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第七十二話 野宿かな?

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 私達は思いっきり飛ばして白の国を走り続けた。でも、さすがに一日で駆け抜けるのは無理だったみたい。やはり飛竜のスピードって凄いのね。
「仕方ないわね。今夜は野宿するわ」
「えー! 私は嫌よ」
こんな我が儘を言うのはもちろん菫よ。

「ここは今にも戦争を仕掛けてきそうな敵国よ。まさか宿に泊まるわけにはいかないでしょ」
「どうしてよ?」
「当たり前じゃない。もし私達が黒の国から来たことがばれたら大変でしょ」
「そんなのどこから来たかなんて分からないわよ」

「私達はいいかもしれないけどマリーは敵国のプリンスなのよ。ばれる確率は高いんじゃない?」
珍しく小百合が私のホローをする。
「なるほど。だったらマリーだけ野宿すればいいのよ」
何てことを言い出すのよ! 信じられないわ!
「菫、あなた何言ってるかわかってるの? そんな発想するのはあなただけよ。ねえ」
私は小百合と芽依それに四郎を見た。

 すぐに避難するはずの三人はなぜか私を見つめて黙っている。そして、
「その手があったか」
と小さな声が聞こえてきた。
「・・・・・・・・」

 静まりかえる雰囲気の中、私は軽く腕組みをすると頷きながら言った。
「わかったわ。私は野宿することにするわ。あなた方は宿でもホテルでも好きなところに泊まりなさい」
「やったー」
芽依が小さくガッツポーズをする。

「ただし、四郎は私と野宿よ」
「どうして四郎君が野宿なのよ!」
小百合と菫がほぼ同時に言った。
「四郎、まさか女性一人で野宿させたりしないわよねー」
「・・・・・・・・」
「この先に小さな村があるみたいね。あなたたちは早く行きなさい。私は四郎と初めての夜になるのね。楽しみだわー」

 誰も動かない。
「どうしたのよ? もうすぐ夜になるわ。早く行かないと宿泊できないわよ。予約取ってないんだから」
「・・・・・・・・」
「外で寝るのは危険だからこの車で寝ましょ。いいでしょ四郎? でも、もし私に変なことしたらちゃんと責任取ってよね♡」
「わ、私も野宿しようかな」
小百合が小さな声で言う。
「芽依もこの車で寝ようかな」

 しかし、意地でも意見を変えない人もいる。
「私はホテルに泊まるわよ。近くまで送ってよ」
「あまり村の近くへ行くと村人に顔を見られる可能性があるわ。すぐ近くだから歩いて行きなさい」
「近くってどれくらいよ」
「一キロくらいかしら?」
「十分遠いじゃない!」

「困ったわね。せめてワープゾーンが使えたら」
「それよ! どうして今回はワープゾーンを使わないわけ?」
小百合がとてつもない発見をしたように話した。
「あまり距離が遠いと使えないのよ。それに白の国王ホワイティアが張った結界のおかげで他国から白の国へのワープができない状態になってるわ」
「まさかと思うけど。黒の国や緑の国から白の国へのワープはできないってだけで、白の国の国内ではワープゾーンが使えるってことじゃないでしょうね」
「・・・・・・・・・・盲点だったわ」

 こうして私達は何の苦労もなく黒の国の国境付近に行くことができたのであった。
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