった。
能力が発現しないせいで辛い思いをして過ごしていたが、ある日突然、フレイアという女性とその娘であるソフィアが侯爵家へとやって来た。
しかも、ソフィアは侯爵家の直系にしか使えないはずの能力を突然発現させた。
——それも、多くの使用人が見ている中で。
シアは侯爵家での肩身がますます狭くなっていった。
そして十八歳のある日、身に覚えのない罪で監獄に幽閉されてしまう。
父も、兄も、誰も会いに来てくれない。
生きる希望をなくしてしまったシアはフレイアから渡された毒を飲んで死んでしまう。
意識がなくなる前、会いたいと願った父と兄の姿が。
そして死んだはずなのに、十年前に時間が遡っていた。
一度目の人生も、二度目の人生も懸命に生きたシア。
自分の力を取り戻すため、家族に愛してもらうため、同じ過ちを繰り返さないようにまた"シアとして"生きていくと決意する。
婚約破棄上等!私を愛さないあなたなんて要りません
音無砂月
ファンタジー
*幸せは婚約破棄の後にやってくるからタイトル変更
*ジャンルを変更しました。
公爵家長女エマ。15歳の時に母を亡くした。貴族は一年喪に服さないといけない。喪が明けた日、父が愛人と娘を連れてやって来た。新しい母親は平民。一緒に連れて来た子供は一歳違いの妹。名前はマリアナ。
マリアナは可愛く、素直でいい子。すぐに邸に溶け込み、誰もに愛されていた。エマの婚約者であるカールすらも。
誰からも愛され、素直ないい子であるマリアナがエマは気に入らなかった。
家族さえもマリアナを優先する。
マリアナの悪意のない言動がエマの心を深く抉る
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
聖女に巻き込まれた、愛されなかった彼女の話
下菊みこと
恋愛
転生聖女に嵌められた現地主人公が幸せになるだけ。
主人公は誰にも愛されなかった。そんな彼女が幸せになるためには過去彼女を愛さなかった人々への制裁が必要なのである。
小説家になろう様でも投稿しています。
チート転生~チートって本当にあるものですね~
水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!!
そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。
亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。
ブラック・スワン ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~
碧
ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる