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第三十一話 営業妨害

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 未成年の身分で酒場に潜入することに成功した私達は、世直しに必要な情報を入手すべく行動を開始した。まあ、お酒を飲んでも合法なんですけど。

 あちらこちらで様々な会話が聞こえてくるが、今ひとつ聞き取れない。
「小百合、ちょっと近くへ行って聞いてきなさいよ」
「嫌よ。怖いじゃない」
「もう仕方がないわね。じゃ、芽依が行きなさい」
「芽依はこの中では一番酒場に似合わないキャラだよ。マリーさんが適任だよ」
「嫌よ。酔っ払った男ばかりじゃない。次期女王様にもしものことがあったらどうする気?」

 私達がもめていると一人の大男が話しかけてきた。
「こんな所に若い姉ちゃん達がいるとは珍しいな。どうだい、あちらで俺達と飲まないか? おごるぜ」
見るからに荒くれ者とわかるその男は小百合の手を引っ張った。
「止めてください!」
小百合は怯えた仕草で男の手を払いのけようとしている。

 ん? これは使えるわね。小百合を生け贄にすれば情報を聞き出せるばかりか、万が一小百合の身に危険が及ぶ事態になったとしても、小百合駆除になるじゃない。
「小百合、そんなに嫌がってたら失礼だわ。行ってお話をしてきなさい」
「何でそうなるの? だったらマリーも来なさいよ」
「私まで行ったら、このメンバーが寂しがるじゃない」

 小百合は大男に向かって行った。
「この娘も行った方がいいわよね?」
「おめえさんだけで十分だ」
「どうして?」
「この中では、おめえさんがダントツの美人じゃねえか」

 私のこめかみがピクリと動く。
「ちょっと、今の言葉聞き捨てならないわね」
私は腕組みをして大男を睨み付けた。私より小百合の方が美人ですって! 絶対許さないんだから。

「何だ? 本当のことを言ったらいけねえってのか?」
「そんなことを言うからには、相当の覚悟はあるんでしょうね?」
「はあ? おめえみてえなチビに何ができるってんだ?」

 私が大きく腕を上げると四郎と芽依が必死に私を止めに来た。
「私の最大級の黒魔術をお見舞いするわ。覚悟なさい!」
私の言葉を聞くと四郎達は慌てて机の下の隠れた。避難訓練かっての?

「えーい!」
私が大きな声を上げると、店中に大量の土鍋が降り注がれた。
「お、お客様。おやめください。営業妨害になります」
店員の忠告も聞かず土鍋を降り注ぎ続けると全ての客が土鍋で埋め尽くされてしまった。どうよ。私の必殺の黒魔術は。
「はっきり言って必殺としてはショボいぞ!」
「四郎、何か言った?」
「いえ、何でもありません」 

 その後、私の黒魔術が強力すぎたのか、この店では定期的に土鍋が降り注がれるようになってしまったため、この店で飲む時はヘルメット着用が義務られたそうよ。本当に営業妨害になっちゃったかしら?

 しかし、世の中どう転ぶかわからないものね。このことが報道されてから『土鍋が降る店』として栄えたそうよ。これって私のおかげよね。
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