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第十三話 地獄の峠越え

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 私達は戸惑っていた。これから目指す村へ行くには目の前の長い峠を越えなくてはいけないのだ。
「こんな長い峠を越えるなんて無理よね」
「断崖絶壁を登らせた人が何言ってるのよ」
小百合がため息をつく。

「峠を越えるんじゃなくて山を迂回すればいいんだよ」
「それがこのコースを行かないともの凄い周り道になるのよ」
「でも、その方がいいよ」
芽依は必死だ。
「四郎はどう思う?」
「迂回路で行こう」
「でも、三十倍遠くなるわよ」
「・・・・・・・・」
全員が黙った。

「じゃあ、峠を行くわよ」
マリーは先頭を切って歩き出す。
「それにしても長い峠ね。何か息苦しい気もするわ」
「それはそうよ。標高四千メートルはあるからね」
「富士山より高いじゃない!」
「このペースで登ったら高山病になるから気をつけるのよ」
「もっと早く言わんかい!」

 頂上付近に到達する頃には全員グロッキーになっていた。
「当然かもしれないけど全く植物がないわね」
そこには石と青っぽい土があるだけだ。殺風景とはまさにこのことよね。そして空には大きな鳥らしきものが飛んでいる。
「こんな所にも鳥がいるのね」
小百合が上空を見上げて言った。
「標高四千メートルに鳥がいるわけないじゃない」
「え? でも飛んで・・・・」
「あれは飛龍よ」
「ドラゴンなの?」
「そうよ」

 高く飛ぶ飛龍はちらちらっと様子を窺っている気がする。
「気をつけなさい。飛龍は肉食よ。急に襲ってくるから」
「どうするのよ!」
「大丈夫、私の魔術でバリアを張るわ。いくら飛龍でもバリアは破れなから」
「だから私と芽依もバリアに入れなさいよ!」
「ごめんない。これ二人用なの」
「嘘つけー!!」

 小百合と芽依は何とか飛龍を追い返すことに成功したみたいね。チッ!
「マリー! いい加減にしなさいよ!」
「仕方ないじゃない。あなたたちがいなくなれば四郎と二人きりでラブラブ世直し旅ができることに気付いちゃったんだもの」
「それは前に聞いたわよ。同じギャグを使い回すんじゃないわよ!」
「それは作者に言いなさい」

「さあ、後は下りだけよ。早く行きましょ!」
しかし、四郎が動こうとしない。どうしたのかしら?
「悪い。目眩が酷いんだ。もう少しだけ休ませてくれ」
「高山病にでもなったのかしら? 仕方ないわね。私が膝枕をしてあげるからゆっくろ休むといいわ」
「それは恋人である私の役目よ」
「芽依がするよ。お兄ちゃんのことは一番わかってるから」

「いえ、それなら助けていただいたお礼に私がさせていただきます」
「何であんたがいるのよ!」
この前助けた超美人が何気に四郎に寄り添っている。
「名前もないちょい役のモブのくせにいつまでいるのよ!」
「私の名前は」
「あーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「急に大きな声を出さないでください。名前が聞こえないじゃないですか?」
「ここで名前を言われたら、登場キャラが一人増えそうな予感がするわ」
マリーは強引に新たな登場キャラを消し去るのであった。
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