控えなさい! 私はマリーよ!

小松広和

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第四十九話 税金に苦しむ人々

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 決して人が少ないわけではないけどやけに暗い町ね。町の中心にある広場に集まった人たちは談笑することなく黙々と働いている。これは何かあるわ。
「この町臭うわね」
私は振り向くと小百合に話しかけた。
「今日のお昼は何にしようかしら」
「芽依、鰻がいいな」
「それは贅沢だ」
「ちょっと! 私の話聞いてるの?」

「何のこと?」
小百合が欠伸をしながら聞いた。
「この町を見ておかしいと思わないの?」
「活気あふれた町じゃない」
「どこがよ!」
こいつら世直し精神に欠けてるわ。鍛えなおす必要があるようね。

「ところでマリー。もう昼だし食事にしないか?」
「芽依、鰻が食べたいよ」
「それは贅沢って言っただろ」
「じゃあ、ステーキでもいい」
「そんなものばかり食ってると腹に贅肉が付くぞ」

「おい、お前らさっきから聞いてれば禁句ばかり並べやがって」
変なのが現れたわね。やや肉付きのいいおっさんて感じだわ。
「禁句って何よ?」
「この町では『ぜい』は言ってはいけない禁句なんだよ」
「何か深い意味がありそうね。聞いてあげるわ。説明しなさい」

「ふん、どこの骨だかわからねえ連中に話しても仕方ねえよ。とっとと消えな」
「あ、そう?」
「いたたたたた、す、すみませんでした。説明させていただきます」
「最初からそう言えばいいのよ」
「実はこの町では年々税金が上がっているのです。三年前の五倍にもなってしまいました。ですからいくら働いても暮らしは楽になりません」

「マリー!」
「な、何よ知らないわよ」
疑いの眼差しで見つめる三人。もう何よ四郎まで。
「どうして税金が上がり続けているの?」
「さあ、何の説明もありません。税金を払わないと逮捕されてしまうのでみんな仕方なく払っています」
「許せないわ!」

 何か悪政に苦しめられている感じね。
「この町の政治形態はどうなってるの?」
「はい、世襲性の王様が専制政治をしております」
「王を名乗ってるのね。わかったわ。私に任せなさい。その王を懲らしめてあげるわ」
「お、お願いします」

 私達は教えてもらったとおり進むと大きな城が見えてきた。
「いつの間にこんな大きな城を建てたのよ。油断も隙もないわね」
門番をねじ伏せ無理矢理城の中へ入ると、予想通り私達は家来達に囲まれてしまった。
「やはり懲らしめる必要があるようね。やってしまいなさい」

「はは―」
「何でいきなり王家の紋章出してるのよ!」
「戦うだけ時間の無駄かなって。勝てるかどうかもわからないし」
もう、四郎ってKYなのかしら?

「ここで王を名乗っているのは誰?」
「わ、私で御座います」
「こんな大きな城をいつの間に建てたの? ピピプル家に許可は取ったの?」
「いえ、取っておりませぬ」
「もう、おしまいね。この町はお取り潰しよ」
「どうかお許しください」

「もっと許せないことがあるわ」
「何でございましょう」
「税金よ。三年前の五倍になってるそうね」
「はい、大変申し訳ございません」
「これだけ多く税金を取ってるのなら、普通ピピプル家にも多く収めるでしょう」
「怒りの対象はそっちかーい!!!」
小百合の叫びによってピピプル家は予定外の税金を取り損ね、この国の税金は元に戻ったのだった。少し残念だけど。
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