控えなさい! 私はマリーよ!

小松広和

文字の大きさ
上 下
18 / 109

第十八話 妖精の森

しおりを挟む
 大きな森の手前で私は立ち止まった。できればこの森は避けて通りたいわね。
「マリー、どうしたのよ?」
「あまり気が進まないのよね」
「何の話よ」
「この森は通りたくないって言ってるのよ」
「あなたがここを通らないと次の村に行けないって言い出したんじゃない!」
小百合が私に怒鳴る。ふん、何も知らないくせに。

「後悔しても知らないわよ」
「だから何なのよ! わかりやすく説明しなさいよ」
「ここは妖精の森なの。妖精達がたくさん住んでいるわ」
「芽依、妖精さん大好きだよ」
妖精が可愛いのはお伽話だけよ。会えばすぐに後悔するわ。

 私達が森に入ると早速可愛い声で挨拶をしてくる妖精に出会った。
「こんにちは」
もちろん視線は四郎に向かっている。
「あ、こんにちは」
四郎は照れた顔で答える。

 妖精と言えば掌にのるサイズで羽が生えているように思うかもしれないけど、ここの妖精はほぼ人間サイズなのよね。しかも謙虚で従順ぽさを醸し出しているわ。優柔不断な男ならイチコロよ。

「どこから来たんですか?」
妙に馴れ馴れしい妖精が四郎に話しかけてきたわね。
「ええー凄い! 世直しの旅をしているんですか? かっこいいです!」
四郎の顔がデレデレになってきてる。まずいわね。
「私もその話が聞きたいわ」
また一匹来たわ。

「何なのこの妖精?」
小百合が不機嫌な顔で言う。
「だから言ったでしょう。ここには来たくないって」
「どういうこと?」
「この森の妖精は全員男好きなのよ。男が森に来ると全力で口説きに来るわ」
「何でそんな重要なことを先に言わないのよ」
「そうだよ。ここの妖精さんて芽依が思ってたのと違うよ」

 いつの間にか四郎の周りに五匹ほどの妖精が集まっている。
「マリー、この先に泉があるそうだから水筒に水を入れてくるよ」
「ダメよ。一人で行ったら。私も行くわ」
私が歩き出そうとすると妖精達が私の前に立ちはだかった。
「あら、すぐ近くだから大丈夫ですわ」
「ちょっと退きなさいよ」

 妖精達は私達をブロックするように立ち塞がる。やがて四郎がいなくなるのを確認すると低い声で言った。
「お前らは来なくていいんだよ」
「ええ! 態度が急変したよ!」
「そうよ芽依。ここの妖精が優しいのは男の前だけ。いなくなるとこの通りよ」
「これじゃ芽依のクラスメイトの高橋由香里ちゃんと同じだよ」
「あなた以外誰もわからない具体例を出してどうするのよ!」

「それにしても遅いわね。あなたたち退きなさい」
「ダメよ。あの男は私達のもの。諦めな」
しかし、妖精は弱い。私が軽く頭をはたくとすぐにうずくまってしまう。
「じゃあ、芽依もポンと」
私達を止めていた妖精は全員頭を抱えてしゃがみ込んだ。

 私達が泉に着くと・・・・
「私も四郎様の背中を流したーい」
「次は私よ」
「俺ばかり流してもらったら悪いから俺も背中を流してやるよ。服を脱ぎなよ」
「やだ! 恥ずかしい」
むむむむむむむむむ!!!!!
「大激怒ーーーーー!!!」
こうして妖精達と共に四郎も退治されるのであった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

白い結婚をめぐる二年の攻防

藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」 「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」 「え、いやその」  父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。  だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。    妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。 ※ なろうにも投稿しています。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

悪役令嬢への未来を阻止〜〜人は彼女を女神と呼ぶ〜〜

まさかの
恋愛
この国の始祖である一族として、何不自由無く生きてきたマリアは不思議な夢の中でいきなり死の宣告を受けた。 夢のお告げに従って行動するが、考えなしに動くせいで側近たちに叱られながらも、彼女は知らず知らずのうちに次期当主としての自覚が芽生えていくのだった。 一年後に死ぬなんて絶対にいや。 わたしはただカッコいい許嫁と逢瀬を楽しんだり、可愛い妹から頼られたいだけなの! わたしは絶対に死にませんからね! 毎日更新中 誤字脱字がかなり多かったので、前のを再投稿しております。 小説家になろう、ノベルアップ+、マグネットでも同小説を掲載しております

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

処理中です...