控えなさい! 私はマリーよ!

小松広和

文字の大きさ
上 下
33 / 109

第三十三話 押しちゃダメよ! 絶対に押しちゃダメよ!

しおりを挟む
 特別警戒地域。ここは白の国との国境。今、私達黒の国と白の国はいがみ合っているの。いつ本格的な戦争に突入してもおかしくないわ。なぜこんな状況になっているかというと、白の国が悪いのよ。ちょっと私達黒の国が不法に白の国の領地を奪ったくらいで目くじら立てるのって、おかしくない? しかも白の国の全領土のちゃたった三分の一よ。

「絶対お前達が悪い」
「何か言った? 四郎」
「いえ、何も」

 私達は国境にある大きな建物へと入った。ここは最前線の指揮を執る基地よ。いざという時はこの建物が拠点となるわ。
「今日は特別にこの建物を案内してあげるわ。次期国王である私だからできることよ。感謝しなさい」

「何か異世界には似つかわしくない建物よね。完全にビルじゃない」
「当然よ。すぐに壊される建物じゃ困るわ」
「でも、これじゃ表の世界と変わらないよ」
「芽依まで何言ってるの。つべこべ文句を言わない」

「この部屋は最高指揮官室よ」
「これはこれはピピプル・クレタ・ビチャ・ウン○様。お久しぶりです」
「あら、ネグロ大佐、久しぶりね。元気だった?」
「はい、おかげさまで元気に任務に付かせていただいております」
「そう? 最近は白の国もちょっかいを出してこないみたいね」
「はい、何の動きもありません。平和そのものです」

「この人がネグロ大佐。ここの最高指揮官よ」
「ネグロです。よろしく」
「私は世直し旅のお供をしております小百合です。そして私の恋人の四郎にその妹の芽依です」
「ちょっと自己紹介がおかしいわよ」
油断も隙もないわね。

 そこへ一人の女性が入ってきた。
「ネグロ大佐。少しお話がございます」
「わかった。すみません。ちょっと席を外させていただきます。どうぞ、ごゆっくり」

「ネグロ大佐って格好いいわね。いかにも指揮官て感じで」
「ネグロ大佐の直属の上司は私よ。どう? ちょっとは尊敬したかしら?」
「上司に恵まれなかったのね」
「どういう意味よ!」

「それにしてもこの部屋いっぱいのモニターがあるね」
「芽依、いいところに気付いたわね。それはスパイ達から送られてくる映像よ。どれも機密情報だわ」
「大きなボタンもあるわね」
「小百合、そのボタンは絶対に押しちゃダメよ。大変なことになるわ」
「大変なことって、どうなるのよ?」

「このボタンは非常事態を告げるボタンなの。これを押すと第一級の攻撃態勢に入って、ここに常駐する特等兵達が一斉に白の国を攻撃することになるわ」
「ふーん」
「そうしたら責任者である私は軍法会議にかけられて下手をすれば死刑よ。四郎とも結婚できなくなるわ」
ポチッ!
「ちょっと小百合! 何ボタン押してるのよ!」

『緊急事態発令! 緊急事態発令! 総員直ちに戦闘態勢に入れ!』
「ちょっと待って!」
『第一種攻撃班、白の国を強力魔術で攻撃せよ』
『ダメよ!』

「これは一体どういうことだ」
ネグロ大佐が大慌てで入ってきた。
「ち、違うの。これはこいつが押して」
「誰が押そうと関係ありません。責任者はビチャ・○ンチ様ですから」
「ええーーー!!!」

『敵前線部隊の一部を壊滅。報復攻撃に備えてください』
モニターには破壊された建物が映っている。
「この責任はどうとられるおつもりですか?」
「責任て言われても・・・・」
「そうだ、このことを一刻も早くピピプル・クレタ・ビチャ・シッコ様に報告せねば」
「お願い! お姉ちゃんにだけは言わないで!」

「軍法会議の準備も必要だわ」
「本当に本当にごめんなさい!」
『敵軍の最強レベルの砲撃あり、着弾まであと十秒。着弾に備えてください!』
「ど、ど、どうしよう」
「何かに捕まって体を低くするんだ!」
「た、助けてー!」

シーン。
「何も・・・・起こらない・・・・わね」
「これはスパイが来ることを想定したダミーのボタンです。映像も全て偽物ですのでご安心ください」
「何よ! もう!」

「マリーの真剣に慌てる姿を見るのって最高よねぇ」
小百合は満面の笑顔でそっと下を向くのであった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。

みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

処理中です...