75 / 109
第七十五話 アリア
しおりを挟む
チュンチュン。
「あーよく寝た」
私は大きく伸びをするとベッドから降りた。
どうやら私が一番早起きのようね。
「あら、おはようマリー」
ゲッ! 小百合ってもう起きてたの?
「えらく早起きね」
「私は一時間前に起きて、もう朝の散歩を済ませたわよ」
「何よ。朝が早いからって自慢にはならないんだからね」
私は部屋を見回すと芽依が寝ているのを発見した。
「芽依は寝坊ね」
「仕方ないわよ。まだ小さいんだし」
「まあ、小学生だからね」
何気ない平和な雰囲気が流れる中、突然四郎の叫び声が聞こえてくる。
「うわー!」
「どうしたの四郎!?」
「どうして菫ちゃんが俺の横で寝てるの?」
しまった! 昨日はいろいろなことがあってトラップを仕掛けるのを忘れてたわ。
「あら四郎君、おはよう」
「おはようじゃないよ。いつからここにいるの?」
「二時くらいかな?」
「ええー! 今七時だから五時間も前から?」
「四郎! まさか変なことしてないでしょうね!」
私はドスのきいた大きな声で聞いた。
「今気付いたんだ。何もできないよ」
「本当でしょうね!?」
「四郎君てば、夜中に何度も抱きついてきたくせに」
「何ですってー!」
部屋中に雷が鳴り四郎めがけて稲妻が落ちる。
「絶対・・・・嘘・・・・だから・・・・」
黒焦げになった四郎がか細い声で言う。
「どうなさったんですか?」
その時一人のメイドが飛び込んできた。
「あなたは誰なの?」
「私はプリンセス様ご一行のメイド兼ボディーガードをさせていただいておりますアリアと申します」
「メイドをやりながらボディーガードもするの?」
「はい、私は魔術検定一級を持っておりますので」
「因みにマリーは何級なの?」
小百合が嫌みな質問をする。
「・・・・十二級よ」
「ふーん」
小百合と菫がやっぱりと言わんばかりの蔑んだ目で私を見る。何よ、あなた達の魔力はもっと低いんだから。
「アリア。四郎の部屋にこの女が入れないようにして。危なっかしくて困るわ」
「はい、かしこまりました」
「そして四郎。二度と私以外の女性に触れないように」
「だから何もしてないって」
「四郎君、酷いわ。責任取ってくれる約束じゃない」
「何ですって!!」
「だから適当なことを言わないで!」
「お兄ちゃんは嘘をついてないよ。嘘ついてるのは菫ちゃんの方だよ」
いつの間にか起きてきた芽依が言った。
「それは本当?」
「本当だよ。芽依が二人の心を読んだから間違えないよ」
「芽依様は読心術が使えるのですか?」
「そうだよ。最近できるようになったのだよ」
「ちょっと失礼します」
アリアはそう言うと芽依の額に手をかざして目を閉じた。
「これは凄いです。まだまだ不安定ながら魔術検定三級は取得できそうな魔力を感じます」
「やったー!」
「ちょっと、芽依にそんな魔力があるわけないじゃない。いい加減なことを言わないでほしいわ」
「いえ、本当でございます」
「じゃあ芽依、この果物を魔力で砕いてみなさいよ」
「そんなのできないよ」
「そうでしょうね。こうするのよ。よく見ておきなさい」
私は手に持った果物を宙に浮かせると集中しながら呪文を唱えた。すると果物は徐々に歪み始め縦に一本の亀裂が入った。
「どう? これが黒魔術よ。ちょっとは見直したかしら?」
「わかった。芽依もやってみるよ」
芽依は目を閉じ宙に浮いた果物に、
「えい!」
と気合いを入れると見事に跡形もなく粉砕した。
「い!?」
「これでいいの?」
・・・・・・・・・・。
「これが十二級と三級の違いかぁ」
菫が嫌みな笑みで私を見ている。もう何でこうなるわけ? まあ、いいわ。こういうこともあるわよ。それよりアリアがいれば四郎の寝室に菫が入れなくなるんだから。こちらの方が大きいわよ。
そしてその夜のこと。
「四郎。ちょっとこの新しい服ってどう? 似合うかしら?」
バシン!
「何? 四郎の部屋に入ろうとしたら弾かれたわ」
まさか! 私も四郎の部屋に入れないわけ?
これこそアリアがくそ真面目だと言うことが発覚した瞬間なのであった。
「あーよく寝た」
私は大きく伸びをするとベッドから降りた。
どうやら私が一番早起きのようね。
「あら、おはようマリー」
ゲッ! 小百合ってもう起きてたの?
「えらく早起きね」
「私は一時間前に起きて、もう朝の散歩を済ませたわよ」
「何よ。朝が早いからって自慢にはならないんだからね」
私は部屋を見回すと芽依が寝ているのを発見した。
「芽依は寝坊ね」
「仕方ないわよ。まだ小さいんだし」
「まあ、小学生だからね」
何気ない平和な雰囲気が流れる中、突然四郎の叫び声が聞こえてくる。
「うわー!」
「どうしたの四郎!?」
「どうして菫ちゃんが俺の横で寝てるの?」
しまった! 昨日はいろいろなことがあってトラップを仕掛けるのを忘れてたわ。
「あら四郎君、おはよう」
「おはようじゃないよ。いつからここにいるの?」
「二時くらいかな?」
「ええー! 今七時だから五時間も前から?」
「四郎! まさか変なことしてないでしょうね!」
私はドスのきいた大きな声で聞いた。
「今気付いたんだ。何もできないよ」
「本当でしょうね!?」
「四郎君てば、夜中に何度も抱きついてきたくせに」
「何ですってー!」
部屋中に雷が鳴り四郎めがけて稲妻が落ちる。
「絶対・・・・嘘・・・・だから・・・・」
黒焦げになった四郎がか細い声で言う。
「どうなさったんですか?」
その時一人のメイドが飛び込んできた。
「あなたは誰なの?」
「私はプリンセス様ご一行のメイド兼ボディーガードをさせていただいておりますアリアと申します」
「メイドをやりながらボディーガードもするの?」
「はい、私は魔術検定一級を持っておりますので」
「因みにマリーは何級なの?」
小百合が嫌みな質問をする。
「・・・・十二級よ」
「ふーん」
小百合と菫がやっぱりと言わんばかりの蔑んだ目で私を見る。何よ、あなた達の魔力はもっと低いんだから。
「アリア。四郎の部屋にこの女が入れないようにして。危なっかしくて困るわ」
「はい、かしこまりました」
「そして四郎。二度と私以外の女性に触れないように」
「だから何もしてないって」
「四郎君、酷いわ。責任取ってくれる約束じゃない」
「何ですって!!」
「だから適当なことを言わないで!」
「お兄ちゃんは嘘をついてないよ。嘘ついてるのは菫ちゃんの方だよ」
いつの間にか起きてきた芽依が言った。
「それは本当?」
「本当だよ。芽依が二人の心を読んだから間違えないよ」
「芽依様は読心術が使えるのですか?」
「そうだよ。最近できるようになったのだよ」
「ちょっと失礼します」
アリアはそう言うと芽依の額に手をかざして目を閉じた。
「これは凄いです。まだまだ不安定ながら魔術検定三級は取得できそうな魔力を感じます」
「やったー!」
「ちょっと、芽依にそんな魔力があるわけないじゃない。いい加減なことを言わないでほしいわ」
「いえ、本当でございます」
「じゃあ芽依、この果物を魔力で砕いてみなさいよ」
「そんなのできないよ」
「そうでしょうね。こうするのよ。よく見ておきなさい」
私は手に持った果物を宙に浮かせると集中しながら呪文を唱えた。すると果物は徐々に歪み始め縦に一本の亀裂が入った。
「どう? これが黒魔術よ。ちょっとは見直したかしら?」
「わかった。芽依もやってみるよ」
芽依は目を閉じ宙に浮いた果物に、
「えい!」
と気合いを入れると見事に跡形もなく粉砕した。
「い!?」
「これでいいの?」
・・・・・・・・・・。
「これが十二級と三級の違いかぁ」
菫が嫌みな笑みで私を見ている。もう何でこうなるわけ? まあ、いいわ。こういうこともあるわよ。それよりアリアがいれば四郎の寝室に菫が入れなくなるんだから。こちらの方が大きいわよ。
そしてその夜のこと。
「四郎。ちょっとこの新しい服ってどう? 似合うかしら?」
バシン!
「何? 四郎の部屋に入ろうとしたら弾かれたわ」
まさか! 私も四郎の部屋に入れないわけ?
これこそアリアがくそ真面目だと言うことが発覚した瞬間なのであった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

白い結婚をめぐる二年の攻防
藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」
「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」
「え、いやその」
父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。
だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。
妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。
※ なろうにも投稿しています。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる