控えなさい! 私はマリーよ!

小松広和

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第五十五話 突然の脅迫状

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 ある日私達の所に一通の手紙が届いた。
「どういうこと? 旅先に手紙なんてあり得ないわ」
「確かにおかしいわね。とにかく開けてみましょう」

『悪いことは言わぬ。表の世界に帰れ。さもなくば後悔することになるだろう』
「これって脅迫状じゃない」
「そのようね」
「どうしていきなりこんなことを書いてきたのかしら?」
マリーは腕組みをして言った。

「私達が世直し旅をすると困る人物がいるってことね」
小百合が落ち着いた口調で言う。
「一体誰なのよ?」
「きっと闇の帝王だよ」
「そんなのいないわよ」
「じゃあラスボスだね」
「何で普通のボスが出てくる前にラスボスが出てくるのよ!」

「とにかく私達が危険な状況になったことには違いないわ」
「まあ、小百合の言うとおりね」
私達は手紙をテーブルに置いて無言になった。
「でもおかしくないか?」
「あら、四郎が意見を言うのって珍しいわね。で? 何がおかしいの?」

「ああ、この手紙を書いた人物は俺達がこの町にいるのを知っているってことだ」
「言われてみればそうね」
「次に俺たち三人が表の世界から来たことも知ってることになる」
「そうか。そう考えると私達の情報を知り尽くしている可能性があるわね」
「きっとストーカーだよ」

「変なこと言わないでよ、芽依」
「だって私達のことを調べ尽くしてるんでしょ?」
「だったら誰のストーカーよ」
「もちろん一番可愛い子が狙われていると考えるのが普通だけど今回はマリーさんだね」
「どうして当然のように『一番可愛い子』から私が外されているのよ!」
「それは一番可愛いのは芽依だからだよ」

「はいはい。それで私が狙われている根拠は?」
「この手紙には『表の世界に帰れ』て書いてあるからだよ。表の世界に帰ったらこの手紙の主も一緒に表の世界に行かなきゃいけないことになるよ」
「そうね」
「というわけでマリーさん心当たりは?」
「あるわけないでしょ!」
「でもマリーはプリンセスだしこの国で知らない人はいないんじゃないかな?」
「怖いこと言わないでよ、四郎」

「とにかく私達が危険になったのは間違いわいわ。帰りましょう、四郎」
「待ちなさいよ。世直し旅はどうするのよ」
「言いたいことはわかるけど危なすぎるわ」
「この手紙の差出人がストーカーだと決まったわけじゃないでしょ」
「闇の帝王だよ」
「それはないけど、単なるいたずらかもしれないし」

 その時ミーが突然テーブルに飛び乗ると脅迫状の匂いをクンクンと嗅いで小百合を見た。
「ん? 小百合がどうかしたの?」
「何よミー」
ミーが小百合の服を噛んで引っ張り始める。
「もしかしてこの手紙と小百合が関係あるの?」
「ニャー」

「まさかこの手紙を書いたのって小百合?」
「ち、違うわよ」
「そう言えばこの手紙って日本語だよな。それにこの筆跡」
「この手紙をフロントから預かってきたの小百合さんだよね」
「い!」

「な、何よ! 元の世界に帰ったらマリーもいなくなって四郎と恋人の関係に戻れると思っただけよ! 何がいけないの!」
絶体絶命のピンチを見事な逆切れで切り抜ける小百合であった。
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