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第六十五話 雲ナビ
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私達の前には長い長い田舎道が果てしなく続いていた。
「ちょっとまだ次の村に着かないの?」
菫が不満をぶちまける。
「もうすぐよ。たぶん」
「たぶんてどういうこと? 後どれくらいで着くかわからないの?」
「こっちの方面に来たのは初めてだからわかるわけないでしょ?」
「地図くらいはあるんでしょうね?」
「地図なんてないわよ」
「じゃあ、この道であってるかどうかもわからないわけ?」
「それは大丈夫よ。ちゃんと調べてあるわ。この道はほぼ一本道で一箇所分かれ道があるだけだから、そこさえ間違えなければ大丈夫なはずよ」
「あなたのことだから間違えるに決まってるわ」
なぜか小百合と芽依が大きく頷いている。失礼ね。
「そんなに不安なら奥義を使ってあげるわよ」
「奥義?」
「そう、道案内の魔術よ」
私は短い呪文を唱え頭上で円を描くと小さな雲のような物が現れた。
「ブラウ村に案内して」
「目的地をブラウ村に設定しました。案内を開始します」
「カーナビか!」
小百合が思わずツッコミを入れる。
「これはパクリじゃないわ。千年以上昔からある魔術よ」
「嘘でしょ?」
「五キロ以上道なりです」
「あと、五キロも歩くの?」
菫がまたまた不機嫌な声を出す。
「よく聞いて。五キロ以上だから五キロか十キロか二十キロかわからないのよ」
「殺す気か!」
「三センチメートル先斜め左方向です」
「言うのが遅いわよ! 普通三百メートル先とかで言うでしょ!」
小百合ってこういう性格じゃなかったわよね。恐らくこの小説が彼女を変えたのね。
「あ、間違えました。まっすぐでした」
「曲がってから言うな!」
小百合のツッコミもここまで来ると芸術の域よね。
「仕方ないわよ。機械じゃないんだから」
「だったら何なのよ」
「雲よ」
「何で雲が喋るわけ?」
「そういう雲なのよ」
「訳がわからないわよ」
「三百メートル先引き返す方向です」
「また間違えたんかーい! てか何で三百メートル歩かせてから引き返すのよ!」
そしていよいよ分かれ道にやってきた。
「何も言わないわね」
「・・・・」
「どっちに行けばいいのよ」
「み、左方向です」
「今明らかに迷ったわよね」
「大丈夫です。二分の一の確率で当たります」
「適当か!」
思わず私までツッコんでしまった。
「もう、まだなの?」
菫は今にも座り込みそうな感じだ。
「まもなく目的地周辺です」
「やったー。着いたわ」
「目的地はこの先にあります。ダッシュしてください」
「よし行くわよー」
私達は嬉しさのあまり走り出した。
「この先が目的地の断崖絶壁です」
キキー!!!
「はーはーはー。危ないわね! もう少しで死ぬところだったわよ!!」
「軽い冗談です」
「どこが軽いのよ! これって冗談じゃすまされないレベルよね!!」
結局私達はいい加減なナビのせいで村には着けず野宿する羽目になるのだった。
「ちょっとまだ次の村に着かないの?」
菫が不満をぶちまける。
「もうすぐよ。たぶん」
「たぶんてどういうこと? 後どれくらいで着くかわからないの?」
「こっちの方面に来たのは初めてだからわかるわけないでしょ?」
「地図くらいはあるんでしょうね?」
「地図なんてないわよ」
「じゃあ、この道であってるかどうかもわからないわけ?」
「それは大丈夫よ。ちゃんと調べてあるわ。この道はほぼ一本道で一箇所分かれ道があるだけだから、そこさえ間違えなければ大丈夫なはずよ」
「あなたのことだから間違えるに決まってるわ」
なぜか小百合と芽依が大きく頷いている。失礼ね。
「そんなに不安なら奥義を使ってあげるわよ」
「奥義?」
「そう、道案内の魔術よ」
私は短い呪文を唱え頭上で円を描くと小さな雲のような物が現れた。
「ブラウ村に案内して」
「目的地をブラウ村に設定しました。案内を開始します」
「カーナビか!」
小百合が思わずツッコミを入れる。
「これはパクリじゃないわ。千年以上昔からある魔術よ」
「嘘でしょ?」
「五キロ以上道なりです」
「あと、五キロも歩くの?」
菫がまたまた不機嫌な声を出す。
「よく聞いて。五キロ以上だから五キロか十キロか二十キロかわからないのよ」
「殺す気か!」
「三センチメートル先斜め左方向です」
「言うのが遅いわよ! 普通三百メートル先とかで言うでしょ!」
小百合ってこういう性格じゃなかったわよね。恐らくこの小説が彼女を変えたのね。
「あ、間違えました。まっすぐでした」
「曲がってから言うな!」
小百合のツッコミもここまで来ると芸術の域よね。
「仕方ないわよ。機械じゃないんだから」
「だったら何なのよ」
「雲よ」
「何で雲が喋るわけ?」
「そういう雲なのよ」
「訳がわからないわよ」
「三百メートル先引き返す方向です」
「また間違えたんかーい! てか何で三百メートル歩かせてから引き返すのよ!」
そしていよいよ分かれ道にやってきた。
「何も言わないわね」
「・・・・」
「どっちに行けばいいのよ」
「み、左方向です」
「今明らかに迷ったわよね」
「大丈夫です。二分の一の確率で当たります」
「適当か!」
思わず私までツッコんでしまった。
「もう、まだなの?」
菫は今にも座り込みそうな感じだ。
「まもなく目的地周辺です」
「やったー。着いたわ」
「目的地はこの先にあります。ダッシュしてください」
「よし行くわよー」
私達は嬉しさのあまり走り出した。
「この先が目的地の断崖絶壁です」
キキー!!!
「はーはーはー。危ないわね! もう少しで死ぬところだったわよ!!」
「軽い冗談です」
「どこが軽いのよ! これって冗談じゃすまされないレベルよね!!」
結局私達はいい加減なナビのせいで村には着けず野宿する羽目になるのだった。
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