控えなさい! 私はマリーよ!

小松広和

文字の大きさ
上 下
49 / 109

第四十九話 税金に苦しむ人々

しおりを挟む
 決して人が少ないわけではないけどやけに暗い町ね。町の中心にある広場に集まった人たちは談笑することなく黙々と働いている。これは何かあるわ。
「この町臭うわね」
私は振り向くと小百合に話しかけた。
「今日のお昼は何にしようかしら」
「芽依、鰻がいいな」
「それは贅沢だ」
「ちょっと! 私の話聞いてるの?」

「何のこと?」
小百合が欠伸をしながら聞いた。
「この町を見ておかしいと思わないの?」
「活気あふれた町じゃない」
「どこがよ!」
こいつら世直し精神に欠けてるわ。鍛えなおす必要があるようね。

「ところでマリー。もう昼だし食事にしないか?」
「芽依、鰻が食べたいよ」
「それは贅沢って言っただろ」
「じゃあ、ステーキでもいい」
「そんなものばかり食ってると腹に贅肉が付くぞ」

「おい、お前らさっきから聞いてれば禁句ばかり並べやがって」
変なのが現れたわね。やや肉付きのいいおっさんて感じだわ。
「禁句って何よ?」
「この町では『ぜい』は言ってはいけない禁句なんだよ」
「何か深い意味がありそうね。聞いてあげるわ。説明しなさい」

「ふん、どこの骨だかわからねえ連中に話しても仕方ねえよ。とっとと消えな」
「あ、そう?」
「いたたたたた、す、すみませんでした。説明させていただきます」
「最初からそう言えばいいのよ」
「実はこの町では年々税金が上がっているのです。三年前の五倍にもなってしまいました。ですからいくら働いても暮らしは楽になりません」

「マリー!」
「な、何よ知らないわよ」
疑いの眼差しで見つめる三人。もう何よ四郎まで。
「どうして税金が上がり続けているの?」
「さあ、何の説明もありません。税金を払わないと逮捕されてしまうのでみんな仕方なく払っています」
「許せないわ!」

 何か悪政に苦しめられている感じね。
「この町の政治形態はどうなってるの?」
「はい、世襲性の王様が専制政治をしております」
「王を名乗ってるのね。わかったわ。私に任せなさい。その王を懲らしめてあげるわ」
「お、お願いします」

 私達は教えてもらったとおり進むと大きな城が見えてきた。
「いつの間にこんな大きな城を建てたのよ。油断も隙もないわね」
門番をねじ伏せ無理矢理城の中へ入ると、予想通り私達は家来達に囲まれてしまった。
「やはり懲らしめる必要があるようね。やってしまいなさい」

「はは―」
「何でいきなり王家の紋章出してるのよ!」
「戦うだけ時間の無駄かなって。勝てるかどうかもわからないし」
もう、四郎ってKYなのかしら?

「ここで王を名乗っているのは誰?」
「わ、私で御座います」
「こんな大きな城をいつの間に建てたの? ピピプル家に許可は取ったの?」
「いえ、取っておりませぬ」
「もう、おしまいね。この町はお取り潰しよ」
「どうかお許しください」

「もっと許せないことがあるわ」
「何でございましょう」
「税金よ。三年前の五倍になってるそうね」
「はい、大変申し訳ございません」
「これだけ多く税金を取ってるのなら、普通ピピプル家にも多く収めるでしょう」
「怒りの対象はそっちかーい!!!」
小百合の叫びによってピピプル家は予定外の税金を取り損ね、この国の税金は元に戻ったのだった。少し残念だけど。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

元皇帝は平和な世の中にしたと思ったけどまだまだ悪者が潜んでいるので家出したついでに成敗致す

瑞沢ゆう
ファンタジー
 息子に皇帝の座を譲り、自由気ままな引退生活を楽しむ筈だった元皇帝ライアン・ザルツ。  しかし、彼を待っていた引退生活はそんな生易しいものでは無かった。  息子には荷が重いからと大臣達が持って来る書類の山。そして、相談と称して仕事を押し付けようとする息子。そんな日々に、とうとうライアンはキレた。 「ふざけるな!! 俺は引退したんだ! これから旅に出る!」  こうして、ライアンの諸国を漫遊する世直し旅が始まる。 ※とりあえず短編にして公開しました。 ※なろう様でも投稿しています。 

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

処理中です...