9 / 109
第九話 国技
しおりを挟む
「大きなスタジアムね-」
「この街のスタジアムは国内一よ。横にはこれまた国内一の体育館もあるわ。よく全国大会や国際大会が行われるのでも有名よ」
私たちがスタジアムの周りを歩いていると大きな垂れ幕を見つけた。
『ちゃぶ台返し全国大会決勝』
「うわー、ちゃぶ台返しの全国大会決勝があるんだ。見たいわねぇ」
「何よ。ちゃぶ台返しって?」
「ちゃぶ台も知らないの?」
「ちゃぶ台は知ってるわよ。ちゃぶ台返しの決勝って何か聞いてるのよ」
「ちゃぶ台に乗った茶碗や皿をどれだけ広範囲に飛ばせるかを競う競技よ。距離や面積それに散らばり方の芸術点で勝敗が決まるの。ああ、あと『こんな飯が食えるかー!』の声の良さも得点に影響するわ」
「何か社会問題になりそうな競技ね」
「あら? ちゃぶ台ってあなたの国から来た物よ。何で知らないのよ」
「ちゃぶ台の使い道を間違ってるからよ!」
更にもっと凄いポスターを見つけてしまった。
「テイクロ決勝トーナメント本日開催!」
「えー! テイクロもやるんだー。いいなー」
「今度は何よ。また変なスポーツ?」
「変なスポーツとは何よ。テイクロは昔からある黒の国の国技よ」
「一応聞いてあげるけどテイクロってどんな競技なの?」
「通常は八対八で行う団体戦よ。早く敵の大将の服を全て脱がすことができたら勝ちよ」
「こちらの方が社会問題になりそうな競技だったわ」
「女子の競技は無観客で行うことが多いわ」
「当たり前じゃない!」
「テレビ放送もあまりされないのよね」
「ていうか、放送されることもあるんかい!」
「もちろんよ。でもクライマックスになるとぼかしが多くてよく見えないのが残念なのよねぇ」
私はスタジアムを見つめてぼそりと言った。
「見たいけど、どう考えても今からじゃチケットが取れないわよね」
「今日は無観客じゃないのね」
小百合が蔑んだ目で私を見ている。
「仕方ないわね。王家の紋章を使うか」
「ダメよ! そんなことに使うなんて信じられないわ」
「そうだよ! それに芽依は見たくないし!」
「四郎は反対しないみたいね。女子の試合もあるみたいだけど」
「も、も、も、もちろん・・・・見たく・・・・ない」
「声が小さいわね」
「四郎君!」
「お兄ちゃん!」
私が諦めて帰ろうとしたとき大事件が起こった。
「ちょっと嘘でしょう?」
男女七人が四郎を見るなり叫んだのだ。
「この人クロッシュにそっくりじゃない?」
「ああ、本当だ。これほど似てる人を見たことないよ」
何やら勝手に盛り上がっている。
「私たちはこの大会に参加する予定のチームよ。でも、メンバーの一人が遅刻してまだ来てないの。せっかく全国大会に出場できたというのに、このままでは不戦敗になってしまうわ。ここまで来て戦わずして帰るなんて嫌よ。あなた替え玉で試合に出てくれない?」
「ええー! だ、ダメだ! それって違反行為だろ?」
「もちろんよ。でもこれだけ似ていればきっとばれないわ」
「断る!」
「お願い。ただ立ってるだけでいいから」
四郎が困ってるわ。ここは私が止めてやらないといけないわね。
「ちょっといいかしら? 彼は私のフィアンセよ。勝手に話を進めないでほしいわ」
「もし彼が出てくれたら、あなたたちは特等席で試合が見られるわよ」
「四郎、出なさい」
「マリー!」
こうして四郎は見ず知らずの七人組に連行されていくのであった。
「こら、離せ!」
「私たちが出るのは男女混合戦よ。相手の大将は女性だけどテレビ放送もするみたいだから絶対にニヤけた顔はしないでよね」
「嫌だーーーーー!!!」
これはこれで複雑な心境だわ。
「この街のスタジアムは国内一よ。横にはこれまた国内一の体育館もあるわ。よく全国大会や国際大会が行われるのでも有名よ」
私たちがスタジアムの周りを歩いていると大きな垂れ幕を見つけた。
『ちゃぶ台返し全国大会決勝』
「うわー、ちゃぶ台返しの全国大会決勝があるんだ。見たいわねぇ」
「何よ。ちゃぶ台返しって?」
「ちゃぶ台も知らないの?」
「ちゃぶ台は知ってるわよ。ちゃぶ台返しの決勝って何か聞いてるのよ」
「ちゃぶ台に乗った茶碗や皿をどれだけ広範囲に飛ばせるかを競う競技よ。距離や面積それに散らばり方の芸術点で勝敗が決まるの。ああ、あと『こんな飯が食えるかー!』の声の良さも得点に影響するわ」
「何か社会問題になりそうな競技ね」
「あら? ちゃぶ台ってあなたの国から来た物よ。何で知らないのよ」
「ちゃぶ台の使い道を間違ってるからよ!」
更にもっと凄いポスターを見つけてしまった。
「テイクロ決勝トーナメント本日開催!」
「えー! テイクロもやるんだー。いいなー」
「今度は何よ。また変なスポーツ?」
「変なスポーツとは何よ。テイクロは昔からある黒の国の国技よ」
「一応聞いてあげるけどテイクロってどんな競技なの?」
「通常は八対八で行う団体戦よ。早く敵の大将の服を全て脱がすことができたら勝ちよ」
「こちらの方が社会問題になりそうな競技だったわ」
「女子の競技は無観客で行うことが多いわ」
「当たり前じゃない!」
「テレビ放送もあまりされないのよね」
「ていうか、放送されることもあるんかい!」
「もちろんよ。でもクライマックスになるとぼかしが多くてよく見えないのが残念なのよねぇ」
私はスタジアムを見つめてぼそりと言った。
「見たいけど、どう考えても今からじゃチケットが取れないわよね」
「今日は無観客じゃないのね」
小百合が蔑んだ目で私を見ている。
「仕方ないわね。王家の紋章を使うか」
「ダメよ! そんなことに使うなんて信じられないわ」
「そうだよ! それに芽依は見たくないし!」
「四郎は反対しないみたいね。女子の試合もあるみたいだけど」
「も、も、も、もちろん・・・・見たく・・・・ない」
「声が小さいわね」
「四郎君!」
「お兄ちゃん!」
私が諦めて帰ろうとしたとき大事件が起こった。
「ちょっと嘘でしょう?」
男女七人が四郎を見るなり叫んだのだ。
「この人クロッシュにそっくりじゃない?」
「ああ、本当だ。これほど似てる人を見たことないよ」
何やら勝手に盛り上がっている。
「私たちはこの大会に参加する予定のチームよ。でも、メンバーの一人が遅刻してまだ来てないの。せっかく全国大会に出場できたというのに、このままでは不戦敗になってしまうわ。ここまで来て戦わずして帰るなんて嫌よ。あなた替え玉で試合に出てくれない?」
「ええー! だ、ダメだ! それって違反行為だろ?」
「もちろんよ。でもこれだけ似ていればきっとばれないわ」
「断る!」
「お願い。ただ立ってるだけでいいから」
四郎が困ってるわ。ここは私が止めてやらないといけないわね。
「ちょっといいかしら? 彼は私のフィアンセよ。勝手に話を進めないでほしいわ」
「もし彼が出てくれたら、あなたたちは特等席で試合が見られるわよ」
「四郎、出なさい」
「マリー!」
こうして四郎は見ず知らずの七人組に連行されていくのであった。
「こら、離せ!」
「私たちが出るのは男女混合戦よ。相手の大将は女性だけどテレビ放送もするみたいだから絶対にニヤけた顔はしないでよね」
「嫌だーーーーー!!!」
これはこれで複雑な心境だわ。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
あなたを忘れる魔法があれば
美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。
ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。
私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――?
これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような??
R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます
大人のためのファンタジア
深水 酉
ファンタジー
第1部
泉原 雪(いずはら ゆき)22歳。会社員。仕事は大変だけれど、充実した毎日を送っていました。だけど、ある日突然、会社をクビになり、ショックのあまりに見知らぬ世界へ送られてしまった。
何でこんなことに?!
元の世界に未練や後悔、思い出や大事なものとか一切合切捨ててきた人を「影付き」と呼ぶのだとか。
私は、未練や後悔の塊なのにどうして送られて来てしまったのだろう?
運命を受け入れられずに、もがいてもがいて行き着いた先は…!?
----------------------------------------------------------
第2部
記憶を奪われた雪。
目が覚めた場所は森の中。宿屋の主人に保護され、宿屋に住み込みで働くことになった。名前はキアと名付けられる。
湖の中で森の主の大蛇の贄と番になり、日々を過ごす。
記憶が思い出せないことに苛立ちや不安を抱きつつも、周りの人達の優しさに感謝し、自分らしく生きる道を探している。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
北条氏政転生 関八州どころか東日本は全部俺の物 西は信長に任せて俺は歴史知識を利用して天下統一を手助けします。
ヒバリ
ファンタジー
1〜20までスカウトや内政ターン
20〜33まで戦タイム 安房攻め
34〜49戦後処理と内政
目標11/3日までに書き溜め
50〜61河東の戦い1
62〜70河東の戦い2
71〜80河東の戦い3
81〜85河東の戦い 後始末
86〜 川越夜戦
やばい、話の準備してるとどんどん内容が増えて予定通りにいかんのだがー?
時代物が好きなのでかきました。
史実改変物です。基本的な大きな歴史事件は史実通りに起こります。しかし、細かい戦や自分から仕掛ける戦はべつです。関東に詳しくなく細かい領地の石高や農業に関することはわからないのでご都合主義ですしある程度は史実とは違うことをするので全体的にご都合主義です。
北条氏親がいない世界線です。変更はこれだけです。あとは時代知識を使って漁夫の利を桶狭間でとったり、河東を強化して領内を強くして川越夜戦の援軍に駆けつけて関東統一にのりだします。史実通り豊後に来たポルトガル船を下田に呼んで史実より早めの鉄砲入手や、浪人になったり登用される前の有名武将をスカウトしたりします。ある程度は調べていますが細かい武将までは知りません。こういう武将がいてこんなことしましたよ!とか意見ください。私の好きなものを書きます。
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる