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第三十二話 記念のアルバム
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私は部屋の窓辺に座って思い出にふけっていた。今日はどこにも行かずゆっくりしたい気分だわ。
「出発しないわけ?」
また小百合ね。本当に情緒に欠ける女だわ。
「今日はゆっくりしましょう」
「私達は世直し旅をしているんでしょ? ゆっくりって何よ」
「たまには一日中、宿にいるのもいいじゃない」
「何を勝手に決めてるわけ? 本当に我が儘なんだから」
「うるさいわね。私は思い出に浸っているの。静かにしてくれないかしら?」
「さっきから何を見てるのよ」
「アルバムよ。思い出に浸るならこれが一番よ」
私はアルバムをめくるとにこりと微笑んだ。本当に懐かしいわ。
「あなた、アルバムなんて持ち歩いてたの?」
「この世界には紙媒体の写真なんて存在しないわ。あなたたちの世界を真似て昨夜作ってみたの」
「『作ってみたの』って、そんな簡単に作れるわけ?」
「私にかかればこんなの朝飯前よ」
私は再びページをめくると必要以上に微笑んだ。
「ちょっと私にも見せてよ」
「いいわ。特別に見せてあげる」
ふふふ、引っかかったわね。
「これは私の幼少期の写真よ。可愛いでしょ?」
「う! 確かに可愛いわね」
「そして、これが小学校低学年かしら」
「へえ、本当に美少女だったんだな」
四郎も見に来た。へへ、作戦成功よ。
「こっちは四郎と初めて会った時の写真よ。そしてこれがツーショット写真。どう? ラブラブでしょ?」
「四郎君! いつの間にこんな写真撮ってたのよ!」
「俺は知らんぞ!」
「小百合は四郎との写真は持ってないの?」
「え!? そう言えば持ってない」
「よく聞こえないわ。もっと大きな声で言ってくれるかしら?」
「持ってない・・・・わよ」
悔しそうに下を向く小百合。これよこれ。この悔しがる顔を見たかったのよ。
「あれ? 四郎ことを彼だの恋人だのって言ってたのに写真も撮ってないわけ?」
「うう・・・・」
やったわ。完全勝利よ。
「芽依はお兄ちゃんとの写真、たくさん持ってるよ」
「兄妹なんだから当たり前じゃない!」
私は芽依を無視して続けた。
「これは四郎と初めて話した時の写真よ」
体育館裏が映っている。
「こんな写真、いつ撮ったんだ?」
四郎が首を傾げながら写真を眺めた。
「あら? 小百合どうしたの? 顔色が良くないわ。ショックなことでもあったのかな?」
日頃の恨みよ。もっともっと落ち込みなさい。
「そしてこっちがベッドで寝る私と四郎よ」
「四郎君! これってどういうこと!」
「俺は知らん!」
慌てて全否定する四郎。小百合は日本刀を出す準備を始めている。
「ちょっと待って。あなたって四郎のベッドで寝ていた時は尻尾アクセサリーの格好だったはずよね」
「それがどうしたのよ。どんな格好でも同じことよ」
「全然違うわよ! あれ? じゃあこの写真は何?」
「私と四郎のスイートメモリーよ」
「私は言いたいのはあなたも寝ているのに、どうやってこの写真を撮ったかってことよ」「それは・・・・」
「まさかと思うけど、これって実際の写真じゃなくて偽物?」
「偽物なんかじゃないわよ。私のイメージ写真よ」
「それを偽物って言うのよ!」
もう少しで小百合を再起不能にまで落ち込ませることができたのに・・・・悔しい!
人を騙すことに何の罪悪感も感じない私であった。
「出発しないわけ?」
また小百合ね。本当に情緒に欠ける女だわ。
「今日はゆっくりしましょう」
「私達は世直し旅をしているんでしょ? ゆっくりって何よ」
「たまには一日中、宿にいるのもいいじゃない」
「何を勝手に決めてるわけ? 本当に我が儘なんだから」
「うるさいわね。私は思い出に浸っているの。静かにしてくれないかしら?」
「さっきから何を見てるのよ」
「アルバムよ。思い出に浸るならこれが一番よ」
私はアルバムをめくるとにこりと微笑んだ。本当に懐かしいわ。
「あなた、アルバムなんて持ち歩いてたの?」
「この世界には紙媒体の写真なんて存在しないわ。あなたたちの世界を真似て昨夜作ってみたの」
「『作ってみたの』って、そんな簡単に作れるわけ?」
「私にかかればこんなの朝飯前よ」
私は再びページをめくると必要以上に微笑んだ。
「ちょっと私にも見せてよ」
「いいわ。特別に見せてあげる」
ふふふ、引っかかったわね。
「これは私の幼少期の写真よ。可愛いでしょ?」
「う! 確かに可愛いわね」
「そして、これが小学校低学年かしら」
「へえ、本当に美少女だったんだな」
四郎も見に来た。へへ、作戦成功よ。
「こっちは四郎と初めて会った時の写真よ。そしてこれがツーショット写真。どう? ラブラブでしょ?」
「四郎君! いつの間にこんな写真撮ってたのよ!」
「俺は知らんぞ!」
「小百合は四郎との写真は持ってないの?」
「え!? そう言えば持ってない」
「よく聞こえないわ。もっと大きな声で言ってくれるかしら?」
「持ってない・・・・わよ」
悔しそうに下を向く小百合。これよこれ。この悔しがる顔を見たかったのよ。
「あれ? 四郎ことを彼だの恋人だのって言ってたのに写真も撮ってないわけ?」
「うう・・・・」
やったわ。完全勝利よ。
「芽依はお兄ちゃんとの写真、たくさん持ってるよ」
「兄妹なんだから当たり前じゃない!」
私は芽依を無視して続けた。
「これは四郎と初めて話した時の写真よ」
体育館裏が映っている。
「こんな写真、いつ撮ったんだ?」
四郎が首を傾げながら写真を眺めた。
「あら? 小百合どうしたの? 顔色が良くないわ。ショックなことでもあったのかな?」
日頃の恨みよ。もっともっと落ち込みなさい。
「そしてこっちがベッドで寝る私と四郎よ」
「四郎君! これってどういうこと!」
「俺は知らん!」
慌てて全否定する四郎。小百合は日本刀を出す準備を始めている。
「ちょっと待って。あなたって四郎のベッドで寝ていた時は尻尾アクセサリーの格好だったはずよね」
「それがどうしたのよ。どんな格好でも同じことよ」
「全然違うわよ! あれ? じゃあこの写真は何?」
「私と四郎のスイートメモリーよ」
「私は言いたいのはあなたも寝ているのに、どうやってこの写真を撮ったかってことよ」「それは・・・・」
「まさかと思うけど、これって実際の写真じゃなくて偽物?」
「偽物なんかじゃないわよ。私のイメージ写真よ」
「それを偽物って言うのよ!」
もう少しで小百合を再起不能にまで落ち込ませることができたのに・・・・悔しい!
人を騙すことに何の罪悪感も感じない私であった。
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