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第六十九話 史上最大のピンチ
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プルルル。
「何の音?」
芽依がめざとくスマホの音に気付く。
「あら、お姉ちゃんから電話だわ」
「もう、異世界のイメージが崩れることしないで!」
私は芽依を軽く無視して電話に出た。
「え? 本当? それは大変じゃない。それでどうすればいいの? わかったわ」
これは一大事ね。
「どうしたの?」
小百合が私の異変にいち早く気付く。
「少し厄介なことになったわ」
「厄介なこと?」
「そう、白の国が総攻撃を仕掛ける準備を始めたらしいの。今までにない規模らしいわ」
「本当に大変じゃない。それでどうするの?」
「黒の国を挟む形で緑の国があるわ。そこに援軍を頼んで黒の国を挟み撃ちにする作戦を考えているって言ってたわ」
「なるほど。両側から攻めれば白の国の戦力は半減するわけね」
「そこで私が緑の国に行って交渉することになったの」
「マリーが行っても何の役にも立たないじゃない」
「どういう意味よ!」
たまにまともな会話をしてきたかと思えばすぐこれよ。本当に小百合って嫌な性格だわ。
「そこで今から緑の国に行くことになったから大至急支度して」
「でも、白の国を横切る形で行くわけでしょ? 何日かかるのよ」
「それは大丈夫よ。乗り物を用意してくれるらしいわ」
「乗り物って何よ! 今まで苦労して歩いて来たのは何だったの!」
五月蠅い小百合は無視して、私達は迎えの乗り物が来る指定の場所で待機していた。
「来たわね」
空には大きな飛龍が舞っている。
「乗り物ってまさかあのドラゴンじゃないわよね」
「そうよ」
「そうよって」
空を旋回していた飛龍は私達の姿を見つけるとゆっくり降りてた。
「さあ、乗って」
「乗れって籠も何もないわよ」
「ひもが付いてるでしょ。それをしっかり握って」
「嘘でしょ! こんなの途中で落っこちるわよ!」
人間死にたくないと思うととんでもない能力を発揮するものね。飛龍はかなりのスピードで飛んでいたけど、全員無事に緑の国に着いたわ。
「何でこんな目に遭わなきゃ行けないのよ!」
私達が降りてくるのを確認したのか緑の国の人達が近寄ってくた。
「ピピプル・クレタ・ビチャ・○ンチ様でいらっしゃいますでしょうか。お待ちしておりました。どうぞお城へお越しください」
「ありがとうございます」
私は丁寧にお辞儀をすると城へと向かった。
城内の中央に位置する王の間へ案内されると、大きな椅子に緑の国王と妃が座っていた。その横には王子がいる。何で王子までいるのかしら?
「ようこそ緑の国へ。ウ○チ様」
「そこだけで呼ばれるのはちょっと。ピピプルでいいわ」
「これは失礼しました。では改めてピピプル様。どのような要件で来られたかはもう存じております。我が国としても全面的に協力する所存でおります」
「それは本当ですか? 感謝いたします」
私は喜びの声を上げた。これで黒の国を守れるわ。
「ただ、一つだけお願いがあります。条件と申し上げてもいいでしょうか」
「何でしょうか? できる限りのことはさせていただきます」
「そうですか。それは安心しました」
「それでどのようなお話でしょうか」
「実は我が王子も二十歳になりまして、そろそろ結婚を考えねばならなくなりました」
「いいお嫁さんを見つければいいのですね」
「いえ、王子には好きな女性がおりまして」
「だったら私は何をすればいいのでしょうか?」
「是非王子と結婚していただきたい」
「はい?」
「王子の好きな女性はピピプルさんあなたなのです」
「えええーーーーー!!!!!」
私はもちろんお供のみんなも大声を上げた。
「どうですか?」
「急にそんなこと言われても困ります」
「ここはとても豊かな国です。きっと幸せになると思いますし、あなたの黒の国も助けることができます。決して悪い話ではありませんよ。今日一日ゆっくり考えてください」
私達は来賓の間に通され今夜はこの城に泊まることになった。
「良かったじゃない。とてもめでたいわ」
「そうだよ。とてもイケメンな王子様だったよ。芽依、羨ましいなぁ」
「不細工な女性はさっさと結婚するべきよ。良かったわねえ」
こいつらしっかり喜んでるじゃない。こっちは史上最大のピンチだってのに。
「断る選択肢はないから、後はどれだけいい条件を引き出せるかよ」
小百合ったら何真剣な顔で言ってるのよ! 私はちらっと四郎を見た。
「誰が何と言おうと私の好きなのは四郎だけよ」
「そんなこと言っていいの? 黒の国民が酷い目にあってもいいの? 負けちゃったらお父さん、お母さん、お姉ちゃんも殺されるのよ」
嫌なところを攻めてくるわね。
「何とか明日までにいいアイデアを出してみせるわよ」
「無理ね。もう一千八百字を超えているわ。そろそろ締めないと」
「次回に続く出いいわよ」
「ダメよ。この話は一話読み切りが売りなんだから」
「今回は非常事態だからいいのよ!」
勝手に新ルールを作った私はそのまま瞑想に入るのであった。
「何の音?」
芽依がめざとくスマホの音に気付く。
「あら、お姉ちゃんから電話だわ」
「もう、異世界のイメージが崩れることしないで!」
私は芽依を軽く無視して電話に出た。
「え? 本当? それは大変じゃない。それでどうすればいいの? わかったわ」
これは一大事ね。
「どうしたの?」
小百合が私の異変にいち早く気付く。
「少し厄介なことになったわ」
「厄介なこと?」
「そう、白の国が総攻撃を仕掛ける準備を始めたらしいの。今までにない規模らしいわ」
「本当に大変じゃない。それでどうするの?」
「黒の国を挟む形で緑の国があるわ。そこに援軍を頼んで黒の国を挟み撃ちにする作戦を考えているって言ってたわ」
「なるほど。両側から攻めれば白の国の戦力は半減するわけね」
「そこで私が緑の国に行って交渉することになったの」
「マリーが行っても何の役にも立たないじゃない」
「どういう意味よ!」
たまにまともな会話をしてきたかと思えばすぐこれよ。本当に小百合って嫌な性格だわ。
「そこで今から緑の国に行くことになったから大至急支度して」
「でも、白の国を横切る形で行くわけでしょ? 何日かかるのよ」
「それは大丈夫よ。乗り物を用意してくれるらしいわ」
「乗り物って何よ! 今まで苦労して歩いて来たのは何だったの!」
五月蠅い小百合は無視して、私達は迎えの乗り物が来る指定の場所で待機していた。
「来たわね」
空には大きな飛龍が舞っている。
「乗り物ってまさかあのドラゴンじゃないわよね」
「そうよ」
「そうよって」
空を旋回していた飛龍は私達の姿を見つけるとゆっくり降りてた。
「さあ、乗って」
「乗れって籠も何もないわよ」
「ひもが付いてるでしょ。それをしっかり握って」
「嘘でしょ! こんなの途中で落っこちるわよ!」
人間死にたくないと思うととんでもない能力を発揮するものね。飛龍はかなりのスピードで飛んでいたけど、全員無事に緑の国に着いたわ。
「何でこんな目に遭わなきゃ行けないのよ!」
私達が降りてくるのを確認したのか緑の国の人達が近寄ってくた。
「ピピプル・クレタ・ビチャ・○ンチ様でいらっしゃいますでしょうか。お待ちしておりました。どうぞお城へお越しください」
「ありがとうございます」
私は丁寧にお辞儀をすると城へと向かった。
城内の中央に位置する王の間へ案内されると、大きな椅子に緑の国王と妃が座っていた。その横には王子がいる。何で王子までいるのかしら?
「ようこそ緑の国へ。ウ○チ様」
「そこだけで呼ばれるのはちょっと。ピピプルでいいわ」
「これは失礼しました。では改めてピピプル様。どのような要件で来られたかはもう存じております。我が国としても全面的に協力する所存でおります」
「それは本当ですか? 感謝いたします」
私は喜びの声を上げた。これで黒の国を守れるわ。
「ただ、一つだけお願いがあります。条件と申し上げてもいいでしょうか」
「何でしょうか? できる限りのことはさせていただきます」
「そうですか。それは安心しました」
「それでどのようなお話でしょうか」
「実は我が王子も二十歳になりまして、そろそろ結婚を考えねばならなくなりました」
「いいお嫁さんを見つければいいのですね」
「いえ、王子には好きな女性がおりまして」
「だったら私は何をすればいいのでしょうか?」
「是非王子と結婚していただきたい」
「はい?」
「王子の好きな女性はピピプルさんあなたなのです」
「えええーーーーー!!!!!」
私はもちろんお供のみんなも大声を上げた。
「どうですか?」
「急にそんなこと言われても困ります」
「ここはとても豊かな国です。きっと幸せになると思いますし、あなたの黒の国も助けることができます。決して悪い話ではありませんよ。今日一日ゆっくり考えてください」
私達は来賓の間に通され今夜はこの城に泊まることになった。
「良かったじゃない。とてもめでたいわ」
「そうだよ。とてもイケメンな王子様だったよ。芽依、羨ましいなぁ」
「不細工な女性はさっさと結婚するべきよ。良かったわねえ」
こいつらしっかり喜んでるじゃない。こっちは史上最大のピンチだってのに。
「断る選択肢はないから、後はどれだけいい条件を引き出せるかよ」
小百合ったら何真剣な顔で言ってるのよ! 私はちらっと四郎を見た。
「誰が何と言おうと私の好きなのは四郎だけよ」
「そんなこと言っていいの? 黒の国民が酷い目にあってもいいの? 負けちゃったらお父さん、お母さん、お姉ちゃんも殺されるのよ」
嫌なところを攻めてくるわね。
「何とか明日までにいいアイデアを出してみせるわよ」
「無理ね。もう一千八百字を超えているわ。そろそろ締めないと」
「次回に続く出いいわよ」
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